ヘルスケア産業のデジタル経営革命 破壊的変化を強みに変える次世代ビジネスモデルと最新戦略

制作 : 永田 満(監訳) 
  • 日経BP
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822255312

作品紹介・あらすじ

医療・製薬業界に押し寄せるデジタル化の波への処方箋

 さまざまなデジタル技術が、ヘルスケア産業における変革のスピードを加速させている。医療によるデジタル技術の本質は、IoT(モノのインターネット)をはじめとしたさまざまな技術の発達により、これまで分断されていた、患者と医療機関、製薬企業、医療機器メーカーがシームレスにつながることにある。それによって、ヘルスケア産業に関わる企業からは、最終顧客(患者)の実態がはっきりと見えてくるだけでなく、患者にどのようなアウトカム、価値をもたらすことができたのかを把握できるように変わっていく。
 さらに、デジタル技術により、患者の生活のあらゆるシーンで情報が取得可能になる。そのデータを解析することで、自社が提供している製品や技術が患者に対してどんな条件、状態の時に役に立つのかを把握し、その結果を研究開発にも活かすという、消費財のようなフィードバックループが回り始める可能性がある。

業界横並びから脱し、独自のビジネスモデル、エコシステム構築へ

 患者への価値提供やアウトカムを実現するには、自社の製品を売るだけでなく、製品以外の技術やサービスを組み合わせたソリューションが欠かせない。これを実現するには、自社単独では不可能であり、さまざまな企業との提携が必要だ。また、ヘルスケア業界には、多くの患者との接点を持つ他業種の企業の参入も始まっており、そうした新興企業を相手に、競争、協業をしなければならない。
 従来のヘルスケア関連企業は、既定路線を離れ、独自のビジネスモデル、エコシステムを構築することが生き残りの必須条件となる。本書では、その具体策を提示する。冒頭には「日本語版特別章」を40ページにわたって設け、日本の事情に合ったデジタル経営戦略と新ビジネスモデルを詳述する。

感想・レビュー・書評

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  • ヘルスケア業界の勉強を少しずつしていて、
    さらにこれからの(未来の)潮流を知りたくて、読んでみました。

    他の人のレビューを見ていると、結構わかりやすいという評判だったのですが、
    (業界についてほとんど知らない)自分にはちょっと難しかった。
    おそらく、客観的に見て「わかりやすい」というのは事実なのでしょうが、
    あまりにも自分の(理解度)レベルが低かったのだと思われます。。
    完全に理解できなかった自分としては、評価が少し難しい本。

    とは言え、所々理解できるところはあって、
    その中には有意義な示唆を得られたところももちろんあるのです。
    こういう未来の流行を予想した本は、賞味期限があるので、
    読むなら早いうちに、が基本です。

    デジタル化の波にヘルスケア業界がどう影響を受けているのかについて、
    全体感を失わずに書かれている本という点では、
    これが現時点ではベストではないでしょうか(多分)。

  • 医療の定義は、医療機関に頼った受動的なものから、積極的な健康管理へと変化する。真に患者にスポットが当たり、治療をパーソナライズするために多様な情報やエビデンスがリアルタイムで提供されるようになる。一方で、患者はアウトカムに対して直接的な責任を負い、受益者兼アクティブ顧客として新しい視点を持つようになる。

    ヘルスケア業界でも、ボリューム重視からアウトカム重視へのシフトが見られる。次世代のビジネスモデルは4つのパターンに分けることができる。

    1. リーンイノベーター。ジェネリック医薬品メーカーが資本力やM&Aを武器にニッチな領域でシェアを高めていく。製品中心のモデルで、徹底したコスト管理がポイント。

    2. 患者サービスイノベーター。医薬品周辺サービスを通じた価値提供に注力する。先端テクノロジーを導入して、センサーやウェアラブルデバイスからのデータを駆使して、患者にとって望ましいアウトカムの提供を目指す。患者、すなわち一般消費者にアプローチする点が従来の製薬企業と異なる。

    3. バリューイノベーター。病院から家庭までのすべてのシーンをカバーしたヘルスケアシステムの全体効率を改善する。血糖値測定器や血圧計などを取り扱う医療機関メーカー中心となり、IoTなどの先端テクノロジーを使うことで、製品サービスと医療機関での治療を効果的に連携させる。

