- Amazon.co.jp ・本 (92ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834002287
感想・レビュー・書評
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幼稚園児の「たけし」と「ようこ」が、ダンボールやトイレットペーパーの芯で思いを込めて作り上げた、おもちゃのロボットは、なんと本物のロボットのように動きだしたから、びっくり!
ところが、その「ロボット・カミイ」は、自分の意志を持っており、その自由に行動する姿から感じられた印象は、他人の気持ちを考えないワガママぶりと、自分の思い通りにならない悲しさで、すぐに泣きだしてしまうといった問題児で、その見た目から覗える頼もしさに反して、まるで子どものようであり、初めは一緒に付き合ってあげた園児たちだったが、ついにカミイは一人ぼっちになってしまい・・
最初は、こうして、園児たちに迷惑をかけまくる、共感出来ないロボットが主人公の物語に、何故と思ったが、最後まで読んでみて、実はカミイに、子どもの成長する過程を重ね合わせているのかなと思いました。
子どもの中には、時に、とても腕白で元気すぎて、まだ人の心の痛みが分からないような子っていますよね。そして、そんな子どもには、いくら言葉で叱ったり諭したりしても、全くのどこ吹く風で、その変化の無さに、この先が思いやられそうだなと、感じたこともあるのではと思います。
しかし、気が付いてみたら、いつの間にか、そんなこともあったなといった、大きな変化を遂げていて、その根拠こそ分かりませんが、きっとどこかで、その子自身による、これから先を生きていくための、とても重要な気付きを得たからこそ、今のその子が存在しているのだと思うと、その気付きが、如何に大切なものかが実感出来ると思います。
そして、本書の場合は、最初にたけしとようこが、カミイを作るとき、ようこが顔をマジックで書くときに誤って、泣き虫ロボットみたいな見た目にしてしまったときに、たけしが、
『いいよ、いいよ。なきむしロボットなんてめずらしいもの、おもしろいよ』
と、ようこを励まして、涙に擬えたビー玉をカミイの中に入れるシーンがありまして、ここに私は最初、たけしの斬新なものの見方がいいなと思ったのですが、実はこれが、後々の展開を見たとき、私には、まるで偽りの涙をこしらえてしまったように感じられて・・勿論、たけしは悪くないと思いますよ。たけしも心の深いところで、涙の素晴らしさをまだ実感していなかったことは、それを面白いと表現していることからも分かりますし。
しかし、泣き虫って、決してネガティブなイメージばかりではないことは、本書の後半で見せた、カミイの行動や、その後に形になったものからも推測出来ますし、そこにあった大切な気付きというのが、『泣きたくなるほど嬉しかったことを実感したその過程』にあると私は思い、そこでカミイが見出したのは、人と人とが共に思いやることの大切さであり、その大きな成長を遂げた瞬間は、あらゆる面に於ける彼自身の変化からも分かり、そこから私は、子どもの成長していく姿を重ね合わせているように感じさせられ、「子どもはワガママで当たり前。でも、そこからどうやって変わっていくのか?」を、問い掛けているように思われました。
また、そんな成長はカミイばかりではなく、たけしとようこも同様であり、終盤のやり切れない思いから、彼らが吹っ切れることが出来たのは、その形になって残されたものの価値に気付いたからであり、それは、まさにたけしが心の底から切望していた、なきむしロボットの成長した証だったのです。
本書は、ロニコさんとのコメントのやり取りにより、読むことが出来ました。
1970年の作品ながら、古田足日さんの子どもの将来を考えた物語に加えて、堀内誠一さんの素朴でやわらかい絵が、とても印象的でした。
ありがとうございます。 -
こども本の森中之島で、我が子(4歳)が選んだ本。表紙の可愛い絵が気に入り、手に取ったようです。
こども本の森では本を借りられないため、その場では数ページしか読めず、近所の図書館で借りて読了。子どものお気に入りになったので、購入しました。
52年前(1970年)に発行とのことですが、恥ずかしながら私はこの本を知りませんでした。長年、親しまれた児童書とのことで、名作と言われるのも頷けます。
物語は、段ボール製のロボットのカミィと園のお友達とのやりとりが中心です。
お友達の積み木を奪ったり、砂場の山を崩してしまったり、トラブルばかり起こしてしまうカミィ。「でも、僕は悪くない。」と反省しないカミィ。
トラブルメーカーのカミィに対して、園の催し物で〇〇屋さんごっこをする時に、子どもたちはカミィを独りぼっちにさせてしまいます。
中盤まで読んだ私は、反面教師としてカミィが描かれていたのかと思いましたが、最後まで読むと私の予想と異なっており意外な結末でした。
トラブルメーカーの子がいたとしても、排他的な対応は決してせず、周囲は優しさと思いやりを持つべきという教えなのかもと‥勝手に憶測。
読み聞かせ中、最後の場面には不意打ちで泣きそうになってしまいました。 -
#福音館70周年
子供の頃、ロボットを作って遊んだことはありませんか?
