本当に使える経営戦略・使えない経営戦略

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  • ぱる出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784827207873

作品紹介・あらすじ

どこへ消えたか、あの『エクセレント・カンパニー』。ポーターから楠木建まで、著名戦略セオリーの有効性と限界を読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 著者が(他の本含めて)考案した方法は、泥臭いけれど本当に実践的だと思う。
    日本に氾濫しているビジネス書の多くが、アメリカのグローバル企業でようやく対象となるような戦略であって、一般的な企業はまず自身が弱者であると定義した方が良い。それこそ、国家予算のあるべき姿の論を家計に当てはめるような(笑)ものだ。
    下に引用するランチェスター戦略の概要が、とっても分かりやすかった。

    ・ランチェスター戦略では、まず市場設定をします。例えばスーパーマーケットなら、自店に来店してくれる顧客の地域的な広がりを認識するわけです。それはもちろん、行政区分とは連動しません。山や川などの自然の地勢、あるいは鉄道線路や幹線道路などの人口施設により切り分けられます。あるいは強力な競合店により証券が切り取られてしまっている場合もあるでしょう。
    該当市場圏が認識されたら、その中でのマーケットシェアを調査あるいは推定します。どこが競合となっているかの認識も重要です。自分が中華料理店だとして、競合を地域の中華料理店だけ、と捉えるか、レストラン全体と捉えるか、でシェアのランクは変わります。
    シェア1位の企業だけがランチェスター戦略では「強者」とされます。2位以下はすべて「弱者」というわけです。
    弱者と強者では「取るべき戦略が反対に」なります。
    強者の戦略とは「ミート戦略」と総称され、基本的に弱者が仕掛けてくる施策を待って、それと同じことを強者としての強大な規模で対抗すればよい、というものです。強者の方が一般的に資本や人材に恵まれているはずですから、このような「こまめに後出しじゃんけんを出す」で弱者を押さえ込める、というものです。
    弱者の戦略とはその逆、つまり裏をかくとか一点突破・全面展開という勇ましいかけ声で、市場のどこか局地的なところでシェア・アップを図り、陣地取りをします。そのやり方が「差別化戦略」と総称されます。そしてその陣地を段々広げていこうとするものです。

  • p4

    『タフ・ネゴシエーターの人を見抜く技術』

    2001年12月 Fast Companyというアメリカのビジネス誌が『トム・ピータース、真実の告白』というインタビュー記事を掲載しました。その記事の中で、トム・ピータース自身が「『エクセレント・カンパニー』の中で我々はデータをねつ造した」と認めてしまったではなりませんか!
    「あれはマッキンゼーのゴミ箱から出て来たがらくたで、『ヒップ・ポケット・プロジェクト』、全くのでっち上げだったんだ」

    p21
    ビジネスのやり方全体で差異化を図ることを「ビジネス・モデル・セオリー」といいます。

    p27
    VRIO
    ①V = Value 経済価値 その経営資源に価値があるかどうか?
    ②R = Rarity 希少性 その経営資源は希少性があるかどうか?
    ③I = Inimitability 模倣困難性 その経営資源は真似されにくいかどうか?
    ④O = Organization 組織 その経営資源を最大限に活かすことのできる組織作りができているかどうか?

    p29 経営戦略を見直すタイミング
    ○外部環境が大きく変化したとき
    市場環境や顧客のニーズの変化、規制などの社会的状況の新発生、競合による強力な技術や製品のリリースなど。
    ○有力な経営資源を獲得したとき
    人材、技術、資本、設備など。

    p32
    実はかくいう私も、2006年にとあるエグゼクティブ・サーチの会社から、
    「柳井社長に会ってくれないか、玉塚さんの後任で海外M&Aプロジェクトを仕切ってくれる人を探している」
    と、誘ってもらいました。

    p47
    リゾート再生を受託すると、星野社長には定型的な初期の経営ステップがあります。それは次のようなものです。
    ①現場の社員と「個別面談」を行う。
    ②そのリゾートに関する徹底的な「市場調査」を行う。
    ③そのリゾート個別の「コンセプト」を現場の社員たちに立てさせる。
    ④「コンセプト」を承認した後は「信頼して任せる」。
    これら4つのステップの中で、星野社長が最も重要だと考えているのが実は「コンセプト」作りなのです。だから、星野社長の再生経営術とは、実は「コンセプト経営」と呼ぶことができます。

    p52  優れた戦略ストーリー
    ○ストーリーの強さ
    ○ストーリーの太さ
    ○ストーリーの長さ

    p53
    戦略ストーリーの5C
    ①競争優位 利益創出の最終的な論理。起承転結の結。
    ②コンセプト 本質的な顧客価値の定義。起承転結の起。
    ③構成要素 競合他社の違い。起承転結の承。
    ④クリティカル・コア 独自性と一貫性の源泉となる中核的な構成要素。起承転結の転。
    ⑤一貫性 構成要素をつなぐ因果論理。ストーリーの評価基準。

