ザリガニの生物学

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  • Amazon.co.jp ・本 (604ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784832981942

作品紹介・あらすじ

 ザリガニ類は採集しやすく飼育も容易であることから,古くから人間と関係があり,教材や実験生物として数多くの研究がなされてきた。また地域の環境と良く対応した指標種であり,本種は周辺環境に重要な影響を与える「鍵種」であるため,その保全により地域の生態系保全が達成できる「アンブレラ種」でもある。本書は,生物としてのザリガニの魅力・知見を多様な研究視点から集成し,全6部14章から構成されている。
 第Ⅰ部では,学術研究の魁である博物学について,江戸時代,明治時代,大正時代,昭和時代,平成の現在までを時系列的に紹介し,人間との係りを社会・歴史的な観点も含めて紹介し,生物学・保全学・教育学に繋がる内容とした。また国外の知見も広く集め,国内と比較検討した。
第Ⅱ部では,生物学の基本となる分類学と組織学についての最新の知見を解説した。遺伝子も含めた形態分類,生物地理,系統進化を体系的に紹介し,従来とは異なった新規性の高い知見を紹介する。組織学としては最新の顕微鏡技術を駆使して体各部の組織の構造・機能・特徴を分かりやすく示してその特性を示している。
第Ⅲ部では,神経生物学の実験系(実験動物)としてのザリガニ類を紹介し,生物自体の内部からの視点で,ザリガニの特性を述べた。特に神経生理学・神経行動学といった最先端の研究成果を示し,行動発現の基本になる神経系構造と機能に関して紹介した。
 第Ⅳ部では,屋外生物学として,その基本的な生息環境の特定を数値化した。また対応が法律で義務化されている外来種対策(ウチダザリガニ・アメリカザリガニ)と稀少種としての指定を受けている在来種保全(ニホンザリガニ)といった極めて緊急性の高い課題について環境生態学を中心にまとめた。なお,内容の主要な部分は日本水産学会の奨励賞を受賞した内容である。加えて,日本に侵入・定着して深刻な社会問題を引き起こしているため環境省から特定外来生物の指定を受けた「ウチダザリガニ」の母国の著者が,特性と現状を日本と比較検討しながら紹介した。
 第Ⅴ部では,応用的な生物学として,日本や,我が国と同じ島国であるマダガスカル島における保全が必要な現状や問題点について地域の社会・経済情勢も加味しながら解説した。そしてザリガニと生活を共にするが、目に付きにくいヒルミミズ類など随伴生物を含めて生物群集としての生態系の保全についての研究を学際的な見地で収録した。
 第Ⅵ部では,将来の学術振興となる教育面に関して,必要性が急激に高まっている環境教育の好適な材料としての視点でザリガニ類を紹介し,その模範となる事例紹介も行った。加えて,科学技術振興財団から科学教育部門での文部科学大臣賞を受賞した著者がアメリカザリガニを生物教材に使った理科教育を従来の知見と比較しながらまとめた。

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