- Amazon.co.jp ・本 (172ページ)
- / ISBN・EAN: 9784816500718
感想・レビュー・書評
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『ヒトラーの世界観――支配の構想』
原題:Hitler's Weltanschauung: A Blueprint for Power ( 2.Aufl)
著者:Eberhard Jäckel (1929-)
訳者:滝田 毅 1947-
出版地:東京
出版社:南窓社
出版年月日等:1991.11詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短いが読み応えのある、ヒトラーの初期からぶれずに死の直前まで追求し続けた2つのプログラム-反ユダヤ主義と当方へのアーリア人種の生存権大拡張-を軸に、本書が書かれるまでヒトラーを単なる狂人とか、徹底した日和見主義とみなした「ヒトラー軽視論」に真っ向から反論した学術書。しかしこのイェッケルの考えは、ヒトラーを軽視すべきでないとするあまり、ヒトラーの意図と意志と命令が第三帝国の殆どを動かし決めたのだという意味で「プログラム派(意図派)」とされ、今日では、多様で入り組んだ利害構造を持つ多くの官僚組織や経済界、軍部、ヒトラーの側近たちの思惑が絡みそれが収斂していき、ヒトラーの考えの基軸の反ユダヤ主義を(ヒトラーの恐らく口頭による命令は否定されないものの)ホロコーストにまで行き着かせたのだという、「絶滅機構」(ヒルバーグ、ナチの官僚制そのものがホロコーストに向かう性質を帯びていたというもの。マシーナリー・オブ・デストラクション)に代表される「機能派」に対して少なくなりつつある学説のようである。このあたりをこれから本書を読む方などは留意しつつ読むと良いだろう。推奨書籍。