梅原猛と仏教の思想

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  • 法蔵館
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784831855701

作品紹介・あらすじ

ロマンと情熱に満ち溢れ、瀬戸内寂聴をはじめとする多くの文化人を魅了してきた「梅原日本学」。その展開に仏教はいかなる着想を与えたのか。

仏教思想家・梅原猛の大胆かつ独創的な思索の源泉に迫った、待望の本格的思想評伝!

【目次】
序 章 仏教思想家として梅原猛を読む
第一章 闇から笑いへ:哲学修業時代
第二章 仏教の思想:上山春平との共同研究
第三章 古代史から人類哲学へ:独自路線の模索
第四章 「日本学派」の思想:国際日本文化研究センターの人脈
第五章 空海から法然へ:仏教研究の転換
終 章 顕密体制論と神仏融合:近年の研究との比較
あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 哲学者として学問的なキャリアをスタートさせたのち、日本古代史の分野で通説にあらがう大胆な立場を打ち出し、その一方で「スーパー歌舞伎」の原作者としても名を馳せた梅原猛という多面的な思想家の生涯と思想を簡潔に紹介している評伝です。

    著者は本書に先だって、「仏教の思想」シリーズ(角川文庫)をはじめ梅原と協力して多くのしごとをおこなってきた上山春平の評伝『上山春平と新京都学派の哲学』(2019年、晃洋書房)を刊行しています。本書でも、上山との比較がしばしばなされており、「上山が自覚的にたびたびおこなう研究手法の方法論的反省を梅原が怠った」と指摘し、上山が「哲学者」でありつづけたのに対して、梅原は「思想の立場」に立つことになったと評しています。

    また、梅原が晩年に構想した「人類哲学」については、それが彼の若いころからの関心であった「生命の思想」を受け継ぐものであることを指摘したうえで、「一神教」対「多神教」という、「文明の衝突」を思わせる危うい図式に陥っていることに著者は注意をうながしています。そして、梅原が反ナショナリズムの立場をとりつづけたにもかかわらず、東西文明の対立を回避する梅棹忠夫と上山の文明論的な立場にくらべると、問題を含んだものであったことが批判的に論じられています。

    専門家からの批判の多い梅原の歴史にかんする研究にはあまり立ち入らず、彼の思想家としての仕事の意義を明らかにし、その限界を指摘している本といってよいのではないかと思います。

  • 序章 仏教思想家として梅原猛を読む
    和辻哲郎との違い
    顕密体制の観点の欠如
    第1章 闇から笑いへ―哲学修業時代
    感情への注目
    流転のロゴス
    笑いの6つの定式
    九鬼周造との関係
    第2章 仏教の思想―上山春平との共同研究
    ニーチェ的な仏教
    無の思想の正体
    第3章 古代史から人類哲学へ―独自路線の模索
    陰謀論への傾斜
    多神教対一神教
    近代の超克との類似性
    第4章 「日本学派」の思想―国際日本文化研究センターの人脈
    反ナショナリストの気概
    第5章 空海から法然へ―仏教研究の転換
    法然を中心とする日本仏教
    浄土を信じない現代人
    諸刃の剣としての本覚思想
    終章 顕密体制論と神仏融合―近年の研究との比較
    哲学者<思想家
    伸仏融合へ

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著者プロフィール

菅原 潤(すがわら・じゅん)
1963年、宮城県仙台市生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、日本大学工学部教授。主な著書・訳書に『シェリング哲学の逆説』(北樹出版)、『京都学派』(講談社現代新書)、『実在論的転回と人新世』、リュディガー・ブプナー『美的経験』、リチャード・J・バーンスタイン『根源悪の系譜』(いずれも法政大学出版局・共訳)など。

「2023年 『マルクス・ガブリエルの哲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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