GHQ日本占領史 1

制作 : 天川 晃 
  • 日本図書センター
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  • Amazon.co.jp ・本 (125ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784820562702

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  • <要約>
    戦後日本の占領は、建て前では連合国によるものであった。しかし実際には、アメリカ政府による独占的占領であった。占領によって、日本のあらゆる制度が改造された。また、占領に参加したスタッフは、その多くが政府や企業で高い地位に就くか、日米関係にかかわる学者となった。

    p.<4>
     極東委員会の構成は米,英,中,ソ,豪,仏,蘭,印,加,ニュージーランド,フィリピンの11カ国であり,のち,ビルマ,パキスタンが加わって13カ国となった。[…]米政府は米,英,中,ソ4カ国に与えられた拒否権と緊急中間指令権を利用して,自国の利益,政策意図を貫徹した。

    p.<9>
     極東委員会,対日理事会が実質的権限をもっていなかったのに対して,政策形成の上でも執行面でも強い権限をもっていたのが米国政府である。

    p.<17>
    GHQは[…]ある議案を通すために,あるいは反対派を抑えるために「司令部」の名を利用した。ときには婉曲に,「さる方面からのお達しにより」という語も使われたが,これはGHQの示唆を意味する場合が多かった。GHQの方でも,正式の命令はGHQ覚書,あるいはセクション・メモの形で日本政府に伝達したが,日本人を招致したり,自分の方から出かけて行って指示(インストラクション),示唆(サジェスチョン)を口頭で与える場合がしばしばあった。さらに,日本側が暗黙の抵抗をしたりすると,すぐに「指令(ディレクティブ)か命令(オーダー)に切り替える」と脅迫することが多かったという。

    p.<19>
     典型的な局長のプロフィールを描き出すとすれば,年齢は50歳,職業軍人,階級は将官クラス,文官の場合は,高学歴という人間像が浮かび上がる。

    p.<24>
     これらのスタッフは帰国後,政府機関や会社で指導的地位を占め,大学では日本学の権威者として日米関係の発展に寄与しているものが多いことは注目に値する。

    p.<26>
     1949年7月には占領管理体制の緩和ないし戦争の延長としての「軍政」から「民政」的側面重視への移行にともない,府県軍政部は府県民事部と改称し,軍人から分館への交代がなされた。しかし,対敵諜報部隊CICはそのまま存続した。

    p.<36>
     副官としては,H・B・ホイラー,S・L・ハフ,L・E・バンカーなどがいたが,とくにバンカー大佐は,ハーバード大学出身の弁護士で,モルガン商会にも関係し,マッカーサーの信任が厚かった。

    pp.<37>-<38>
    G-2の名で知られる参謀第2部の活動は,民間検閲支援CCDや対敵諜報部隊CICの活動を通じて,膨大な量の情報を入手,分析し,占領行政の決定に大きな役割を果たした。
    p.<39>
    参謀第4部は,1947年,本来の任務のほかに,外国企業に対する条件整備の任務が付加され,1949年には予算課などの機能が,副参謀長直属として新設された会計検査局に移された。また同年12月にはスタンダード,カルテックス,シェル石油会社などからなる 石油諮問委員会がこの第4部の所管となった。

    p.<45>
    経済科学局は,[…]最高司令官に対して,ポツダム宣言の諸条項を履行するために,日本および朝鮮における経済,産業,財政,科学関係の政策について助言することにあった。三井・三菱・住友・安田財閥の解体や,労働組合の結成援助,経済復興,1ドル=360年の単一為替レートの決定,賠償,税制改革,日本経済の自立化(ドッジ・プラン)などの一連の経済民主化政策を推進した

    p.<49>
    民間情報局は,[…]精神風土,教育,宗教などの文化的側面の非軍事化・民主化を担当した。マスコミ統制,政教分離(神道指令),6・3制,教育委員会制度,教科書検定,社会科の導入などの教育改革を指導したのもこの局である。

    p.<54>
     マッカーサーは,日本を「東洋のスイス」にするために日本のキリスト教化を意図したが,宗教課は政教分離の原則を占領政策の基本としている立場から,これに強く抵抗したといわれる。

    p.<55>
     情報課の任務は,あらゆる公的情報メディアを通して日本人に民主的思想および原則を普及することによって,言論・出版・集会の自由を確立させることとされた。[…]今日のマスコミの自主規制の原型ともいうべき新聞準則(プレスコード),放送準則(ラジオコード)を作らせたのもこの課である。

    p.<58>
     天然資源局は,農地改革などで有名であるが,本来の任務は,①日本・朝鮮その他旧日本占領地域における農業,漁業,林業,鉱業および地誌に関する包括的政策,②日本における天然資源の調査・開発・保全に関する政策の立案について,最高司令官に助言することにあった。

    pp.<66>-<67>
    民間通信局は,電信,電話,国内および国際無線,放送,郵便などの部門を担当し,その任務は,まず通信分野における非軍事化,すなわち,旧日本陸海軍の無線局および電信電話局の閉鎖解体ないし転用,および日本軍の宣伝機関となっていた放送局の民主的再編にあるとされた。

    p.<81>
    戦前の天皇制権力の重要な構成要素のひとつであった官僚制度の改革は,占領政策の重要な目的であった。しかし,官僚の手を借りなければ占領政策実施が円滑に進まないというジレンマがあった。[…]行政運営の手法は国家行政組織法・各省設置法・内閣法などの制定によって改革意図が骨抜きにされたため,戦前と変わらなかった。

    p.<84>
    財閥解体政策には銀行などの金融機関が含まれていなかったため,占領終結後,銀行を中心にして旧財閥系をはじめ新興企業集団(グループ)が形成され,高度経済成長の担い手となった。

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著者プロフィール

東京経済大学名誉教授 法学博士
1930年長野県に生まれる。東京教育大学卒業 東京都立大学大学院博士課程修了。EWC奨学生としてハワイ大学、カリフォルニア大学大学院に留学。フルブライト客員研究員としてスタンフォード大学ロースクールで研修。
〈主な著書〉
『戦後労働改革』(東京大学出版会、1982)
『GHQ』(岩波新書、1983)、『占領戦後史』(岩波現代文庫、1992)
『GHQの人びと』(明石書店、2002)
『アメリカ初の障害者差別禁止法はこうして生まれた』(監訳、明石書店、2000)
『障害者政策の国際比較』(竹前栄治編/障害者政策研究会共著、明石書店、2002)
『失明を超えて拡がる世界』(桐書房、2007)
『GHQサムス准将の改革──戦後日本の医療福祉政策の原点』(桐書房、2007)

「2010年 『イギリス障害学の理論と経験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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