不思議の国のNEO: 未来を変えたお金の話

著者 :
  • 太郎次郎社エディタス
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784811807300

作品紹介・あらすじ

自律・分散&ゆるゆる合意で動く社会、「不思議の国」。中央銀行の設立で乗っとりをはかる「真ん中団」。スットコホルム研究所を脱出した、あっちゃんことその仲間たちが始めたレジスタンスとは?
気鋭のインターネット研究者が描く、経済=エネルギー活動をも一変する「お金」をめぐるファンタジー。
[脱・真ん中主義]×[自律分散型の情報社会]×[お金の地産地消]=NEOの世界!

感想・レビュー・書評

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  • 子ども向けの物語かと思いきや、なんと地球の歴史や成り立ちから、今話題のお金(ビットコインやブロックチェーン、仮想通貨)などの基礎知識が得られる優秀本。著書の斎藤さんがストーリーも考えていらっしゃるとは驚き!随所に学問的キーワードが散りばめられている。そして、インターネットの活用を地球の未来のために考えていることに感動しました。限りある地球の資源を使い切っちゃう前に、今の経済成長第一主義を見直してほしい。お金は所詮全て、人間の決め事で作られた仮想通貨に過ぎない。お金をたくさんあることが幸せと思わない方がいい。この本ではむしろ、お金があることを負債が増えると言っていた。そんな考えもあるんだと、お金の捉え方が少し広がった一冊でした。

  • 本書は金融資本経済(貨幣経済)に代わる社会資本(ソーシャルキャピタル)経済あるいは真の信用経済、または脱化石燃料社会にまつわるフィクションである。NEOとは自然経済秩序(The Natural Economic Order)のことであり、ここで使われる通貨は時間とともに減価する。販売・サービスの提供の対価として減価する通貨を受け取るということは、減価する部分を相手に寄付する(手助けする)ことに相当する。つまり、相手を信頼することが前提となる。

    リーマンショックにより多くの人が金融資本経済の行き詰まりに気づきつつも、なかなか新しい社会モデルが見出せないでいる。

    インターネットは自立分散のシステムであり、インターネット上で人々が交流できるのは、相手に対する信頼に基づく。本書では、インターネットをモチーフにした新しい社会モデル、減価する貨幣をベースにした信用経済、自立分散した社会、脱化石燃料社会を描いている。紹介されている技術は、一部を除き(ワームホールや軌道エレベータ)、既に実現できているものばかりであり、本書で描かれている世界は、近未来に決して実現不可能ではないだろう。
    <hr>
    巻末に技術や概念の解説がまとめらており、助かる。一部、抜き出し、リストアップしておく。
    ・ジャイアントインパクト
    ・ワットシステム・地域通貨
    ・連=江戸時代のフォーラム・コミュニティ、分散、出入り自由、存続を目的としない、名前の使い分けなど。
    ・ワームホール
    ・ミヒャエル・エンデのモモ
    ・ピークオイル
    ・ヴァーチャル・ウォーター
    ・自然経済秩序
    ・PGP
    ・P2P:中心がなく全て対等、単一故障点がなく持続可能な社会のデザインにおいて重要な概念
    ・ダムレス水力発電
    ・太陽帆
    ・空力制動
    ・カーボン・ナノチューブ
    ・軌道エレベータ
    <hr>
    <目次>
    序章 ある朝の事件
    第1章 虹色のトンネル
    第2章 不思議の国の夜
    第3章 謎の銀行
    第4章 真ん中団の野望
    第5章 未来望遠鏡
    第6章 不思議の国のNEO
    第7章 追跡と逃亡
    第8章 レジスタンスの結成
    第9章 133ミリ秒の抵抗
    第10章 最後の対決
    終章  石油文明のあとに
    <hr>
    <記録>
    2010年5月、F氏より薦められる。
    2011年1月5日、再度F氏より薦められる。
    2011年1月29日、読書開始
    2011年2月2日 読了

  • エネルギーの取得方法や、お金のシステムが従来の世界とは異なるという「不思議な国:NEO」に関するお話です。想像上の話の形態をとっていますが、この本の筆者達が考える理想の国のあり方を示唆していると感じました。

