ブランド王国スイスの秘密

著者 :
  • 日経BP
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822245016

感想・レビュー・書評

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  • スイスの勉強をしたいと思い本書購入しました。日経新聞の記者が書かれている本ということで、基本的に読みやすくあっと言う間に読了しました。本書はスイスの強みを「ブランド」という概念で整理しています。これはオメガ、ロレックスなどの商品ブランドだけでなく、国全体としてのブランドですが、私は、スイスに対して外国人が感じる「プラスアルファ」だと理解しました。スイスは通貨の信認がある。スイスは自然資源が美しい、スイスはクオリティ・オブ・ライフが高い、など外国人がスイスに抱く主観的な印象(プラス面)です。

    個人的には最終章の「スイスに学ぶ7つの知恵」が特に重要だと感じましたので、備忘録としてここに記載します。
    1. 高付加価値経済の実現
    2. 強い通貨
    3. プライベートバンク
    4. 美しい国土
    5. 人を資本として活性化する仕組み
    6. 外国人の活用
    7. 小さな政府
     個人的には、最後の7番目については、本当に小さいほうが良いのか確信が持てなかったのですが(むしろ小さい/大きい、の問題ではない気もする)、その他については、確かに日本でも実現できるといいなと思いました(それぞれの実現可能性についてはよくわかりませんが・・・)。あとはこれらを実現した際に生まれる日本のブランドとは何か、ということで、この中身について日本はスイスと違っているべきでしょう。私は個人的に、日本の強みは「食」「平和」にあると思っていて、このあたりが日本ブランドの中核になるのかなと想像しました。

  • 日本とスイスの国としての状況は似通っていると仮定しつつも、立国するための方法が異なるために現状に差が生じているのだと思う。

    ブランド構築に対する考え方も、日本は他企業を買収したり合併したら名前の変更を強要するがその行為が逆に買収した企業の持つ既存の競争力を弱める可能性もある。一方スイスは、買収したとしても従来の名前を継続させるためライバル企業であるが、同一グループに属していて驚くことがある。

    日本は時計産業においてクォーツ製の発明と低価格により、スイスの高級時計を脅かした。一時期はスイスの時計産業は休業するほどにまで追い込まれたが1人の男が時計にファッションという切り口を与えることにより、日本企業が作る時計との差別化を図り成功したことは、今の価格競争に巻き込まれ対処方法が値下げしか思いつかない企業にとって参考になるのではないか。

    やはり、他のアジア諸国に低価格大量生産の役割を移行した日本の産業にとって活路は高い技術力や高性能製品を作ることだと考える。

  • 人口も資源も少ない小国、スイス。世界の有数企業を抱え、発展した金融市場を持ち、世界中から「ヒト、モノ、カネ」を集めることに成功している秘訣とは何か。日本経済新聞記者である著者が、スイスという国が自らを強力なブランドに仕立て上げたその実体を報告する。そこには、今後の日本が目指すべき「国のかたち」が格好の先行事例として存在している。

    序 章 ブランド立国スイス
    第1章 スイス産業はいかにして「ブランド」を創ったのか?
    第2章 「スイス」というブランドの力
    第3章 ブランド立国までの足取り〜スイスの歴史
    第4章 スイス・ブランドの曲がり角
    第5章 ブランド論で語る「国のかたち」 

  • 国内のデフレと中国を初めとしたコスト競争力に勝る新興国企業の攻勢に対して勢いを失い苦しんでいるところの多い日本企業、ひいては日本という国自体にとって、いまスイスに学ぶべきところは本当に多いと感じる。(もちろん、スイスという国が「黒いスイス」などと呼ばれる裏の面を持っていることも承知)
    日本以上に国土には恵まれず、加工貿易や金融あるいは観光といった産業に頼らざるをえないばかりか、周りを他国に囲まれて常に侵略のリスクにさらされて来た同国が、時計産業を代表として、いまでは価格競争に巻き込まれない高付加価値のブランド力を築き、世界中からカネを呼び込んで世界でも有数の1人当たりGDPをたたき出している。日本の現状とはまさに対象的な姿がある。

    著者は、そのスイスの強さについてそれまでの章で要素ごとに具体的な事例を紹介しつつ、最終章で日本が「スイスに学ぶべき知恵」として以下の7つにまとめている。

    1. 高付加価値経済の実現
    2. 強い通貨
    3. 世界中からカネを集め、世代を超えて資本として蓄積していく仕組み
    4. 美しい国土
    5. 人を資本として活性化する仕組み
    6. 外国人の活用
    7. 小さな政府

    2006年と少し前に刊行された本だが、いま読んで、自分たちに置き換えて大いに考える価値のある内容ばかりだった。

  • やたらスイス人の知り合いが増えたので、なんとなく手を伸ばしてみたところ、スイスが時計や金融に力を入れてきた理由と歴史的経緯を知って驚いた。国土のほとんどが山岳地域のスイスは元来貧しい国だった。耕す土地もごくわずかしかないため、海外に出稼ぎに行っていた。その仕事とは、傭兵だ。スイスの歴史は多くの傭兵たちの血の上に立っているとも言われるが、血を金に変えるというサイクルを断ち切りたいという思いから産業振興に力を入れ、大成功をしたのが時計だった。

  • 著者が言うとおり、確かにスイスと日本は共通点が多い。
    スイスの歴史から日本は学べる事がもっとありそうだ。

  • 小国スイスがなぜこれほどまでの力を持っているのか? 歴史背景から国民性を分析し、スイス企業の強さを明らかにしている。 また、ブランドの視点からの国・企業の分析もおもしろいと思う。

  • 図書館でふと目について読んでみました。
    今までのスイスのイメージって、自然で豊かなまんま「ハイジ」な世界だったのですが、
    読破後にはそのイメージが一気に変わりました。

    ドイツの物価の2倍という物価高。独自のブランド性。
    小規模の脱税であれば犯罪ではないことにはびっくり!

    そして、今の日本が見習うべき姿も書かれていました。
    スイスの語学レベルの高さと、グローバル世界への柔軟性、ブランド戦略。

    スイスと日本じゃ国土の大きさや人口など異なる点があって、
    全てをそっくり見習える訳ではないけれど、
    グローバル化する世界に、日本がだいぶ遅れをとってる事は明らかですね。
    もっと考え方や捉え方をグローバル的な視線で見ていかなければ、
    これからの日本の発展が息詰まるのではないかな、と再認してしまいました。

  • マーケティング担当者、ブランド管理担当者必読の書。慧眼必死

  • スイスといったら、銀行と永世中立国、ハイジってぐらいの認識だったが、世界のトップ企業が集まる所以は「ブレないこだわり」ってことが理解できる。このスタンスはなかなかのもの。スイスの軍需に触れていないのでバランスとしてはどうかな、と思ったけれど、なかなか面白く読めた。

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著者プロフィール

ジャーナリスト。1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、日経ビジネス副編集長・編集委員。2011年4月からフリー。著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP)など。

「2017年 『破天荒弁護士クボリ伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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