宗教の起源――私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか

  • 白揚社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784826902489

作品紹介・あらすじ

進化心理学の巨人ダンバーが描く、人類と信仰の20万年。仏教、キリスト教、ヒンドゥー教、神道……世界の主要な宗教は、なぜ同じ時期に同じ気候の地域で誕生したのか?カルト宗教はなぜ次々と生まれ、人々を惹きつけるのか?科学が隆盛を極める現代においても、宗教は衰えるどころかますます影響力を強めている。ときに国家間の戦争を引き起こすほど人々の心に深く根差した信仰心は、なぜ生まれたのか?そして、いかにして私たちが今日知る世界宗教へと進化したのか?「ダンバー数」で世界的に知られ、人類学のノーベル賞「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した著者が、人類学、心理学、神経科学など多彩な視点から「宗教とは何か」という根源的な問いに迫った、かつてないスケールの大著。■ ■ ■集団内に協力行動を生みだす信仰心も、集団の外に対しては反社会的行動の原動力となる。宗教的アイデンティティが国家に利用されるとき、悲劇は起こる。――フィナンシャル・タイムズ紙宗教と人間の生活のあり方は、かくも複雑なのである。本書は、その両方を進化的ないきさつから説明しようと、真に大きな考察を展開しようと試みる大作である。――長谷川眞理子(進化生物学者、総合研究大学院大学名誉教授/「解説」より)■ ■ ■

感想・レビュー・書評

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  • 〈信じる心〉はなぜ生まれたのか?『宗教の起源』試し読み|白揚社
    https://note.com/hakuyo_sha/n/nf43837035379

    「人がつながりを持てるのは150人まで」その定説に挑戦した研究 論争が始まった:朝日新聞GLOBE+(2021.06.23)
    https://globe.asahi.com/article/14378335

    「人類進化の謎を解き明かす」書評 運命を分けた集団形成の差|好書好日(2018.06.05)
    https://book.asahi.com/article/11591845

    宗教の起源|白揚社 -Hakuyosha-
    https://www.hakuyo-sha.co.jp/science/shukyo_no_kigen/

  • 無神論者、いや何でも受け付ける人が多い日本。
    私も例外ではないが、宗教は身近で興味はある。しかし、いつ・なぜ発生したは知らない。

    古代交流のなかった地球上の各地で、あらゆる自然現象や自身の周りで起こる出来事に対し超人的な何かがあると畏怖する心が芽生え、それが意図せずアミニズムやシャーマニズムにつながり、宗教に至るのは、まるでヒトの遺伝子に組み込まれているようで何とも不思議だ。

    著者のロビン・ダンバー氏は、もともとサルの仲間の社会行動を研究する霊長類学者であったが、その後ヒトという生物が持っているヒトに固有の性質、即ちヒトの本性は何であり、なぜこのように進化したのかを研究する、進化心理学者になったとのことだ。
    彼は、ヒトが真に親密性を感じて暮らすことができる集団のサイズには上限があり、それはおよそ150人であるという。(=ダンバー数 これが世界的に評価され「人類学のノーベル賞」と称されるトマス・ハクスリー記念賞を受賞)

    ダンバーは、もともと、脳の新皮質の大きさから、その動物が処理出来る社会情報の限界を計算し、ヒトの場合は150人だという数字を導き出した。人類の進化史の90%以上において人類は狩猟採集生活をしていたが、この暮らし方では、15人くらいまでの小さなバンドで日常的に生活し、バンドが寄り集まって部族を形成してきた。
    そしてその最大サイズは、およそ150人だとわかってきたらしい。

    人類は、およそ1万年前に農耕・牧畜を始め、定住生活を始めた。そこから都市が形成され、文明が生まれた。つまり150人以上の数の人々が集まって暮らすようになったのだ。これは脳の自然な認識の限界を超えた数である。それを可能にしたものの一つが、宗教的信条を同じくする人々の結束であったのではないか。
    「同じ私たち」という感覚を想起させ、一緒にいそしむようにさせる、それを可能にした重要な要素が宗教だったのではないかと言う。

    では、なぜ宗教というものが出てきたのか、なぜそれは広まるのか?それはヒトが持っていた脳の働きに起因すると言う。
    ヒトという生物は、自己と他者を認識し、自分の心が自分の状態を作り出していることを認識するとともに、他者も他者自身の心を持っており(メンタライジング、マインドリーディング)、それによって行動を決めることを知っている。そして、自分と他者とを脳の中でシミュレーションすることによって、自分に起こったことではなく、他者に起こったことを、まるで自分に起こったことであるかのように、他者に共感することができる。
    また、ヒトは、このような想像とシミュレーションを働かせることにより、あまり原因がよくわからないことが起こった場合に、何か、自分たちとは異なる能力を持った存在がいて、それらの存在がそんなことを起こしているのではないか、と想像することができる。そして、それを他者に伝え、他者もそれに同意することができる。