    5Cの2番目は②「コンセプト」ですが、楠木は「コンセプトが一番重要だ」としています。

    p54
    『ストーリーとしての競争戦略』がよく読まれたのは、「ナレーティブ(語り)によって戦略を展開する」というアプローチによるものでしょう。

    p63
    大切なことは、部門別戦略や機能別戦略は個別の戦略であり、それぞれの効果を求めすぎて全体として「合成の誤謬」(個々のケースで見れば正しい行為でも、全体で見れば悪い結果をもたらす、という意味)としないことです。

    p64
    俗流経営戦略
    ①軍事史に学ぶ
    ②戦国武将に学ぶ
    ③ランチェスター戦略
    ④スポーツ競技に学ぶ

    p65
    『新訂孫子』金谷治 岩波文庫
    『貞観政要』守谷洋 徳間書店

    p66
    『ガリア戦記』岩波文庫
    『ドイツ参謀本部』渡部昇一 中公文庫

    ブームを演出したのはビジネス誌『プレジデント』誌でした。1980年代、この月刊誌の表紙は織田信長、武田謙信、黒田長政などの冑姿のイラストが続き、まるで歴史雑誌のような趣となっていたのです。

    p67
    『ランチェスター思考II 直観的問題解決のフレームワーク』

    p76
    社長としては、
    「部門長が、短期的にだけではなく中長期的にチームを導いてくれたら」
    と、いつも強く思っていたことです。

    p77
    一般社員:コミュニケーション力
    管理職:リーダーシップ
    経営幹部:戦略力(立案力・実践力)

    p82
    「戦略カード」
    http://senryaku.p1.bindsite.jp

    ◎何をしたいのか、するのかを提示する(言語化する)
    ◎当社(当部門)のあらゆる事象が関わる可能性がある(重要なものを判断しなければならない)。
    ◎事業にともなう多くの要素を、戦略行動手順として構成(並べ出す)する。

    p85
    経営に対しての思いをはっきりさせる「言語プロセス」
    資本家や部下などに説明できる「言語パッケージ」

    「シナリオ・ライティング」という技法を駆使します。

    p86
    ■ステップ1(1人ブレーンストーミング)
    【目標の設定】
    「3年目標」のカード出し、選定、理由の裏書き

    ■ステップ2(コミュニケータブル)
    【目標合意】
    資本家、役員会など

    ■ステップ3(気づき)
    【課題の発見】
    カード洗い出しから重要課題、理由の裏書き

    ■ステップ4(思いつき)
    【解決策の策定】
    課題それぞれにカード出し、重要カード、理由、戦術カード

    ■ステップ5(リスク・マネジメント)
    【派生問題と対処】
    重要生涯と対処策カード

    p86
    経営戦略の時間枠は3年
    4
    ■ステップ1「目標の設定」
    「戦略カード」に3年後に実現したい企業目標を書き出します。「1枚のカードに1項目を、ひとつの文章で」を原則に、できるだけたくさんのカード出しをします。目標には「定量目標」と「定性目標」があります。(p87)


    定量目標も定性目標も数多く出し切りましたか?20や30のカードは出してください。「もうこれ以上出ない」となったら、すべてのカードを見渡し、重要カードを3枚だけ選び出し、カードの右上にある「選択マーク」にチェックを入れておきます。たくさん出したカードの中から、どの3枚を選ぶかは、ひとえに経営者としての価値観によります。選択したカードの裏には、選択理由をい書いておきます。(p88)

    ■ステップ2「目標合意」
    ここのステップは「できれば」ということです。(p89)

    ■ステップ3「課題の発見」
    「課題」とは「経営課題」のことです。「全社戦略」を策定しようとするのなら、会社の中に存在する困った問題を「大きなものから小さいものまで」あるいは「重要なものも些末なものも」全て洗い出すことを試みます。会社全体に関わるものも、特定部門に偏在する課題もカード出しします。

