なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?

  • プレジデント社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784833420570

作品紹介・あらすじ

ビジネスのなかでセールスほど間違ったことが語られている分野はない。ハーバード・ビジネス・スクール出身のジャーナリストが世界中を飛び回って掴んだ"営業"の真実!頂点をきわめた営業のエキスパートたちが赤裸々に語る、売り込みの極意とは?ノーと言われても自分を奮い立たせる秘訣とは?

感想・レビュー・書評

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  • 営業という仕事は生きていれば必ず避けられ避けられない。
    ビジネスで売り込むことに限らず、生きていれば何かしらのアピールは必要になってくる。

    営業が上手い人とそうでない人の分析が幾つも載っているが、この本で大きく納得できたことが一つある。営業という行為への苦手意識や躊躇いについてだ。食べる為には収入を得なければならず、その過程には営業が欠かせない。にもかかわらず、躊躇いがある。本書はそれを理論的には解決してくれたと思う。今後は、これまで生きてきた中で偏ってしまった考え方をほぐしていかなければと思う。

    僕が大いに納得できたのは、営業が比較的得意な人とそうでない人がいるのはなぜかということ。僕は後者だが、なんでそうなってしまったのかという疑問の答えがあったのだ。
    生きてきた環境の影響が大きい、そういってしまうと単なる逃げの口実になってしまうのだが、僕が納得できたのはそこではない。

    営業が得意な人は、親が商売を営んでいたりして、生活の中で身近に営業が存在していることが多い。親が会社を経営していたり、自営をしていると売り買いによって自分の生活が賄われていることが実感しやすい。努力や苦労しながら売ることで利益を得て、それによって日々の食料や学費が払えるという実感がある。
    一方、僕の父親は雇われサラリーマン技術者で母は専業主婦だった。父親は、同僚に営業職の人がいて、その人が会社にもたらした利益から給料を得て、僕はそのおかげで生活できた。会社の中での分業として父は技術者をしながら、父の分の営業は誰かがやっていてくれたわけだ。
    そんな環境の僕にとって営業に触れるのは、客として売られる場合が多い。買い物やら勧誘やらで買いたくないものを勧められたりするようなイメージが多い。また日本には儲けることはよくないだとか、お金についての道徳や忌み嫌う空気が漂っている。父のように間接部門の仕事で、その家庭で生活していると、こういった営業ということの負の部分ばかりの意識ばかりが育ってしまって、生きていく上で必ず必要な売るという行為に偏見を持ってしまうのだ。

    この本を読んだ後、自営をしている過程で育った人と話した。自営や経営者の家庭だと、営業して売ることのポジティブな面をよく理解していた、というかそれが染み込んでいた。
    このことを実感し、僕の中の偏りを無くさねばと思った。

  • 営業に従事する身としてタイトルに惹かれて手にとった。

    全編を通して各方面の営業マンの思考とプロセスが描かれているが、その折々で印象に残ったフレーズがいくつかある。

    「お客様の動機を正しく察することは、相手のほしがる商品を知るのと同じくらい重要だ」
    「僕たちは、ただ「売る」ために売るのではなく、人生で望むことを達成する手段として売る」

    「さあ、楽しもう。出発だ」
    営業を始めた当初は期待と恐怖が入り混じった感情でお客様と向き合っていたが、いつからかその感覚も麻痺して、何も考えず日常の「行為」として営業活動が埋もれてしまったことに気づけた。
    改めて自分の仕事に誇りをもち、そしてそれを「楽しむ」と言う気持ちをもって日々お客様と向き合おうという気持ちになれた一冊。

  • 1.タイトルに惹かれて買ってしまいました。

    2.MBAでセールスを教えない理由は、成果が数字で出てくるから、つまり、自分の能力が正直に出るので恐怖を感じるからだと自分は結論付けてます。
    営業は世界一ハードな仕事だが、世界一魅力ある職業であることを伝えたいのがこの本の目的だと思います。ロバート・マクマサーをきっかけに、心理学をビジネスに応用し始めましたが、それだけでは語ることができません。科学を用いてもなお理解が完全にならない営業は、そこに難しさが出てきます。著者はジャーナリストとして、セールスマンに取材し、どのようなセールスマンが一流なのかということを伝えています。