    では自分たちとは異なる能力のある何かが存在する、という感覚はどこから来るのだろうか?
    それには、トランス状態というものが大きな役割を果たしている。踊り続ける、歌い続ける、ということをすると、脳内のエンドルフィンなどの伝達物質の分泌が変化し、「奇妙な精神状態」になるのだ。つまり脳がなせる技なのだ。

    まとめると、
    ヒトには、宗教を生じさせる脳内の基盤がある。しかし、それは、宗教を生み出すことが主眼で進化してきたのではない。物事の因果関係を推論すること、物事の原因として他者の心を想定すること、そのような解釈を、他者と共有すること、などが人類の進化史上、重要だったからこそ進化した。それが集まると、宗教というものがおのずと創発してしまうのだろう。そして、一度そういうものが出現すると、今度は、それが新たな意味を持ち始める。それは大きな集団をまとめる力にもなり、思いを同じくしない「他者」を攻撃する理由にもなる。これは宗教戦争が示している。
    宗教的集団は、大きくなると「組織」になり、政治・経済と結び付く。

    未来の人類は、あるいは脳は、どう対応すべく進化するのだろうか。

  • 一定以上の集団を結ぶ役割としての宗教の考察が丁寧になされている。
    宗教は何も不思議なものではなく、背景がある。
    アメニズム的信仰にも言及されている。
    内容は難しい。相当数の宗教分派に関わるワードが多数出てきており、詳しい理解のためには他に勉強の必要がある。
    しかし、前段の通り、普遍的な意味での宗教を捉えるには背景知識が多少不足していても可能であり、非常に面白い書籍である。

  • 宗教がなぜ生まれてきたのか、脳内でのエンドルフィンの分泌作用、人口増加による集団の防衛、集団の統率など、様々な実用的な目的で発達してきたという仮説。

    神秘的な観点ではなく、必要があったから生まれてきたという客観的な根拠にも依拠する説明は目から鱗が落ちる読書体験でした。

  • かなり読みやすく、それでいて深い知見を得られる素晴らしい一冊。宗教そのものというより、私は、同じ志によって行動する組織──つまり、会社のような組織に応用できる考察はないかと思って読んでいたが、その期待を裏切らなかった。
    ダンバー数が圧倒的に正しいと信仰するかどうかは別にしても、一定の尤もらしさや、組織マネジメント論に比して検証なされている人類学の共同体に関する研究について、人々と関わり、字義通り目に見える実利以外の効果を期待する場合、宗教の起源について学ぶことの意義は小さくない。

  • なんとなく、タイトルと目次を見て読もうと思ってみたのだけれど、
    よく見ると、ダンバー数(人間の安定した社会集団の上限はだいたい150人くらい)で有名な著者によるものだったと知り、楽しみにしながら読んでみた。

    この本は、タイトルからすると、宗教の考古学的な研究や宗教の歴史研究のように思えるが、そうではない。
    宗教の中身の問題ではなく、宗教があることが人間社会においてどのような役割を果たしているのかについての本になっている。

    結論から言うと、人間の集団は本来の自然な規模であるダンバー数、100~200人を越えて(ある程度)機能しているわけだが、社会集団を機能させるための調整機能を宗教ははたしている。
    また、シャーマニズム的な宗教から、やがてより複雑な教義的宗教が現れるようになってきた過程について、集団の規模が大きくなってきたこと、それにより、より大きな集団をまとめるための方法が模索された結果ではないか、と著者は述べている。
    その他、枢軸時代に亜熱帯地域に現在の世界宗教となっているようなものが出現している理由や宗教の中でカルトやセクトなど分裂の起きる理由なども考察されている。

    あくまでも個別の宗教の中身、教義の是非を問うようなものでなく、
    人類学的、心理学的分析に基づいて社会と宗教の関係を見ていくような本になっていた。

    日本人には宗教は馴染みうすいことも多いが、世界は宗教で動いているとも言われる。
    そう言った目線で見るのには役立つ本だと思った。

  • 分散型の生活から集約的な生活へ変遷するうえで宗教が生まれ発達してきた理屈がよく理解できた。

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著者プロフィール

オックスフォード大学の進化心理学教授。ダンバー数や社会脳仮説の提唱者として知られる。邦訳書は『友達の数は何人?』『ことばの起源』『科学がきらわれる理由』。

「2016年 『人類進化の謎を解き明かす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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