ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822255688

作品紹介・あらすじ

「M&Aは総合格闘技」
「M&Aは売りから入れ。買いはマイナスからのスタートだから」

 日本のM&Aが本格化した1990年代から2000年代半ばにかけて、主要プレーヤーとしてM&Aをリードしたゴールドマン・サックスの辣腕アドバイザーの著者が、自らが手がけた多くのM&A案件の内実を初めて明かした稀有のノンフィクション。日本のM&A20年史でもある。

 ゴールドマン・サックスのニューヨーク修行時代から、内外の大物経営者との出会い、社内でのカネ・政治・出世競争などの知られざるエピソードを数多く描く。
 日産自動車、三菱自動車、ダイムラー・クライスラー、日立製作所、DDI、KDDなど数多くの企業が登場。M&Aアドバイザーからみた日本経営論にもなっている。

著者が手がけた大型案件の代表的なものは以下の通り。

●DDI・IDO・KDD3社合併
●ロッシュによる中外製薬買収
●NKK・川崎製鉄経営統合
●GEキャピタルの日本リースのリース事業買収
●ダイムラー・クライスラーの三菱自動車への資本参加
●日立製作所によるIBMのHDD事業買収
●三菱商事のローソンへの資本参加など。

感想・レビュー・書評

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  • 日産に勤めながらMITのMBAコースに留学し、ゴールドマン・サックスに入社して、規模の大きいM&Aに関与してきた著者の半生記。興味深い話が結構あった。

  • 実用書というよりは、自伝。ただ、現在の柵無き立場もあるのだろうか、率直な物言いにリアリティがあり、果たしてきた実務に付随する情緒面も含めてよく伝わる内容。実績を披露しながら、随所にその勘所や感じた事などを散りばめる。ゴールドマンサックス以外のコンサル会社は偉そうで好きになれないとか、元々勤めていた日産から留学費用を返還させられたとか、その留学先であるMITで軽蔑する日本人がいたとか。生々しいから、臨場感があり、より伝わってくる。

    実績は、KDD、DDI、IDOの統合によるKDDI。三菱自動車とダイムラー、川崎製鉄とNKKのJFEなど弩級の案件が多い。そうした思い出話と共に、MSCB(行使価格変動型転換社債)のB種優先株発行は自殺行為。引き受けた証券会社が自動的に儲かる仕組みなので、他の資金調達手段がある会社は絶対に手を出してはいけないという話とか、デューデリジェンスにおいて、品質問題を抱えていない事の再確認しておいた事が良かったとかのノウハウが語られる。

    世界トップクラスの医薬品メーカーは自国市場だけでなく海外市場でも世界シェアに見合う大きなプレゼンスを獲得していたが、日本市場だけは10位前後かそれ以下のシェアにとどまっていた。日本の大手医薬品メーカーを買収したいと考える世界の大手医薬品メーカーはいくらでもあった。しかし会社を買うにしても50.1%は嫌で、なぜなら買収した結果自社の製品を日本で独占的に販売するので会社の業績は当然良くなるが、良くなった業績の残り49.9%を業績改善に全く貢献していない一般株主にただで提供すると経済的に合理性がないという考えらしい。

    また、NKKと川鉄の統合比率交渉のキックオフミーティングでは、NKK本社に両者の関係者が集合したが、それぞれ会社側30人以上に財務・ホーム・会計アドバイザー含めて総勢50名程度のチーム。両者合計で約100人いたなど。勉強になった。

