医療戦略の本質 価値を向上させる競争

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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822261207

感想・レビュー・書評

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  • HBSの経営学の大物が提案する崩壊していると言われる米国医療制度の改革処方箋。ひとことで言うと「患者にとっての価値を中心とした競争が医療を改善する」。「医療が指標化できてないから経営学じゃ料理できん、指標化せよ」という面もある気がするが。

    疑問;
    (患者中心にであっても)競争したら本当に医療は良くなるのか
    →製造業だったら、A社がB社よりもいいものを安く作れるのであれば、B社は淘汰され、A社が大量に生産するだろう。でも医者Aが医者Bより優秀だからって、医者Bの患者もまとめて診ることなんてできないだろう。とびきり優秀な医者Xが、やぶ医者Yの1000倍の価値を提供できるのか。せいぜい1000倍の金を出せる人を診るだけではないのか。それがいいことなのか。

    第一、指標づくりって難しいよなぁ。。。いや、重要だとは思うけど。


    (米国を中心とした)医療の現状
     競争の機能不全=ゼロサム競争
    ↓変革
    医療の価値(=患者にとっての価値、単位費用あたりのアウトプット)に基づくケアプロセス全体としての競争(生産的競争)
     個人の病態に合わせた医療を提供できるかが問題。診療科の数はどうでもいい
    ↓そのためには
    医療実績の評価・好評が必須
     現状では患者中心での医療実績の指標がない、抵抗にあっている
     現状では、診療プロセスのガイドラインを遵守しているかばかり問題にされる→医療方法の固定化



    メモ
    薬・治療法の説明は、動画をとって公開しておけばいい気が。。。

  • 2006年の出版であり15年経過している著書だが、医療DXの最前線にいる社長がこれ1冊で勉強は十分といっていたので購入。

    戦略やポジショニング戦略で有名なポーターは、医療業界をよくすることがライフワークだったらしい。

    医療の質と効率を継続的に向上させる最適かつ唯一の方法は、診療実績に基づいて医療価値を向上させる競争を導入することである。
    医療に競争はなじまないという印象をうけたが、ポーターは、多くの国民が必要な医療を受けられる社会としての公平性と、優れた医療を提供するために医療従事者が努力して切磋琢磨することは矛盾しないと考えていた。
    レベルの高い医療を患者に提供した医療従事者が正当に評価され、国民に適切な情報が伝わるポジティブサムゲームにやり方を改めれば、最もコストパフォーマンスの高い医療が実現できると著書に記している。

  • 「競争の種類が間違っている」、「患者にとっての医療の価値を向上させるための競争」、「病態を軸とし、ケア・サイクル全体で競争する」、「first do no harm」、「単一支払い者によるシステムは、絶大的な交渉力により、関連者にコストが転嫁される」、「統合型診療ユニット」、「自分たちの製品が最も価値をもたらすような患者につかってもらう」、「製品が適切に診療プロセスに組み込まれるようにする」、「価格はウェブ上に表示される」、「従来の専門診療科を軸にした病院や診療所組織は、統合型診療ユニットへ発展していくだろう」、「マネジメントは貪欲」

  • ポジショニング学派という経営学の一大鉱脈を作り上げたマイケル・ポーターが医療業界の目指すべき姿を記した大著。原著は2006年の出版であり15年もの歳月が流れているが、それでも本書の提言は少しずつはあるが様々な医療改革の中で実践されてきているように見え、そこまで論調が古びているという感じはしなかった。

    さて、本書でのポーターの主張は大きく以下の3点である。

    ①”医療費削減”の名の下に、コスト削減を追求するのではなく、医療の”質”(≒アウトカム)を定量的に示し、コストと照らした費用対効果の高さを追求すべき
    ②定量化された費用対効果の軸において、各医療機関の競争を促進して、費用対効果に優れた医療機関・製薬会社/医療機器メーカーが報われるようにすべき
    ③競争する市場は患者を主軸にした”病態”(Medical Condition)軸が望ましく、医療機関の組織もこの形で再編されるべき。現状のような”内科”・”放射線科”などの職能・機能で細分化された形では、医療機関間の評価ができず、費用対効果の比較ができるのは唯一”病態”同士の場合だけである

    マイケル・ポーターのポジショニング論とは、企業が戦うべき業界・市場を定義した上で、そこでの競争メカニズムを明らかにしながら、どのように戦うべきかを論ずる。そういう点で、”病態”という形で患者を主軸にした定義というのは、まさに各疾病の診断・治療行為などを市場と捉えることに他ならない。そのように捉えることによって、一見特殊な業界のように見える医療業界を他の業界と同じように、ポーターの様々な理論で語れるようになる、という点が非常に面白い。例えば、その”病態”を分析するために、バリューチェーンという概念を本書では持ち込んでいる。医療におけるバリューチェーンの基本パターンは、予防/未病〜診断〜治療〜回復・リハビリ〜管理・モニタリングという一連のプロセスであり、このフレームワークを統合して、全てのプロセスで価値が出せているかを問う必要がある、というものである。

    そういう点で、改めて医療という世界を眺める極めて有用な視点・観点を習得することができた良書。既に日本語版が絶版になってしまっているので、できれば復刊してもらいたい。

  • 医療の質と効率を継続的に向上させる最適かつ唯一の方法とは?
    → 診療実績に基づいて医療価値を向上させる競争を導入すること。

    診療実績とは?
    → 病態レベルで見た、経費一ドル当たりの患者にとってのアウトカム。

    医療価値とは?
    → 医師でも病院でも保険者でも雇用主でもなく、患者にとっての価値であり、診療実績におけるアウトカムの質。

    医療価値をどうやって評価するか?
    → 予防からはじまり治療を経て継続的な疾病管理に至るケアサイクル全体において、個々の病態レベルにおける患者にとってのアウトカムとコストの両方を比較することによって。

    上記の根本概念に基づき、医師、病院、保険者、医療関連メーカー、患者、企業、政府が取るべき戦略、組織、方針を述べた本。

    分厚い本だが、、第4章「医療の活を向上させる原則」まで読めば、あとは各論ですな。

    アメリカの医療制度の崩壊ぶりを示す第1章「医療の問題点を俯瞰する」は、国民皆保険制度を持つ日本からすると、まるで異次元の世界。アメリカの医療制度の崩壊ぶりを示す第1章「医療の問題点を俯瞰する」は、国民皆保険制度を持つ日本からすると、まるで異次元の世界。

  • 医療関係者全員に読んで頂きたい書籍
    医療とはどんなものかを深く考えさせられる書籍
    ゼロサムゲームから脱し、WINWINの関係をつくる

  • かの有名なマイケルポーター氏の本。競争の重要性や、患者の姿勢など、問題点はあげつらってあるが、じゃあどうしようがわからん。ただ、現状の問題点をさらう分には良い本

  • 日本の医療システムで優れているところも改めて実感。

  • マイケルポーターが医療について書いた本。医療の構造やステークホルダーが果たすべき役割を考えるにはもってこい。

  • TGLP

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