    3.特に響いた言葉は、「営業に魔法などない」という部分です。一昔前の本では、「この一言でクロージング!」みたいなスキルに特化した本がちらほら出ていましたが、これはもう使えないのではないかと思いました。営業を担当してる身で、契約ほしさに、そのような必殺トークと呼ばれるものを使ってみましたが、効果は全くありませんでした。この本でも述べているように、営業に必要なのは2つで、自分を売ることとよく話しを聞くことです。これは営業マンの基礎能力と言っても過言ではありません。これがあってこそ、初めてお客さんが振り向いてくれるのだと思いました。

  • そもそも原題が「The Art of the Sale」なのに、
    なぜ邦題はこんな挑発的(?)なものをつけたのか、と
    考えてみると、
    もちろん売れることを狙ってだろうけれど、
    必ずしも著者の意図と無関係っていうわけでもない。

    というのは、著者のフィリップ・デルヴス・ブロートンは、
    記者の身分を捨てて、実際にHBSで2年間を過ごし、
    「Ahead of the Curve: Two Years at Harvard Business School」という
    体験記を出版しており、
    その中で、HBSのプログラムのリアルを伝えている。
    私の印象では、彼は、HBSは「カネ稼ぎ」のための
    肩書きを与え、スキルを鍛えてくれる反面、
    日々のビジネスを積み重ねている人々に対する敬意を持たなく
    なるようなところがあるという警鐘を鳴らしていると思うのだ。

    そんな彼が、「Sales」に焦点を当て、
    世界各地における、その達人たちの哲学や行動を丹念に描いている。
    そこには、HBSのプログラムが重点を置くような戦略、データ分析、理論は
    ほとんど出てこない。
    あるのは、何を信じているか、そしてどう行動し続けているかという、
    ライフストーリーである。

    印象的なストーリーばかりだが、
    特に挙げるとすると、日本の生命保険セールス、
    第一生命の柴田さんとプルデンシャル生命の岡さんの話が興味深いと思った。

    私は生命保険の営業をしたことはないし、
    営業を受けたこともほとんどないが、
    そのビジネスに対する印象は
    「過酷そうだな」「本当に必要なものを売っているのかな」というような
    正直、マイナスなものであった。

    だが、トップセールスである柴田さん、岡さんの信念、言葉、行動を、
    異国のライター目線で通して見たときに、
    その印象は大きく変わった。
    彼らは、過酷だと思っている訳ではないし、また、本当にお客さんに必要だと
    思って売っているのである。

    それを、たとえば宗教的だといって批判するのはたやすいし、
    かつ、さも科学的にビジネスを扱っているように振る舞うこともできる。
    でも、それでは、売れないのだ。
    売れないのでは、利益が上がらず、ビジネスは回らないのだ。
    それでは、企業は立ち行かない。

    資本主義の社会で、企業活動が成果を出して、有機的にビジネスが回るためには、
    そこに必ずセールスが入っている。
    もちろん、プロダクトやサービスが劇的に優れているから、セールスがいらないように
    見えることもあるだろう。
    あるいは、セールスの手法を完全にデータと仕組みで管理することで科学的に
    目標数値に達することができると考えることもできるだろう。

    だが、その思考は必ず、落とし穴にハマる。
    私は本書を読んで、そう思った。
    もちろんそれは、本書が、セールスという行為を再評価したいという意図で
    書かれているというバイアスがあるからだけど、
    実際に、購入を決断するのは人間であり、とことん感情に左右されることは、
    それこそ行動経済学が近年明らかにしてきたように「科学的真理」であり、
    であるならば、その感情に働きかけることができる最強の武器、それは、
    買い手に決断を促す技量を持った、人間なのである。
    とりわけ、高額なプロダクト、サービスであれば、尚のこと。

    そして、その人間を鍛えるのは、本書で繰り返し出るように、
    1にも2にも、経験なのだ、と。

    私自身、いま、全然希望していなかったセールスの仕事をしていて、
    「なんでおれがこんな向いてないことを」
    と思うことも多いのだが、一方で、失敗と成功の経験の小さな積み重ねから、
    少しずつ適切に振る舞えるようになってきた実感があり、
    そこに面白みがあるのもまた、本当である。

    私のように、セールスをする中で色々もがいている人にとっては、
    本書は、広い横幅でセールスを捉える学びのチャンスを与えてくれるという意味で、
    価値があると思う。

