容疑者ケインズ: 不況、バブル、格差。すべてはこの男のアタマの中にある。 (ピンポイント選書)
- プレジデント社 (2008年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (143ページ)
- / ISBN・EAN: 9784833418805
作品紹介・あらすじ
なぜ資本主義は不安定で、金融市場は混乱するのか。鋭い洞察力でその「謎」を暴いた、ケインズ理論の「騙されない」読み方。
感想・レビュー・書評
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もっと早く読むべきだった。
ケインズの洞察力はすごい、と著者に共感した。
ケインズから拾うべきところは拾う一方で、捨てるべきところはバッサリ切り捨てているのが素晴らしい。
1章→公共事業は、価値ある事業であるときに限り、また、所得再分配がなされる場合に限り、国民所得向上に効果あり。
2章→バブルの発生・崩壊とその悪影響について
3章→近年の意思決定論から「流動性選好」へ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ケインズといえば「美人投票」で有名ですね。
【なるほどな点】
・完全均衡における経済パフォーマンスの低下
何かの間違った慣習や制度などのがその強制力によって競争ややる気を遮ったり無駄を保持し続けたりして効率的な生産の達成を阻害しているならば、それを除去すればいいだけである。(小泉政権下の「構造改革」)
・ケインズの見方
不安定に上下するのは価格や賃金の方ではなく、むしろ生産量や雇用量の方になるはずだ。
生産調整のメカニズムを価格調整ではなく数量調整に置くところが重要な点。
経済が不完全均衡による「供給能力の余剰」という不況に陥ってしまった場合、政府が公共事業をとり行うことによってその不況から脱出できる。
不況の真因は「有効需要の不足」
・公共事業がダムや道路、河口堰をつくったりするのが一般的な理由
民間産業の妨害をしないよう配慮しなければならないことから、民間の着手しにくい事業を選択する
失業者を専門的な教育なしに即時的に雇用しうる部門が土建部門である
・公共工事を増やしても、マクロ的にはその分の費用は家庭から出て家庭に入るだけで、所得の水増しに過ぎない。
公共事業の成果は家計の私的所有物ではないから景気とは無縁である。
・貨幣は他の商品にはない「流動性」という魔法を備えている→価値のない一枚の紙切れを人はためこみたいという欲望に取り憑かれる。
「流動性=いつでもどこでも何にでも」が損なわれるとその魔法は解けてしまう。(例:自販機で使えない二千円札)
・サブプライムローンであれだけの金融不安が発生したのは、「少しでも疑わしいものには手を出さない」という真理からである。
・現代金融の立場で言うなら「リスク」とは確率理論を総動員することで制御できるものであり、「不確実性」とは確率がわからないから手のうちようのないもの、ということになろう。 -
ケインズの『一般理論』の解説をベースに、バブルなどの経済現象をケインズの思想・理論との関係から論じています。
非常に平易に書かれていて分かりやすいのは分かりやすいんだけど、元々ブログにコラム的に書いたものを大幅加筆修正して出版したもののようなので、全体に論旨が体系だてられておらず、つまみ食い的にいろんな話題が散りばめられているので、新たな知見を得るという点ではかなり物足りなさを感じました。
入門書としてお勧めできるタイプの本でも無さそうなので、ある程度経済学の基礎知識がある人が気分転換や暇つぶしに読むのに適しているという感じでしょうか。
数学科出身の塾講師だった著者は、市民講座でケインズの理論に出会って衝撃を受け、大学院に入り直して経済学者になったという経歴の持ち主のようで、ケインズに対しては一方ならぬ思い入れがあるみたいですが、勿論ケインズ理論を無批判に信奉しているわけではありません。
経済学者の間では、ケインズ理論は既に「過去のもの」として否定するのが通説になっているようで、著者もそのことには同意をしています。
が、それでも著者はケインズの発想には魅力があると言います。
ケインズは、「緻密にすきのない論理体系を構築できる、というタイプの天才」ではないが、「反面、そのロジックには磨きがいのある夢やアイデアがふんだんに埋まっている」と評価しています。
確かに、学問的には否定されていながらも、半世紀以上経った現代においてもその影響力が残存している現実をみれば、著者の評価は当たっているようにも思えます。
その分、厄介な存在だ、とも言えそうですが。 -
今ではちょっと落ち目?のケインズのすごさを再認識デキる本。公共事業がなぜ不況に効かないのか、バブルがなぜ発生し、なぜはじけるのか?サブプライムローンがなぜ良くないのか?この本から汲み取ることができる。よく分かったといえるかというと微妙だが、考えるとっかかりは得られた。経済学は役に立たないと考えがちだったが、最新の経済学はしっかり世の中の現象を捉えつつあると思った。
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小宮先生おススメシリーズの1冊。
正直、前半は難解。
でも後半は、著者の熱さも伝わり、興味深く読めました。 -
企業の総生産量が有効需要を超えている場合、企業には在庫が発生し、家計にはそれと同価値の貨幣が残留することになる。新古典派では、このとき財の価格調整、すなわち値下げが起きて商品は完売され、貨幣は企業部門に戻っていくが、ケインズ理論では価格調整では無く数量調整が起きるという。売れないから、生産量を落とす。そのため従業員も減らす。
そのほうが現実的なような気がする。なるほど。 -
経済学ってなに?という私みたいな人にいいと思います。
ケインズもそうだけど、経済学の入門の入門という感じ。
もっと深く知りたいことがあれば、その先に進む為のお勧め書籍も巻末に載っているので、初心者にとても親切な本だと思います。 -
今まで経済学って、難しい~って気持ちしかなくて、敬遠してました。
だって読んでも意味がわからなかったから。。。
ただ、ある本で経済学の入門書という位置づけで紹介されていた&近くにたまたま見つけることができたので、読むことに。
最初、名前を聞いただけじゃ、小説?!と思ったくらいです。
(ケインズも知らないあほでした。。)
でも、この本は難しい理論も簡単に、私にもわかるくらい平易に解説してくれてます。
おかげで最後まで楽しく読めました。
経済学に物理学を当てはめてみたり、経済学が心理的な人間の欲求と関係してたり、へ~こんな研究もされてるんや、なんて感じながら。
この本を入門書として、もう少し難しい経済学の本も読んでみようかな、という気持ちにさせてくれます。
私みたいに経済学を敬遠しがちな方におすすめしたいです。 -
[ 内容 ]
なぜ資本主義は不安定で、金融市場は混乱するのか。
鋭い洞察力でその「謎」を暴いた、ケインズ理論の「騙されない」読み方。
[ 目次 ]
1 公共事業はなぜ効かないのか―「一般理論」の先見と誤謬(そもそも不況とはどういうことか;どうしてモノや人が余るのか;ケインズは貨幣に注目していた ほか)
2 バブルの何がまずいのか―不確実性と均衡(確率論が通じないサブプライムの泥沼;アブナイとワカラナイは違う―「ナイトの不確実性理論」;人は最も悪い可能性を気にする―「エルスバーグのパラドックス」 ほか)
3 人はどのように「誘惑」されるのか―選好と意思決定のメカニズム(経済活動は「推論」と「決断」の繰り返し;「行動の好み」を再現する選好理論;「誘惑」のメカニズムが解明された ほか)
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