- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784822288693
感想・レビュー・書評
-
世界は私達が考えているより、良くなっているというのが主な内容。
その変化がゆっくりだから気が付かないだけである。
では、なぜ私達は世界は悪くなっていると勘違いしてしまうのか。
メディアの責任は大きい。
しかし、メディアで働く人々を責めても問題は解決しない。
犯人探しはもうやめて、システムや制度に目を向けるべきと著者は主張する。
そして、著者自身が私達がつい陥る罠にまんまとはまり取り返しのつかない過ちをしてしまったことがあると告白する。
この本で紹介されている罠は、どんなに賢く聡明な人であっても陥ってしまうことの表れだと思う。
自分自身の過ちを許す様に、他者の過ちも許そうとこの本は締め括られる。
何より驚くのはこの本の著者ハンスが、この世を去っているということ。
ハンスはガンで余命1年を宣告された後、残りの命を燃やす様にこの本の執筆に取り掛かった。
そして、書きかけの原稿を握ったまま救急搬送され帰らぬ人となった。
この本の完成を待たずに亡くなってしまったのは本当に残念なことである。
遺志を受け継いだ息子夫婦がこの本を完成させた。
世界的なベストセラーになった理由は、ただ単に内容が良いからというだけではなく、世界中の人々に知って欲しいというハンスの想いが世界中の人々に届いたからだと思う。
この本に出会えて本当によかった。
久しぶりに心からそう思える一冊。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書は世界が良くなっているという肯定的な姿勢である。全体的に見て、そうであるとしても、個々には深刻な不合理や不正があるだろう。私にはマンションだまし売り被害という個別的な経験がある(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』)。全体的に良くなっているという話で有耶無耶にされたらたまらない。
この点も本書は考慮している。本書は「悪い」と「良くなっている」は両立すると指摘する(89頁)。これは納得である。深刻なマンションだまし売り被害があること、一方でマンションだまし売り被害を消費者契約法で対抗できるようになったことは両立する。
本書は福島原発事故の放射能汚染の危険性を煽ることも戒める。原発事故の放射性物質被曝よりも、不便な避難生活によるストレスで健康を害する人の方が圧倒的に多い。害悪の優先順位を考える必要がある。これは放射脳カルトを批判した私にとって同感である(林田力『放射脳カルトと貧困ビジネス』Amazon Kindle)。
本書は常識的な思い込みが真実ではないと指摘する。間違った思い込みの多くは1960年代には真実だったものも多い。偏見にとらわれているだけでなく、昭和の対立構造のまま21世紀の現代社会を論じる誤りもあるのではないか。