    資本主義の根幹の方針である「増え続けなければならないシステム」をサポートしているのが「利子」、貨幣とはどうあるべきか、特許に関する考え方等、読んでいて楽しかったです。

    以下は気になったポイントです。

    ・銀行の「信用創造」の仕組みを読み解いていくと、増えたとされるお金の正体は「借金」である(p64)

    ・人間圏が無限に成長していけると思えたのは、それだけの急激な成長を、地球というシステムが受け止める事のできた期間、地球の歴史から見たらほんの一瞬である、人口と掘り出せる化石燃料との間に特殊な条件が当てはまっていた時代だけの話(p67)

    ・不当に人間圏の拡大を促し、人々を競争に没頭させて本来の時間の使い方を失わせようとしている、これを時間泥棒という(p101)

    ・明日とか一時間後のような非常に至近な未来をのぞこうとすると、いま未来を覗いているという事実の影響が未来に色濃く現われるので、それによる違った未来の可能性が重ねあわされて、その新しい未来を覗いているという事実の影響がまた加わり、真っ白な映像になる(p108)

    ・減価するワット券を受け取る理由は、なるべく早くその券を使うと、自分は寄付する量を少なく出来るし、発行した人に寄付した事を世の中にアピールできる(p130)

    ・エネルギーの取得方法が変われば、文明が変わるし、生活様式である文化も変わる(p208)

    ・循環型で自律・分散・協調的な地産地消経済を形成するには、お金の仕組みを変えることが大事(p214)

    ・ワットシステムは森野氏により開発された地域通貨の仕組みで、埼玉県志木市・知多半島・神奈川県大和市の農場などで使われている(p231)

    ・スタンプ紙幣は、世界が大恐慌にあえでいた1920-30年代、北米や欧州のさまざまな地域で使用されたが、中央銀行から訴えられて終結した(p239)

    2014年6月15日作成

  • インターネットの仕組みを今までの人間社会に当てはめていければ未来は変えられる。環境問題にも触れながらこれからのインターネットを考える良い本です。直前にインターネットの不思議探検隊を読むとさらにわかりやすいです。

  • ファンタジーの体裁を借りた、新しい経済モデルの提案。
    児童書のような文体なので正直読みづらいが、
    内容はしっかり経済。
    インターネット型=アンチ中央集権型の理想の国が舞台。
    そこでは警察や中央銀行などの国家権力が存在せず、
    貨幣は労働や個人の信用を基軸にした地域通貨のようなものを
    誰もが自由に発行できる。

    ここでいうインターネット型というのは、中央に強力な権威を持たず、
    個人同士が緩やかに、自由に繋がっていて、
    性善説に基づく自浄作用で犯罪も無くなるというもの。

    この手のユートピアは以前も村上龍「希望の国のエクゾダス」や
    アーネスト・カレンバック「エコトピア・レポート」にも描かれたが
    個人的には理想主義過ぎてなんかうさん臭く感じる。
    残念ながら人間はそこまで高尚じゃないのではないかとも思う。

    地域貨幣にしてもここまで多くの種類の通貨が流通する事の煩わしさを
    解決する必要がある。

    銀行という仕組みが持つ、常に負債を生み出す事が
    前提となる経済モデルの問題点も指摘されている。
    安部 芳裕「金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った」にも
    その辺は解説されていたように、
    資本主義経済が永遠の市場拡大を前提に作られている以上、
    エネルギーや各種資源の有限性により、
    どこかで行き詰まるのは自明だと思う。

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著者プロフィール

1964年生まれ。「インターネットと社会」の研究者。
日立ソフト(現 日立ソリューションズ)などにエンジニアとして勤めたのち、2000年より慶應義塾大学SFCへ。2003年、地域通貨「WATシステム」をP2Pデジタル通貨として電子化し、2006年、博士論文「i-WAT:インターネット・ワットシステム─信用を維持し、ピア間のバータ取引を容易にするアーキテクチャ」を発表。
現在は「人間不在とならないデジタル通貨」の開発と実用化がおもな研究テーマ。
慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事。
一般向けの著書に『不思議の国のNEO──未来を変えたお金の話』(太郎次郎社エディタス)がある。

「2014年 『これでわかったビットコイン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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