社長、そのデザインでは売れません!

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784822277994

作品紹介・あらすじ

自動車、家電、IT機器からソフトウェア、飲食サービスまで……。
日本から「かっこいい商品」「売れる商品」「素敵な商品」が生まれなくなったのはなぜか?

その理由は、日本の経営者がデザインを経営の中核に置くことを怠ったからだった。どうすれば、日本の商品が消費者にとって魅力的なものに生まれ変わるのか? 伊藤忠ファッションシステムで長年流通業を研究し、ifs未来研究所の所長として、百貨店や老舗和菓子、化粧品などと協業企画を実践する、川島蓉子が、3人の経営者、3人のデザイナー・クリエイターに、「デザインを生み出せる経営のあり方」について訊く。

登場するのは、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長、三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長、伊藤忠商事の岡藤正広社長、広告から企業のブランディングまでを手がけるクリエイターの佐藤可士和、アウディのデザインで知られる和田智、アメリカのMITメディアラボの副所長を務める石井裕。

日本が「売れる、愛される、かっこいい」を取り戻すための処方箋。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館で何気なく取った本だったが、とても良かった。大学時代、この世に何かを生み出したい気持ちでいっぱいだった頃の熱い気持ちを思い出した。3人の経営者と3人のデザイナーへのインタビューをまとめたものだが、6人とも共通してデザインを”より良い未来をを実現させるもの”として位置付けている。そんな方々の言葉だから、6年経った今でも熱量が全然衰えていない。出会えてよかった。今の仕事は全然違うジャンルだが、何らかのの形で人々が救われるような価値観や生活を生み出したい。まだまだやれることは沢山ある。

  • 読み応えがある1冊でした。
    経営トップとクリエイターが3名づつ、デザインを軸にインタビューを受けられ、まとめられたもの。

    当たり前ですけど、キレッキレで頭がいいです。
    みなさん。
    デザイン論は昔から好物なので、前のめりで読めました。

    【佐藤可士和さん】

    ・社内にその会社のイズムがビシッと走っている会社は、社長がサラリーマンでもブランディングは上手ですね。

    ・「デザインとは感覚言語である。」

    【岡藤正広さん】
    ・自分で仮説を立てられるようになれ、ということです。

    ・(かっこいい上司ってどんなひとだと思いますか?という問いに対して)
    「かっこ悪い」を引き受けられるひとかな。それで「かっこいい」を人にあげられる人。

    ・苦労して苦労してようやく成功に辿り着いたというくらいの経験をして、人は充実した気分を味わうことができるのです。

    ・「勘定のまえに感性」です。

  • 日本企業の「経営とデザイン」をテーマに、経営者目線とクリエイター目線から語る、学びの多い素晴らしい良書。

    それぞれのバックグラウンドも人柄も大きく異なっているけれど、
    不思議と話の内容に共通点があり、普遍的なtipsが散りばめられていると感じた。


    ・モノが余っている時代において、目新しいデザインや機能、効率化によるコストカットを追求するだけでは埋もれてしまう。

    ・日本は右肩上がりの時代つまり安くて良いものをつくれば売れる時代の価値観から抜け出せていない。いま経営者に求められているのはビジョンであり、そのビジョンを目に見える形に翻訳できるデザイン。

    ・デザインとはもののかたちを小手先で変えることではなく、ビジョンを形にすること。

    ・ビジョンとはすなわちその企業やサービスの存在意義。ビジョンを消費者に目に見える形で伝えるのがデザインでありブランディング。

    ・ブランディングすることで社会の中で企業やサービスのポジションが確立され、ターゲットとなる人に出会う確率が上がり、モノが売れる流れができる。

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    その他備忘録として、特に心に残った文章を以下に抜粋。

    CCC増田社長
    ・アップルストアの存在はアップルのブランディングにとってものすごく重要。翻ってパソコン業界から撤退したIBMにしろNECにしろ昨今の日本の家電メーカーにしろ自分の店を持っていない。ブランディングの面からすると、あれが弱いところです