    The Art of the Sale: Learning from the Masters About the Business of Life [Kindle Edition]

    Philip Delves Broughton (Author)
    http://www.amazon.com/dp/B005GSYZZM


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    (レビューは
     http://evolution.edoblog.net/
     に投稿のもの)

  • 営業の名著。

    新卒社員や営業のメンバークラスの人は読むと良いと思う。
    ただ、自分で言うのもなんだけど、そこそこ営業経験や、営業実績出せてる人からすると真新しさはあまりないとは思う。
    日常的なシーンを題材に、あるある〜という営業の重要なことについて書かれているので、営業に携わる人であれば一度読んでおくべきだろう。

    面白かった部分についていくつか以下で記載。


    振る舞いの悪い顧客に対してのアプローチ
    →好きの反対は無関心というように、悪態をついてくる人は全然顧客になりようがある例。
    何より重要なのは信頼の貯蓄。この人はすごいな、この人の言うことは聞いておいて損ないな、と思わせたら勝ち。

    > 以前、うちの店に入ってきていろいろと物色し始めたアメリカ人の男がいてね。銀食器を見てこれは銀かと聞いた。そうですと答えると、『モロッコの銀か』ってさらに聞いてくるんだよ。要するに混ぜ物が入ってるんじゃないかって意味さ。今度は別のものを見て、アンティークかと聞いてきた。そうだと答えると『お前が裏庭でつくったんだろう』なんて言う。妻は、キレそうになってたよ。でもこれは魚釣りみたいなもんなんだ。食いついた魚を無理に引っ張ると糸が切れるだろう。だから放したり、引っ張ったり、また放したり引っ張ったりして、疲れさせる。そこで糸を巻き上げればいい。その男は琥珀を見て、プラスチックかと聞いてきた。俺は違うと答えた。『琥珀です』。『香港製か?』。男はずっと俺をやり込めようとしてたんで、好きにさせておいた。反撃できるタイミングを待ったんだ。最後に男は美しい象牙のおわんを手にとった。職人が何世代もかけて彫り上げた作品を、男が振り回し始めたんだ。だから、俺はヤツの手首を摑んでおわんを取り上げ、光にかざした。『お客さん、大切に扱ってくれませんかね』。それから、そのおわんの歴史を説明すると、男は自分がバカだったと気付いたらしい。すみませんと謝まったから、構わないと答えた。何も知らなかったんだな。恥ずかしそうにしていたよ。その晩、そいつはいっしょに食事をしたタンジールの誰かから、俺の評判を聞いたらしい。翌日またやってきた。前の日はあばれ馬みたいだったが、この日は乗ってほしそうだったから乗っかった。もう俺の言うことならなんでも聞いたね。男は見事な銀のブレスレットを何本か買っていった。もし俺が我慢していなかったら、おいしい魚を逃していただろう。力ずくじゃなくて頭を使ったんだよ」。

    結婚式の前の買い物での事例。
    →予算の合わない顧客に対して蔑ろにする店員が描かれている。
    これはむしろ逆とも言うべきで、予算が潤沢な人は他社(他のお店)でも同じようなアプローチを受けているはずで、こういう難しいお題、予算的に厳しい顧客に対して、何を得たいか、優先したいかを確認し、それに対して適切なアプローチ(他の店を紹介する、分割払いを提案する、1番安い指輪になるけど提案してみるなど)をすることで、他との差になり顧客からの信頼を得られる。

    > 最初に訪れたのは、五番街の超高級デパート、バーグドーフ・グッドマンの一階にある宝石店のヴァン クリーフ&アーペルだ。入った瞬間に後悔した。ガラスの陳列ケースに入った輝く宝石に値札はなく、店の人たちは、いまにも僕を取って食いそうな目つきをしていた
    > 予算を口にすると、女性が引くのがわかった。それは僕がこの日のために貯めてきたお金で、僕にとっては大金だった。だが、そのセールスの女性は、いかにもがっかりした様子を見せた
    > それでおしまい。僕の財力は、彼女の世界ではこれくらいの価値しかなかった。おもちゃの指輪程度というわけだ。別の指輪を見せてくれるわけでもなく、分割払いの提案もない。ほかの店を教えてくれるわけでもない。僕は自分の経済的価値を自覚した。それは彼女が鼻にもかけないほど低かった。