    「戦略カード」を使ってできるだけ多くの「カード出し」をするのです。「1人ブレーンストーミング」を刺激する資料としては、組織図があります。

    全社戦略として出したいカードは、「できるだけ大きな課題」です。個別部門を超えた、当社全体に大きく立ちはだかっているような課題を書き出せるか。(p90)

    「部門戦略」を策定しているなら「自部門独自の問題」、「他部署と関連して発生している問題」、そして「外部(顧客、取引先、規制、地域など)と関連して発生している問題」の3つで考えれば漏れが少なくなります。

    p92
    ステップ1「目標設定」で出したカードは、「3年後に実現したいこと」なので、カードの文章表現は前向きなものでした。表現としては「~したい。」などとなります。
    ステップ3「課題の発見」では、現在困っている、何とかしたい「経営課題」を書き出すので、その表現は「××が問題である。」といったような「困っている表現」とします。

    既に設定した「目標」からは「課題カード」は出てきません。ステップ1とステップ3は論理的には繋がっていないので注意してください。

    p92
    多くのカードの中から、「これだけは解決したい」という重要カードを3つ選び、「選択マーク」を付けます。選び出したカードには、裏に「選択理由」を書きます。カードの裏では、文章はひとつに限定しません。後で説明できる、「コミュニケータブル」とするためです。
    どの課題カードを選ぶかは経営者の価値観によります。ですからその判断や価値観を示すために、裏に「理由書き」をするのです。

    「課題カード」を選ぶときには「目標カード」を意識するとよい。つまり、「その課題を克服できればどれだけ3年目標のひとつを実現できるか」ということが、「課題カード」の選択尺度のひとつになります。


    p93
    「戦略カード」の表側には、「文章をひとつだけ書く」というのがルールです。

    ひとつの文章は短いほうがいい。

    ■ステップ4「解決策の策定」
    p94
    「カード出し」を行なっているときは、「どれが有効か」「そんなことが可能なのか」「それを採用したらこんな問題が出てくる」などということを考えていけません。


    p95
    3つの課題に対して、それぞれカードを20枚くらいは出してほしい。結局、半日がかりの作業となるはずです。

    p96
    ステップ4では、最も有効と思われる「解決策カード」を数枚選び出し、選択マークと選択理由の裏書きをするのがゴールとなります。各課題につき、それぞれ数枚の「解決策カード」ができるということです。

    「ステップ3:課題の発見」で大切だったのは「気づき」でした。

    今回の「ステップ4:解決策の策定」で重要の資質となるのは、「思いつき」です。

    ステップ4ではどれだけ他者を説得できる蓋然性の高い「解決策」に辿り着けるかが、勝負となります。つまり、「それはありそうな話だ」とか、「その方法はいけるんじゃあないか」と思わせる「解決作」カードを最後に残せるか、絞り込めるか、ということです。

    ■ステップ5「派生問題と対処」
    p98
    「経営戦略」のことを私は、「やり方」とも呼んでいます。「新しい戦略」とは、「新しい仕事のやり方」なわけですね。

    ◆「派生問題」の中で「最大障害」カードはどれ?
    何か必ず起こるとしたら、腹をくくって事前にそれを予想しておきましょう。
    「課題A」というカードに、「解決策」として3枚のカードを選びました。そのうち、「A-1」カードを実施したら、どんなことが起こるでしょうか。ステップ5では、「戦略カード出し」であり得る派生問題をできるだけ多く予想してください。

    p100
    「カード出し」をしたら、このステップ5での「カード選び」は1枚だけで結構です。「選択マーク」をつけ、裏に「理由書き」をすることは今までと同じです。
    ここで1枚選んだカードのことを「最大障害」と呼びます。この定義は、「その障害を克服することができれば、その解決策はほぼ実現することができる」というものです。

    あり得るリアクションの中で一番手に負えなそうもないもの、あるいは手強そうなものも見当がつくでしょう。それが、「最大障害」です。

    「派生問題」を予測したら、「対応策」カードを切ろう

    p101
    どんなによさそうな戦略の妙手を思いついたとしても、それは「成功の可能性」でしかありません。だとしたら「阻害要因」をしっかり予想して、リスクをできるだけ小さくしておきたい。それがつまり、「戦略のリスク・マネジメント」ということになります。