    ・企画のコンセプトだけを前に出しても理解されない。だから先にお金の話をする

    ・モノ余りの上に、ウェブの進化で、編集権がお客さんに移った。だからこそ供給者側は、本物のプロとしてお客さんがあっと驚くもの、素敵な空間や時間をデザインして編集してあげないと存在価値がなくなる


    佐藤可士和さん
    ,ブランディングとは社会の中でその企業や商品のキャラクターをはっきりさせて、ポジションを取ること。企業がいたいポジションを取ること。

    ・自社のブランドのポジションをマーケットでちゃんと取れるようになる。そうするとターゲットとなるべきお客さんと出会う確率が高くなり、モノが売れる流れを構築できます。

    ・ブランディングとは本質的価値×戦略的イメージコントロール


    和田智さん
    ・団塊の世代からその上の世代は右肩上がりに市場が成長してきた時代。新しいもの=いいものという価値観を引きずっているのかもしれない。

    ・デザインに対する考え方。企業やブランドが持っている思いや哲学を翻訳して、具体的なかたちにする


    伊藤忠商事 岡藤社長
    ・問屋さんに卸した商品をどうやったら最終消費者が百貨店で買ってくれるか。そこまでを総合商社がプロデュースする。つまりモノが流れる仕組みをつくる

    ・自分なりに仮説を立ててそれを検証するために現場に行くのがビジネスの基本。事前に仮説を立てること

    ・薄利多売から脱するにはブランドに対する主導権を持たないとダメ。そうしてはじめて付加価値を上げることができる

    ・自分で仮説を立てられるようになれ。微妙な変化に気づいて先手を打つ。これはいけるという芽をつかんだら一気に広げる。直近でこの辺りが伸びるところというのを見つけるのが重要。お客さんの要望の少し先。

    ・他の先進国も新興国も技術を先鋭化している。いま日本が持っている技術は市場における主導権になっていない。マーケティングが必要。あらゆる商品はブランドビジネス化している。

    mitメディアラボ石井さん
    ・これだけモノが溢れている現代において画期的な技術革新やサービス革新も盛り込まれていないのにデザインだけ新しくした製品を出して消費者を煽る消費サイクルそのものが時代遅れ

    ・素晴らしいアイデアかどうかを見極めるための問い。So What?、Who care? Why?

  • 2018.03.14 品川読書会で紹介を受ける。

  • 企業や経営におけるデザインの役割
    日本や世界のトップクラスの経営者やデザイナーが何を考えて仕事をしているのか
    個別の商品の外観ではなく大局的な視点から企業・経営をデザインする
    方法論だけでなく背後にある哲学も示唆深い。

  • デザインとは、その企業のDNAである。つま
    り、その企業の文化、想いや哲学が表されて
    いる。それは、ブランドイメージとなり、独
    自のモノとなり、消費者へ届く。
    美しい、カッコいいは1つには限らないがその
    センスは人の心に入っていくものである。

  • 未来研の川島蓉子さんが、3名の経営者(CCCの増田さん、伊勢丹三越の大西さん、伊藤忠の岡藤さん)、3名のデザイナー(佐藤可士和さん、和田智さん、石井裕さん)と対談し、それぞえれの考える「デザイン」を引き出していく。それぞれのトップランナーが語る内容から『デザインの本質を考えるヒント』をたくさん貰える良書。
    デザインの重要性が声高に叫ばれる今日この頃だが、日本で言う「デザイン」は危うさが伴っている。すなわち、斬新さに偏った『一時的な見た目の新しさ』を求めることに終始しがち。しかし今考えなければならない「デザイン」はそうではない。どのような未来を創りたいかの「ビジョン」を『デザインする』ところから見つめ直さねばならない。過去に敬意を払い、現在をよく理解し、未来を創造する、一連のプロセスを描くことが「デザイン」である。