  • M&Aの臨場感を味わうのに最適な一冊。

  • 私の関心とは異なる何かだった。ステレオタイプな野村証券マンみたいな方なら。

  • 2020.8.30 再読
    臨場感がよい。哲学を持って就職活動をする。

  • ゴールドマンサックスでの、様々な業務経験について、淡々としながらも、軽快な筆致で書かれており、楽しく読破することができた。

    「はしがき」には、端的に筆者の思いが凝縮されているように思えるが、特に以下の点について非常に同意する。

    ●でも気を抜けば、やはり、どうしても会社が有利な立場に立ち、個人を支配してくる。
    ●会社というものは、自分の味方ではない。敵とまでは言えないが、少なくとも、黙っていても会社が自分のために何かを施してくれるというものでは絶対にない。会社で自分の思いを通すためには、会社と個人は常に対等の関係になければならないし、さらに対等な上で、日々これ勝負であり、これにある程度勝たなければ、自分の思いを止めることはできない。今でもこの考えは変わっていない。
    ●そして、これを実践するためには、自分の人生は自分でリスクを取って、自分で切り開く、特に人生の後半の時期に、少なくとも自分の居場所は自分で決められるような立場にいたい、全く自分の意思とは無関係に、組織の側に自分の居場所を一方的に決められることだけは絶対に避けたい、と言った考えも重要だと思っていた。
    ●若い頃に身につけたこのような考え方が、その後の人生に非常に役に立った面が多かったと、自分としては感じる。

    筆者の生き様が、まさに以下の各点を体現していることを、読後に改めて実感をした。

  • 筆者は日産からMITにMBA留学したのち、「人生の後半に自分の居場所を自分で決められるようでいたい」という思いからGSに転職、M&Aのマネジャーを務めた人物。
    実際に関わった大型M&A案件が、ここまで書いていいのかというくらい詳細に描かれているため、投資銀行の実務やプロフェッショナリズムに深く触れられる一冊となっている。
    一方で、内容は専門用語が多く、説明もM&A実務担当者向けにポンポン進んでいくので、ある程度基礎知識を固めて読んだものの、素人にとってはややハードルが高かった。

    筆者のMBA留学を通じて得た価値観や、日本の大企業から留学を経て外資に転職した経験を元にしたキャリア論などは納得させられることも多く、自分のキャリアも「リスクをとって切り開く」という観点で見つめ直したいと感じた。

  • 日産時代からMBA、ゴールドマン時代の話をディールの個別背景からスキームまで、守秘義務がある中で歯に衣着せぬ文体で記載されており非常に読み応えがあった。
    エクセキューションの部分は知識不足で読み飛ばした部分も多かったがバンカーとしての矜恃や覚悟が至るところで見られる良書。

  • 守秘義務が厳しいプロフェッショナルな業界、投資銀行出身者による珍しい自伝。1990年代、2000年代に関わった、日本経済にとってインパクトのあっな案件の舞台裏を淡々と紹介しながら、M&Aの業務、著者の仕事観についても紹介されている。
    本屋で見かけ、「守秘義務は大丈夫か?」と思いながらも購入。コーポレートファイナンスなど理論を使いながらケースを紹介することはないが、守秘義務に関わる部分の言及を避けつつ、仮の数字を使いながら舞台裏を臨場感をもって、率直に紹介されており、満足度は高かった。また、子供の頃に起こった出来事について理解できた点もよかった。もちろん深掘りしてほしい箇所はあるが、限界があるのは理解できる。

  • 基本的に守秘義務があり、どんな案件を手掛けたかは外部に出てくることはないと思うが、(金額は手直ししているにしても)細かく臨場感をもって書かれていて、非常に興味深く、さらさら読めた。
    読者に対するメッセージ性はそれほど強くないが、投資銀行の働き方や役割を理解することのできる良書。

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著者プロフィール

早稲田大学大学院経営管理研究科客員教授、慶応義塾大学大学院経営管理研究科客員教授。服部暢達事務所代表。1981年東京大学工学部卒業。日産自動車に入社。1989年マサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクール経営学修士課程修了。1989年、ゴールドマンサックス証券に入社、ニューヨーク、東京に勤務。多くのM&A案件を手掛けた。1998年から2003年までマネージング・ディレクターとして日本におけるM&Aアドバイザリー業務を統括。現在、ファーストリテイリング、博報堂DYホールディングスなどの社外取締役を務める。著書に『日本のM&A 理論と事例研究』、『実践M&Aハンドブック』、『最強のM&A』(以上、日経BP)など。

「2018年 『ゴールドマン・サックスM&A戦記 伝説のアドバイザーが見た企業再編の舞台裏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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