    「課題解決型の戦略立案法」で5つのステップを踏み終わると、手元には選ばれた30枚強の戦略カードが残ります。全てのカードの裏には、「どうしてこのカードを選択したのか」という理由が書かれています。
    また全てのカードは「ミニ・シナリオ」のどれかに組み込まれています。「ミニ・シナリオ」はそれに結合して全体として大きな「シナリオ・ツリー」を構成しています。

    p102
    経営者の頭の中に秘められていた漠然とした「思索」が形を獲得して、「言語パッケージ」にまとめられたのです。

    p104
    「重要課題カード」を3つ掲げてそれぞれに3つの「解決策カード」を設定する場合、3✕3で9つの「ミニ・シナリオ」が掲載されます。これら9つの「ミニ・シナリオ」がひとつの「シナリオ・ツリー」を形成しているわけです。

    p105
    ミニ・シナリオの論理貫徹
    課題の発見

    解決策の策定

    派生問題(重大障害)

    対処法

    最低条件というのが、「個々のミニ・シナリオが論理的につながっている」ということです。

    p109
    戦略発表スライド

    p110
    ミニ・シナリオのそれぞれができたら、信頼できる誰か1人の部下―マネジャー―にぶつけて意見を聞くのは意味があることです。
    このとき、意見を聞く相手としては「戦略センス」のあるマネジャーにしてください。「戦略センスがある」とは、戦略カード出しでいえば「解決策の策定」のカードを出せるということです。つまり、「思いつき」が利く特定のマネジャーと、ミニ・シナリオについて意見とアイデアを出し合いながら、補正したり膨らませたりしていきます。

    p114
    「せっかく戦略を立てるのなら、大きなコトを考えろ、掲げろ」

    p116
    新規に3年経営戦略バージョン1.0を作ったら、すぐにそれを経営現場で実践し始めるわけです。現場に落として展開を始めることを「ロールアウト」と呼びます。バージョン1.0を現場でロールアウトしてみると、そこここに不具合が見つかるものです。
    あるいは追加したい施策なども思いつきます。それらは概ねバージョン1.0を大きく否定するようなものではありません。調整とか追加的なものです。

    p117
    そういうことに気づいたら、これも戦略カードに留めて置いて、ロールアウト後3~4ヶ月後にマイナーな改訂をします。これを戦略の「導入初期改訂」と呼びます。バージョンが1.2くらいとなる程度のアップ・グレードだと思ってください。
    戦略バージョンを2.0にするほどの大幅見直し、大幅改訂はどのようなときに行えばいいのでしょうか。中期経営計画を策定している会社では、毎年それを見直して「次の3年」の計画を立て直すところもあります。このやり方を「ローリング改訂」と呼びます。

    バージョン1.0
    ・「今」作り始めろ!
    ・3ヶ月で完成させる
    バージョン1.2
    ・導入初期改訂
    ・手直し、増補
    バージョン2.0
    ・社内経営資源の大きな変更(獲得や喪失)
    ・社外環境変化に対応(競合や規制など)



    p118
    経営資源の変化がプラス要因的なものだったら、バージョン2.0戦略は当社の躍進を加速するはずです。
    一方、マイナス要因的なものだったらバージョン2.0戦略はディフェンシブなものとなり、当社のダメージの度合いを少なくするでしょう。

    p119
    一方、社外における大きな環境変化というと、競合状態がまずあります。

    また顧客や市場側での大きな変化や、各種の規制の新しい実施や撤廃などが、大きな外部環境変化の例です。
    このような状況が発生したり、察知したら当社も速やかにバージョン2.0戦略に移行して対応する必要がある。

    p119
    経営者が日々展開する全ての経営行動の中で、最も重要なものが戦略の策定とその実践です。それは、意識され言語化された戦略パッケージこそが当社の業績に対して、中期的に一番決定的な影響力を行使するからです。

    http:www.keieisha.jp/kbc/

    p133エクセレントカンパニー、ビジョナリー・カンパニー
    実際、2つの本が例外的なビジネス・ベストセラーとなったのは、結論がこのように定性的(文章表現)で、そして教条的なところにもあったと思います。つまり、わかりやすい。そして、どちらもいかにも"もっとも"に聞こえるわけです。経営実務家がひとつだけの座右の銘ではなく、いくつかの項目からなるリストを掲げておくにはもっていこいの結論ではありませんか。