    オークションで指輪を買い、プレゼント用の箱を探している時の話。
    →これも先ほどの例と同様で、顧客に伴走する姿勢が弱すぎる。
    結果的に箱を提供出来なくても、上司に掛け合ってみる、箱だけ無料で渡すのは難しいのでこの商品を買ってくれたら渡せる、みたいな“努力”を見せることが重要。
    この差は本当に大きい。

    > アンティーク宝石店のフレッド・レイトンにたどり着いた。
    > 「何かご用でしょうか」とその女性が訊ねた。僕はビニール袋に入った指輪を掲げてみせた。 「さっきオークションでこの指輪を買ったんですが、箱がいるんです」。すると、「ありません」と、バッサリ。店のなかは箱だらけだったのに。一つくらい売ってくれてもよさそうなものだ。そこで僕はこう言った。「もちろん、お支払いします」。無料の箱はない、という意味かと思ったのだ。すると「うちでは、そういうことはいたしませんので」と彼女は言い、ほかの客のほうに向き直った。結構じゃないか。通りに出て歩きながらそう思った。クソくらえ。


    次いで、スーツを買う時の話。
    →この場合は、「ぶっちゃけそこまでこだわりないから場違いじゃなければok」という顧客ニーズを理解して、適切にアプローチして結果信頼を得られた好例。
    これは本当にコスパが良い。その場で仮にもっと高い商品を提案して売れたとしても、感動にはならないから次が無い。
    この人の言うことは信頼出来る、と言う状態を築ければ、ここでも描かれているように次にも同じケースが出てきたらすぐに思い出してくれる。

    > それにくらべて、マンハッタンのミッドタウンにあるポール・スチュアートでの体験は対照的だった。
    > ほんの一瞬で、彼は僕を正確に見抜いていた。僕はほとんどスーツを着ない。洋服にもあまり興味がない。ただ、場にふさわしくて仕立てのよいスーツならそれでよかった。この日のために一応の努力をしたことを見せたかっただけだ。上着が二つボタンだろうが三つボタンだろうが、切り込みがシングルだろうがダブルだろうが、袖口のボタンが三つでも四つでも、まったくどうでもよかった。場違いじゃなければ、それでよかったのだ。彼はそれを察して、手を貸してくれた。それまで結婚式の準備中に出会った人たちは、みんな例外なく一生に一度のことだから出し惜しみする場合じゃないと、もっと高いものを買わせようとしたが、彼は違っていた。結婚式を利用して僕から金をむしり取ろうとしなかったのは彼だけだった。
    > スーツを選ぶと、その男性は僕を試着室に連れて行き、イタリア人の仕立て職人がズボンの長さを測って折り返しをつけたほうがいいと言ってくれた。僕はまたその言葉に従った。彼を信用していた。それ以来、洗礼式のワイシャツや、結婚式のネクタイ、何かきちんとした場に着ていく洋服が必要になると、僕はいつもポール・スチュアートに行くことにしている。



    これも非常に重要。
    顧客が金になる人だと分かってから良いように立ち振る舞うのは誰でも出来るわけで、先ほども書いたように差にならない。
    重要なのは、最初からまずこちらから尽くすこと。
    返報性の法則だ。
    > 本当に優秀なセールスマンは、どんな顧客をも愛するところから始めます。お客様をいつも正しく判断するのは不可能です。きれいに着飾って買い物をする人がいちばんの上客とは限りません。とくに、昨今のお金持ちは目立つことを好みませんから
    >ブロードウェイの名女優、メアリー・マーティンは、舞台が始まる前に毎回舞台袖から観客席をのぞき見し、目に入る観客全員に「愛してる、愛してる」と呟いていた。幕が上がるころには、彼女は本当に観客を好きになり、最高の演技を見せたいと心から思うようになっていたという。

    ウェットスーツの事例も重要。
    相手が何を(モノ)ではなくて“どんな状態”を求めているか、を推察して適切に提案する必要性を説いている。
    ここで言えば顧客が欲しいのはウェットスーツというモノではなく、熱心なダイバーからこの店はイケてる最先端の商品が常に置いてあると思われる状態、そのためのウェットスーツ。ここが理解できてるかどうかの差は大きい。

