- Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
- / ISBN・EAN: 9784826902106
感想・レビュー・書評
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面白い。知らない世界。アウストラロピテクスしか知らなかったが、引き込まれた。
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化石そのものを主役にした切り口は新しい。ダーウィン進化論以降の人類史観を垣間見ることができる。
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世界的に「有名な」人類化石はいかにして、今のスターの地位を手に入れたのかを、7つの人類化石を例に取り考察していく。7つの中で正直日本人に馴染みがあるのは北京原人くらいだけど、むかーしに死んだ何もしていない化石(見つかっただけ!)が、あるものは人気者になり、あるものはならない、その要素と過程の差が興味深い。
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古人類学において有名な化石が、いかに発見され、有名になっていったかを紹介する本。
帯の文句「「科学標本」から「メディアの寵児」へ」にあるとおり、それぞれの化石が有名になる過程は必ずしも科学的価値のみによらず、メディアでの扱われ方等、文化の中での位置づけ方が大きく影響する。
もっとも象徴的なのが第5章、1974年発見の化石「ルーシー」が、アウストラロピテクスの重要な標本という価値を超え、エチオピアのアイデンティティにも繋がる文化的アイコンとして成立していく様子だろう。考古学史上の一大スキャンダルとなったピルトダウン人が取り上げられているのも、そのような文脈ならでは。
また第1章「ラ・シャペルの老人」の化石が学術論文に留まらず、SFやジオラマでネアンデルタール人のイメージの元になっていく様子。古人類学という学問が人類の起源という根本的な疑問を追求するものであるために、必然的に宗教や哲学に近接する話題になりうることが分かる。
本書はサイエンスコミュニケーションについての本であると同時に、学術情報共有についての本として読むこともできる。化石というモノ資料へのアクセスがなければ研究を進められない。研究者が自分の所蔵する標本を、自説に批判的な研究者には使わせないといった出来事もあったようだ。
19~20世紀初頭の科学研究では3Dデータの共有手段として立体鏡が使われたこと(p38)。化石「タウング・チャイルド」の発見者ダートは、化石の模型の著作権を獲得して使用料を得ていた(p118)。現物が失われて模型でしか研究できない北京原人(第4章)、2010年発見の化石マラパ化石群は一般の人にもオープンにされた話(第7章)。