    4. 新デジタル医療企業。デジタル技術を武器に新規参入。従来のヘルスケアプレーヤーと組んで業界を変革する。

    ー以下、メモー
    専門外のヘルスケア業界におけるデジタル革命について知る。
    IT新興企業の登場やIoTによる周辺サービスの拡大、異業種企業の競合など、デジタル革命の大波が業界の壁を打ち壊しに来ている。
    データビジネスではプライバシーの問題や倫理的・財務的な問題などの障壁はある。どう解決していくか。

  • 研修の課題図書。まったくの門外漢なので勉強にはなったが後半は冗長(本というのはそういうものだが)。コロナで状況変化しているところもあろうと思うが、
    p24 デジタル革命の兆候は見られるものの、今のところ、それらがうまく統合され、患者のQOLや医療従事者の生産性向上につながるレベルには全く到達していない。
    というのがこの業界の特徴というか、難しいところなんだろうと思う。

    ヘルスケア産業のデジタル経営革命 目次
    序文
    p9 医療の定義は、医療機関や急性期医療などの介入的措置に頼った受動的なものから、積極的な健康管理へと変化する。
    はじめに
    p16 医療機関はかつて診察室や診察用の施設で患者を診ていた。そして検査や治療の後、患者にどうするべきかを告げ、緊急性がなければ、次の診察の日まで待って様子を確認していた。ところが今や、診察室や病院以外でも患者を診察し、進捗をリアルタイムで追跡し、必要に応じて治療法を修正することができる(注4)。
    言い換えれば、医療に対するインプット(診察した患者、販売した薬剤や機器)ベースのアプローチからアウトプット(患者にとっての最大限の医療アウトカム)ベースのアプローチへの移行が可能になったということだ。
    p19 新しいモデル「リーンイノベータ」「患者サービスイノベータ」「バリューイノベータ」「新デジタル医療企業」
    2015年の8月、米食品医薬品局(FDA)は3Dプリンタで製造された初の医薬品「スプリタム」を承認
    薬局やジェネリック分野の「ウーバー」
    日本語版序文
    p24 デジタル革命の兆候は見られるものの、今のところ、それらがうまく統合され、患者のQOLや医療従事者の生産性向上につながるレベルには全く到達していない。
    =日本語版特別章=激変前夜、日本のヘルスケアビジネスへの提言と処方箋──リスクをチャンスに変える四つの次世代ビジネスモデル
    p31 65歳未満の一人当たり国民医療費は18万4900円だが、75歳以上になると92万9000円と一気に約5倍に跳ね上がる。
    国が最も重要視している施策は「病院から在宅へ」
    「Simple Product シンプルプロダクト」「Enhanced Product エンハンスドプロダクト」「Integrated Services」「Living Services」
    p58 「患者様目線で見てみると、医療の現場では現在のケアシステムでは満たされないニーズが非常に多くある。実態を調べてみると、定期的に薬をちゃんと患者様が服用できていることが極めて少ないのが現実である。高齢化が進み、核家族が多い現在、自分ひとりで薬を服用できず困っている高齢者が増えている。これまでは薬の軸でしか考えていなかったが、正しく服用できる環境とセットで考えないと、本当の意味で新薬開発は効力を発揮できない。満足できる患者様アウトカムを創り出すためには新薬に加え、OTC,ジェネリック、ICTの活用、さらに医療機器などむ含めたトータル所リューションを統合してパッケージとして届けることが大事であり、立体的にサービスを届けなければ、新しいバリューは生み出せない」
    p66 AIによるリアルタイムの食事管理で糖尿病の発症を予防
    PartⅠ 押し寄せる変化の波
    第1章 ヘルスケア産業激変の背景
    第2章 避けられない戦略的選択
    PartⅡ 新たなビジネスモデル──戦略から価値へ
    第3章 旧モデルと新モデル
    テスラは何が違うのか。それは今までと全く違うビジネスモデルを作り上げたということだ。
    テスラは「聞き、学び、改善する」ための関係を築き上げた。
    第4章 リーンイノベーター
    第5章 患者サービスイノベーター
    p190 情報やサポートに対する患者のニーズは、治療前から(さらには診療前から)非常に高い
    患者は概して、どんなサービスが利用できるかを知らない
    サービスの存在を知れば、患者はそれを利用する
    p208 ジョンソンエンドジョンソン 患者コンシェルジュサービス
    第6章 バリューイノベーター
    心不全は治療コストがかなりかさむ
    心不全患者は注意深いモニタリングを必要とし、薬もしっかりと飲まなければならない。一般的には塩分接種を減らし、ある程度の活動レベルを維持する必要もある。多くの患者が診断デバイスや埋め込み型の危機デバイス(心臓ペースメーカー、除細動器など)を持っている。
    p231 図6-3 入院患者サービスがコストの大部分を占める
    第7章 新デジタル医療企業
    p263 スタートアップはニッチ市場を目指す傾向が強い。
    戦略に関する議論の背景として検討するべき点
    (1)デバイスやヒトの相互接続
    (2)提携や協業、新しいモデル
    (3)規模の拡大
    (4)待ち行列や文書や官僚主義の解消
    (5)迅速なパートナーシップによる成果の実証
    PartⅢ 新しい組織づくり
    第8章 協働と競争の新モデル
    第9章 ヘルスケア・エコシステムの人材戦略
    PartⅣ 過去、そして未来へ
    第10章 ヘルスケア新時代 ―中心は患者と価値

