- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822239633
作品紹介・あらすじ
人々の目に触れることがない、精神科単科病院の「身体合併症病棟」。
ここがどのような場所で、どのような人が生き、そして死んでいくのか
精神医療は、一般にも医療の中でもタブー視されているのではないかと考えます。本書は、少しでも精神医療を知るきっかけにしてほしいと、日経メディカルOnlineで執筆したコラムをまとめました。
・なぜ、長期間退院できないのか。
・なぜ、精神科医が身体疾患を診るのか。
・なぜ、転院を断られるのか。
・なぜ、家族は治療を拒否するのか。
・なぜ、精神科病院は人里離れた場所や山の麓に多いのか。
精神科単科病院で亡くなっていった人たちの人生や、家族・友人との人間関係を通して、精神科疾患を有する人の日常や精神科医療の実際を描き出すと同時に、胃瘻造設や延命治療の是非、誤嚥性肺炎、患者家族への説明の難しさなど、終末期医療に共通する医師の悩みも吐露されています。
特別編として、相模原障害者施設殺傷事件についても書き下ろしています。
感想・レビュー・書評
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精神科以外の医療関係者に向けた、と冒頭にあったが、そうではない自分でも非常に読みやすく、つまづいた箇所はなかった。精神科というと重い(と感じるということは自分にも本書で触れられている「差別」について思うところがあるということだが)印象があり進んで読もうとは思わないけれども、そのような考えを持った人間を良い意味で終始遠ざけない語り口だった。
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読了日 2019/11/06
返却棚から借りるシリーズ。
精神科医による、精神科医病棟で命を終えるひとたちについて語った一冊。
相模原の殺傷事件は記憶に新しく、
それをみるひとの心理に問いかけるような最後の特別編が心に残る。
先日読んだA3にでてきた、かの松本さんに対して当時のひとが抱いた感情も、同じところに基づく考えなのだろう。 -
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タッチは軽く読みやすいものの、専門用語が特に注釈もなく出てくることがあり、多くは理解できるが初めて聞くものもある。医療関係者向け雑誌の連載をまとめたものだから仕方ないとは思うが、単行本にするにあたって注釈をつけてもよかったかも。
ただそれを差し引いても、決して傲らず、患者に寄り添う視点で事態を把握し語る姿勢にとても好感が持てた。ソフトな語り口の中にも、医師として人として絶対に譲れない強い信念のもとに、日々医師としての務めを果たし、また本書をまとめ上げたことが言葉の端々から感じることができる。
著者の思いはここじゃないかな、と感じながら読み進め、終章に辿りついて、ああやっぱり、と納得した。記憶に新しい相模原の障害者殺傷事件について、連載とは別に章を立てて意見を述べるほど、著者の思いはそこへと集約されていた。
第8話の言葉が印象深い。
『患者と呼びづらいことが異常なことではないかと思います。病気であっても、きちんと社会に受け入れられているなら患者と呼ばれてもそれほど気にならないのではないでしょうか。(中略)統合失調症を「病気」と、罹患している人を「患者」と呼んでも誰も嫌な思いをしない、そんな社会になってほしい、そうしていきたいと思います。』