    p145
    私に言わせれば、ブルー・オーシャン戦略というのは初めから論理破綻したセオリーです。
    当社が実現できるようなことは、同業の競合ができないことはありません。

    p153
    自社分析:7S分析
    自社との関連:3C分析、SWOT分析
    業界内部:4つの競争地位分析
    業界環境:5F分析(ポーター)
    マクロ環境:PEST分析

    p153
    私は30代の初めにアメリカン・エキスプレス日本支社に勤務したことがあり、一度だけ日本支社の来期の事業計画書のとりまとめをやらされたことがありました。毎年続いていた書籍はほぼ一定で、300ページ以上からなるその計画書は「ザ・ブック」と呼ばれていました。
    「ザ・ブック」の前段がこのPEST分析で、それを50ページ前後書かなければなりません。
    書式によれば、日本の政党各党の支持率変化の予測だとか、来年のGDPや消費者物価指数について代表的なシンクタンクが出している予測値をならべて、どれが当たりそうだとかを書きました。



    p163
    私自身は、3C分析だけがあれば経営者には十分だと考えます。

    P163
    (重要顧客の要望)では、特に「不」のつく言葉を探せ、と言っています。顧客の不満、不便、不利益、不合理などを見つけて、それを解消してあげる方向を探していきましょう。

    p169
    「ポーターは完全に思い違いをしている。分析テクニックにより戦略を立案した人物は過去に一人もいない。分析の世界は、理屈により整然と説明がつき、白黒がきれいに割り切れる。それに対して戦略の世界は、雑然としていて、さまざまな要因が複雑にからみあっている」 『マネジャーの実像』

    p170
    「SWOTフレームワークが教えてくれるのは、企業が追求している戦略セオリーを検討するに察し、どのような質問をすればよいか、ということだけである」
    p171
    「しかしこのフレームワークは、『それらの質問にどのようにして答えればよいか』については沈黙している」

    いくつもの企業の現場で実際に経営戦略を考え構成し、実践してきた立場にあった私が辿り着いた考え方は、次のようなものです。
    ①フレームワークは分析技法である。自社のことや周りのことを、与えられたいくつかのフレームに従って羅列し、整理するだけだ。
    ②フレームワーク分析による陥穽は―便利なだけに―「並び出してわかったつもり」になって、それでお終いにしてしまいがちなことだ。
    ③フレームワークによって自社のこと、周辺のことをいくら分析しても肝心の経営戦略は立ち上がってこない。それには、第3章で述べた「気づき」と「思いつき」に寄らなければならない。
    ④分析すること、整理することは無限にあるので、深入りしてはいけない。

    p186
    ポーターが新しく提出したセオリーの中で、大きなものは3つあります。
    ◎「競争優位」という用語と概念
    ◎「5 Forces(5F:ファイブ・フォース)5つの競争要因」
    ◎3大競争戦略(「コスト・リーダーシップ戦略」、「差別化戦略」、「集中戦略」)

    p187
    『競争優位の戦略』でタイトルにも使われています。700ページ近い専門書なので、私の知り合いの経営者で読破した人はいません。

    「競争優位」とは、「当社は何をもって、競合社よりも顧客や市場に優れた便益を提供していくか」という実態と自覚のことです。

    p189
    新規参入、新規に会社を設立するとき

    既に事業を走らせている経営者にとっては、
    「自社を取り巻くそんな競争があることは百も承知で、だから頭が痛いんだ」
    ということなのではないでしょうか。

    p219
    企業の成功のためには特に重要な4つの要素
    ①成長戦略
    ②組織効率
    ③モチベーション
    ④コミュニケーション

  • 戦略ではなく、繁栄の黄金律を大事に。
     成長戦略×組織効率×モチベーションをコミュニケーションで支える。
    戦略発表スライドにて目標と課題を作る

  • 7年前の本ながら、それまでに世に出ている経営理論を俯瞰してまとめ、評価している。今でも普通に信じられている理論もバッサリ切っているところは気持ちいい。
    著者が薦めているのは、基本中の基本のような内容、こねくり回さなくても目の前に見えていることを整理して愚直に進める、って言うシンプルなメッセージと捉えた。

  • 「エクセレントカンパニー」はでっち上げだった。
    VRIOフレームワーク=経済価値、希少性、模倣困難性、組織。
    イノベーションのジレンマ=優良大企業が敗退する理由。