  • どんなデータでどんな解析をどんな風に見せるか。自分の業務にもこの本に書かれているような新たな事業にも共通する。顧客はドリルではなく穴を買う。価値をいかに適切に定義できるか。

  • 医療とデジタルをテーマにした本は珍しいと思い、手に取った一冊。

    【ザッと内容】
    今まさに過渡期にあるヘルスケア産業で今後企業や人がどのように戦略を立て、どのように分岐していくのか、どこに成長の余地があり、何が過去の遺物となるのか、それらを網羅的に述べている。
    特に象徴的なのが医療が製品中心・医師中心・スポットケア→アウトカム中心・患者中心・トータルケアに変化していくことと、企業のビジネスモデルがリーンイノベーター、患者サービスイノベーター、バリューイノベーター、新デジタル医療企業に分かれていくこと。過去に類を見ないスピードで変化に直面している医療産業で必要なモノの見方とは!?

    【こんな人にオススメ】
    ・医療関連企業に勤めているビジネスパーソン
    ・これからの医療産業に興味がある人

    【感想】
    面白い。ここまで分かりやすく今後の医療について網羅的に述べた本は私の知る限りでは初めて。
    患者中心になるというのは知っていたけれど、それが具体的に企業の動きとしてどのような変化になるのかはあまり実感が湧いていなかった。医療業界でデジタルが〜みたいな記事は良く目にするが、具体的にどんな可能性を秘めているのかは断片的にしか理解していなかったが、本著でストーリーの中で理解することができた。
    本著の内容もあと1年もすれば遅れた内容になりそうなのと、浅く広くなってしまっているので、是非続編や、一部の提供者(製薬企業や医療機器など)にフォーカスした内容でも発刊してほしい。オススメの一冊。

  • ヘルスケアビジネスを考える基本的な部分を学べる本
    図が見づらい

  • Part1 押し寄せる変化の波
    第1章 ヘルスケア産業激変の背景
    第2章 避けられない戦略的選択
    Part2 新たなビジネスモデル―戦略から価値へ 
    第3章 旧モデルと新モデル
    第4章 リーンリノべーター
    第5章 患者サービスイノベーター
    第6章 バリューイノベーター
    第7章 新デジタル医療産業
    Part3 新しい組織づくり
    第8章 協働と競争の新モデル
    第9章 ヘルスケア・エコシステムの人材戦略
    Part4 過去、そして未来へ
    第10章 ヘルスケア新時代―中心は患者と価値

  • ジェネリック医薬品によるテイコスト戦略による差別化、患者サービス(例、薬に留まらず生活習慣病のサポートを含む)にシフトした戦略、プロダクトアウトではなく、病院から家庭までの全てのシーンをカバーしてアウトカムに基づいた対価を得るバリューイノベーター、デジタル企業らに分類されるという整理。

    サノフィの生活習慣病対策、エーザイの認知症ソリューション等の事例は面白かった。今後の製薬企業の方向性の一つになるのだろう。

  • 参考書籍として購入検討

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著者プロフィール

インテリジェンスおよび患者パスウェイ分野のグローバルリード。いくつかのヘルスケア関連企業の創業者、取締役でもある。医療のイノベーション、分析および価値をテーマにした著述も多い。マサチューセッツ・バイオテクノロジー協議会の役員。最近はボストン大学クエストロム・スクール・オブ・ビジネスの健康管理プログラムで講師を務める。

「2017年 『ヘルスケア産業のデジタル経営革命』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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