    > ウェットスーツの事例とは、次のようなものだ。あなたはダイバーズ・デライトというウェットスーツの製造会社の社員で、ダイビング用品のチェーン小売店に製品を売り込む仕事をしている。
    そのウェットスーツは宇宙飛行に使われる素材でできていて、競合製品よりも体温を五度高く保つことができる。だが、値段も高く、通常製品が二五〇ドルのところ、あなたの製品は四〇〇ドルもする。あなたはこれから売り込みに行くところだ。相手のダイビング用品店には数々のベンチャー企業がやってきて、約束を交わしては、守れずに去っていく。だが、その店は、つねに先端を走ることを使命としている。大手量販店もウェットスーツを販売しているため、その店が生き残るためには差別化が必要なのだ。
    あなたの仕事は、その店に合計一二着のウェットスーツを買ってもらうことだ。しかも、男性用と女性用にそれぞれ三サイズを二着ずつ買ってもらわなければならない。
    ウェットスーツを売るためには、顧客がほんとうに恐れているのは何か、ほんとうに必要なものは何かを発見しなければならないことが、二時間の授業のなかで次第に明らかになっていく。顧客が恐れているのは、安売り量販店との価格戦争に巻き込まれることで、それを避けるには、熱心なダイバーを対象にした商売を安定的に維持することが必要になる。ウェットスーツの機能的な優位性については、買い手が評価してくれる。あなたの仕事は、安定的に商品が供給できること、店に十分な利益をもたらすこと、ダイバーたちが競ってこの商品をこの店で買うと相手に信じさせるこ
    とだ。あなたの商品は、ダイバーの体温を暖かく保ってくれる高価なウェットスーツではない。そのダイビング用品店が業界の先端に立ち続けて利益を増やし、それを維持するための手段が、あなたの商品なのである。

  • 影響力の武器を読んだ後だと物足りなく感じる
    テイストは違えど(影響力の武器はどちらかというとhowtoで本書はスタンスに関する記述が多い)、抽象度が高いこと(当事者意識が生まれづらい)や時代錯誤に感じるポイントが多く感じた。

    個人的に勉強になったポイント

    *生保の事例
    保険を売るのではなく、夢を売ること
    顧客が解決したい問題によりそい提案を行うこと

    *エレベーターの事例
    エレベーターを売ることの経済的価値とは?
    エレベーターがないマンションだと最上階はただ階段を上らないとたどり着かない部屋で終わる。
    ただつけると眺望が楽しめる。
    そのため売っているものはエレベーターではなく、眺めを売っている。

    *LKベネットの事例
    セールスマンがカスタマーが欲しい商品が自社で取り扱っていない時、他店を紹介することは感じはいいかもしれないが失格。
    関心と信頼を勝ち取った以上他の自社商品を提案することなど売り込む必要がある。
    人間は誰しも嫌われたくない、セールスマンも無理やり提案することでそうなりたくないという思いが生まれるが顧客の心理的欲求を探り出しそれを満たすのが優秀なセールスマンである。
    売り込まないことは礼儀正しい行為ではなく、カスタマーの欲求を満たすことを失敗したということである。

  • ・ビジネスにおいて最も営業が重要

    ・使命感を持つことが大事。スキルや能力よりも。
    ・拒絶されるまで提案することが大事。営業先と調整し最大限良い提案をする意識で。

    ・Appleがなぜ、家電量販店ではなくAppleストアをつくって、Apple好きなスタッフにApple製品のみを営業させているのか。(キリスト教がなぜ、公共の場所を借りるではなく教会をつくって、信者に免罪符を営業させているのか。)

    という事例が面白かった。

  • 営業の本質についての話。人生で何度でも何度でも読み返します。

  • こういう邦題にするとMBA批判の本のようにも取られるのではないかと思われたが、本の中身は全くそうではない。確かに著者がハーバード大学に入学したときに営業の授業があるものだと思っていたらなかったので、教授に聞いたらコミュニティカレッジの夜間コースに行けと言われたというエピソードが書かれているし、ハーバードの中で著者が唯一受けた営業の授業を担当するアンダーソンが「セールスは、結果が測れる唯一の分野だ。それがMBAの学生には死ぬほど恐ろしいんだよ」と言ったりもする。しかし、この本は断じてMBAで営業を教えない理由を解説するものではない。 著者がMBAの教育に対して懐疑的なことは確かだが、明白にセールスという仕事について愛を込めて色々な角度から光を当てて活写したものだ。イギリス版のタイトルは”The Art of Sales”、アメリカ版では”Life's a Pitch”(人生は売り込みだ)となっているらしい。解説のライフネット生命の岩瀬さんは後者の方がそれらしいと書くが、自分は”The Art ofSales”の方が好きだ。セールスというものが、ハウツーで語られるものではなく各個人の技量と個性による「アート」であるということがにじみ出るからだ。相手を見極める目はハウツーやマニュアルではないし、授業で教えられるものでもないのだ。リーダーシップに唯一の型がないように、営業にも唯一の成功の型というものはないのである。