    ・見た目じゃない、男は中身だ。そんなマッチョな発想はお客様には通じない。

    ・社長の仕事は「経営」。デザインの良し悪しなんかわかるわけない。もちは餅屋に任せるべき。その変わり、どの餅屋を「選ぶか」と、こんな餅が欲しいのだ!というコンセプトをしっかりと「伝え理解してもらう」のはまさしく「経営」の仕事。この経営のするべき仕事をせずに、餅屋の餅に文句をたれる経営陣が多い。

    ・効率化は重要だが、需要>供給の時代にフィットした考え方。需要<供給の時代においては「需要を上げるための科学」をもっと真剣にやらなければならない。

    ・経営者はオフの時間を重視するべき。会社から離れて、自分の時間を持ち、学び続けなければならない。トップの器が会社の器を決める。

    ・歩けるようになってから歩く赤ちゃんはいない。出来ないことに挑戦していく中で、人は出来るようになる。やりもしないで、出来ないと立ち止まることは絶対にあってはならない。

    ・お客様自身が情報を編集できる時代になった。そんなお客様に驚きを与えられるよう、供給側はあらゆる情報・価値を編集し、その価値を最大限に増幅できるプロでなければならない。

    ・ブランディングとは、本質的価値×戦略的イメージコントロール。

    ・社外の前に、社内のブランディングをしっかり浸透させる必要がある。社内が腹落ちして動かない限り、社外にブランドを打ち出していくことは出来ない。

    ・デザインとは感覚言語である。5感にフルに訴えかけるものがデザイン。

    ・良いデザインを生み出すためには、自分自身が5感をフルに使えるよう日頃から鍛えることが必用。

    ・「わざわざ」を積極的な価値として前向きに捉えてもらう工夫を。

    ・新しい<美しい・使いやすいを目指すべき。

    ・車は動く建造物。街並みに映えるデザインになっているか。ミニワゴンはやめませんか?

    ・きれいごとを貫こう。きれいごとと聞こえること、矛盾することを、それを諦めずに、貫き通すところに、普遍的な美しさが生まれる。

    ・たきたての白いつやつやなご飯の美しさ。これが美しい普通。新しいデザインとは、次の時代の「美しい普通」をつくりあげること。

    ・目の前のお客さまのさらに先にいるお客さまを常に見て行動する。

    ・ぶらっと現場を渡り歩いても意味がない。自分なりの仮説をもって、その仮説の検証をするために現場を渡り歩く。

    ・良いデザインを生むためには、会社に余裕が必用。

    ・技術は日進月歩で進化する。故に、技術は陳腐化する。しかし、強固なビジョンは時代の変化に耐え、時代を超えて生き延びる。強固なビジョンのもとに、デザインを考えなければならない。

    ・人がいいかどうかではなく、まず自分にとっていいかどうか。この価値判断をするクセを日本人はもっと持たねばならない。

    ・新しい物事に挑むことは最高の贅沢だ

    ・僕の前に道はない。僕の後ろに道はできる。整備された道での勝負は競争とは言えない。道なき道を切り開くことこそが真の競創である。

    ・偶然を偶然と受け止めず、必然と考えて意味を解釈する。そう思うと目の前のチャンスが見えてくる。

    ・アイディアの95%はゴミ。固執せずに、次のアイディアに素早く移ることが大事。そのためにも、大量のアイディアストックは重要。

    ・アイディアは「なぜ?だから?誰にとって価値がある?」を問い続けることで磨き込む。

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  • デザインとは、色や形のだけでなく、ビジョンやコンセプトを作り出す。

  • 「歩けるようになってから歩いた赤ちゃんはいない」というツタヤの社長さんの御言葉に激しく感銘を受けました。

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著者プロフィール

ジャーナリスト1961年、新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステムに入社し、ファッションという視点から、企業や商品のブランドづくりに携わる。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年に退社。コミュニティー「偏愛百貨店」を立ち上げた。『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞出版)、『虎屋ブランド物語』(東洋経済新報社)、『TSUTAYAの謎』『すいません、ほぼ日の経営。』(以上、日経BP)など、著書は30冊を超える。毎朝3時に起きて原稿をつづる生活を30年にわたって続けている。

「2021年 『アパレルに未来はある』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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