    星野リゾートは特定の経営者個人と同じ。コンセプト経営。

    品質戦略はドアオープナー。市場の入り口でしかない。
    顧客満足度最大化戦略が絶対とはかぎらない=合成の誤謬。
    ゼロデフェクト運動=不具合完全撲滅=過剰品質を呼び込む。

    俗流経営戦略=戦史、武将、ランチェスター、スポーツ競技に学ぶ。
    ランチェスター戦略はは使える。イギリスの技術者。

    経営者ブートキャンプ。

    コアコンピタンスを決めることは不可能。10年後の市場などわからない。実際に多くの会社は、持っていないし持てない。

    ビジョナリカンパニーは、並の会社になった。ハロー効果がみられる。ただしデータはでっち上げではない。

    囚人のジレンマのような「社長のジレンマ」
    ゲーム理論は、重要な情報や詳細の大部分を捨象している。ゲーム理論は有益な助言をしない。
    現実は選択肢が多くて、役に立たない。

    ブルーオーシャン戦略=幻想を広げた最悪のセオリー。はじめから論理破綻している。模倣のほうが楽で正しい。一度成功すると、競合が追いかけてきて、有効市場域を広げただけになる。

    PEST分析=為替や政治やマクロ経済までわかるわけがない。

    経営規範は何でもいい。5か条のご誓文や維新八策などと同じ。

    分析も3Cくらいでいい。
    SWOT分析は、コンサルタントのためにある。わかったつもりになるけど役に立たない。
    7Sはマッキンゼーが売り込んだ。
    4Pと4Cは同じ。企業目線か顧客目線かの違いだけ。

    フレームワークからだけでは戦略は出てこない。
    GEではジャックウェルチが「戦略計画方式」をやめさせた。

    成長期に入ったという指標のひとつは、競合他社が現れること。その恩恵を最大にこうむるのは最初の参入者。
    わかりにくいのは、成熟期か衰退期か、ということ。

    PPM(プロダクトポートフォリオ)複数の事業を持つ企業のためには使える。わかりやすい。そのためポストンコンサルティングは使わなくなった。

    GEは経営技法の実験現場となった。
    ジャックウェルチ=選択と集中。コングロマリット向け戦略。
    大学発のベンチャーが成功していないのは、経営学が役に立たないから。

  • 経営学で学ぶ経営戦略は、実ビジネスに役に立たないことが多い。それは、わかりやすく、それっぽくした戦略であるからとのこと。
    また、そういう戦略を考えたのはコンサル会社や経営大学院の人たちが、アメリカの超大手企業を例に考えている。
    昔からコンサルというものに、意味もなく勝手に、不信感を持っていた自分だったが、この本を読むことで少し理由が整理できた気がした。
    とはいえ、使える戦略があまりピンとこなかった。

    あと、少し古い本のせいか、大学発ベンチャーに対する考え方が、自分と全く相入れないものだった。

  • 2019/08/20図書館
    ●イノベーションのジレンマ:コダックと富士フィルム
    ●所有しない経営、任かせる経営:星野リゾート
    ●ストーリーとしての競争戦略:終わりから考えることが大切で、それから発想しろ、組み立てろ。

  • ほとんどのビジネス戦略が役に立たないことだけは分かった。

  • メジャーな経営戦略に対して、経営実務側から見た評価、感想が語られている。著者の経験からの評価ではあるが、興味深く読めた。
    しかしながら、挙げられる経営戦略の多くが『使えない』としており、『使える』方は、割とアバウトにしか触れられていない。消化不良な本。

  • 図書館

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著者プロフィール

山田 修(やまだ おさむ)
早稲田大学大学院文学研究科博士課程満期退学。スコットランドのダンディー大学にて在外研究(1988-89)、スコットランド文学、特にジョージ・マッカイ・ブラウンに関する資料を収集。現在、獨協大学名誉教授。
訳書に『ロバート・バーンズ詩集』(共訳、国文社、2002)、G. M. ブラウン『島に生まれ、島に歌う』(共訳、あるば書房、2003)、同『グリーンヴォー』(共訳、あるば書房、2005)、同『守る時』(あるば書房、2007)など。またH. D. Spear (ed.) George Mackay Brown- A Survey of His Work and a Full Bibliography (The Edwin Mellen Press, 2000)の書誌を担当。

「2023年 『ヴィンランド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山田修の作品

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