    本書の中では、モロッコの絨毯売り、第一生命のトップ生保レディ、プルデンシャル生命の日本人トップセールスマン、テレビ通販のカリスマ営業マン、ニューヨークの絵画商、など様々なセールスマンが登場する。どの人物も魅力的である。結構、日本人も取り上げられているところが共感がまた深まるポイントでもある。 トップセールスマンになることが、騙しのテクニックなどでは決してないことがわかる。著者がいうようにセールスに欠かせない資質が忍耐力であり、自信であり、粘り強さであり、感じの良さであることがわかる。そして、それがその人自身を魅力的にして、人生にも欠かせない要素でもあるのだ。

    ドラッカーが、企業の目的はイノベーションとマーケティングであると述べて、マーケティングはセールスを不要とするものであるとしてからセールスの位置づけは経営学の中で不当に低く扱われてきたのかもしれない。ドラッカーの方も、ハーバードを初めとするMBAの中ではあまりまともに扱われていないという話もあるのだけれど。

    フランス人心理学者のラパイユとの対話で出てきた「セールスマンを採用するとき、起業は販売の成功実績よりも失敗への受容性を見るべきだ。...「人生でどれだけ失敗してきましたか?」と聞くべきなのだ」は傾聴すべきだろう。最も成功したセールスマンは、最も多く断られたセールスマンなのかもしれない。そして、このことはセールスだけに当てはまることではない。こういった、セールスだけに当てはまるものではないストーリーがこの本の中には、ふんだんに盛り込まれている。
    この後に、「ドナルド・トランプがセールスマンにこれほど賞賛されるのは、彼が成功者だからではなく、成功し、失敗し、そしてもう一度這い上がってきたからだ」となるのだが、大統領選にトランプが立候補する前に出版されたものであることを考えると興味深い。

    「営業とは、ものを売ることではなく、自分を売り込むことだと考えている。お客様は商品を買うのではなく、信頼できるあなたが売っているもの、つまりあなた自身を買うのだ」という言葉も深い。そのためには、お客様の立場をまず知らなくてはならない。共感力が必要になってくる。セールスに魔法はない。勤勉であることと、よく聞くことの二つのことができればいいのだという。

    モロッコの買い物の話が出てきたフェズの市場の様子などあのときに体験したことと同じだ。何を買うにしても値段交渉ありきだった。「セールスマンの力量ってのは、ものを買うときにわかる。儲けられるかどうかは、売るときじゃなくて買うときに決まるのさ。買った瞬間に儲けが確定する」っていうのは、恰好いいね。


    プルデンシャル生命の社訓として、「考え方が変われば行動が変わる、行動が変われば習慣が変わる、習慣が変われば人格が変わる、人格が変われば運命が変わる、運命が変われば人生が変わる」という言葉が紹介されていた。よい言葉であり、この本にもふさわしいが、もともと心理学者ウィリアム・ジェームスの言葉と言われたり、ヒンズー教の言葉と言われたり、松井秀喜が星稜学園の監督から贈られたり、中村俊輔や野村克也といったプロスポーツ選手が引用したりと色々と使われているんですね。それだけ、いい言葉なのだと。

    邦題に関しては、こういう名前の付け方はあまり好きではない。特に結果がすぐに出てしまう営業がMBAでは教えられていない、机上の空論で投資家や経営層を煙に巻く技術を教えられていて実際の結果がその高給に見合っていないという批判もありうるからでもある。そして、著者の想いは明らかにそこではないのだ。

    営業という観点から、スティーブ・ジョブズ、イエス・キリスト、ネルソン・マンデラ、ダライ・ラマまで出てくる。読み物としても面白い。

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    営業

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