ダンボール箱や細長い筒をセロテープで貼り合わせ、マジックで顔や機械の絵を描いて。
ダンボール製だけど、気持ちは鋼鉄製のぴっかぴか。何でも出来ちゃうロボットです。
たけしとようこも、捨てるはずのダンボール箱を使って、そんなロボットを作りましたよ。
目が下がり目になってしまったので、泣き虫ロボットということにして、「なみだのもと」の水色のビー玉を入れました。
名前はカミイ。紙の箱で作ったからカミイです。
うん、なかなか強そうに見えます。
ところがところが。
ロボットは本当に動き出してしゃべり出しました。
しかもとってもいばりんぼ。小さい女の子からぬいぐるみのゾウを取り上げて遊び出し、やりたい放題。
たけしやようこが怒って取り上げると、カミイはわんわん泣き出しました。
ぼくだってゾウがほしい。女の子がゾウを取られてかわいそうなら、ゾウのないぼくだってかわいそう。
いばりんぼの上に泣き虫。そして大変な理屈屋さんです。
困ったたけしとようこは、明日ようちえんに行って一緒にゾウをつくろう、と誘います。
カミイは泣き止んでにっこり。
どうやら気分屋さんでもあるみたいです。
さて、こんなわがままロボットがようちえんに行って、みんなとうまくやれるでしょうか?
もちろん、そんなわけはありません。
カミイはあんなさわぎ、こんなさわぎを巻き起こします。
さぁどうなるのでしょう?
読んでいるうちに、カミイが何だかだんだん身近に思えてきます。
カミイほどではなくても、自分の主張と周囲の意見が合わなくて、ぶつかってしまったり、うまくいかなかったり、というのはよくあることです。
幼稚園のシーンは実際に幼稚園の先生の話を参考にしてお話を作っているところもあるそうで、子供たちには共感できるところもあるでしょう。
そしてそれはそれとして、カミイのわがままっぷりが潔くて、はらはらしながらも何だか笑ってしまうのですね。
子供が小さい頃は、我が家では読み聞かせの定番でした。憎たらしいカミイの声音をやるのが親としてもなかなか楽しかったりします。
いろんな事件を経て、終盤はちょっと驚きの展開です。
わがままカミイ。いばりんぼカミイ。
でもいなくなっちゃうのはちょっとさびしいな。
カミイを作ったたけしは、みんながさよならという隣でこう叫ぶのです。
わからんちんの、いばりんぼの、なきむしロボットのカミイ!
でもそれは、きみがすきだ、おわかれはさびしい、げんきでね、が全部つまった言葉に思えて、読みながらちょっと泣けてしまうんですね。
ちょっと不思議な余韻が残るお話です。 -
途中の展開が衝撃だった。
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ずっと存在は知っていたが、初めて読んだ。
たけしとようこがダンボールで作ったロボット、カミイ。魂はロボットの国から来たらしい。
自称こうてつせい(鋼鉄製)で力はあるけどダンボール製なので水には弱い。
わがままでいばりんぼのカミイ。
幼稚園の劇に出たいと言いはり、「オオカミと七ひきの子ヤギ」を「八ひき」にして八ばんめの子ヤギになってしまうのがおかしい。
案の定、劇はめちゃくちゃになって、ぷんぷんになったみんなにあやまってあるくたけしとようこ。
いつのまにかわがままだけど憎めない弟の兄のようになった二人の成長もいい。
イラストは堀内誠一で、もちろん最高。
後ろ見返しの、ロボットの国に帰った風景もいい。
もう出版されて半世紀! -
3歳の娘が今お気に入り。
子供時代、古田足日さんの作品が大好きで大好きで、今も私の何%かは古田足日さんで出来ていると思っているくらいなので、本棚に入れておいたのを「これよんで」と娘が出したのは嬉しかったものの、長いし絵のないページも結構あるしで、ひとまず一章読んで続きはまたねにするけど、しばらくは持って来ないだろうなと思ったら、毎日くらいに持って来る。
一章ずつ読んで数巡している。
チラシなんかでロボットの絵を見ると「カミイ!」と喜ぶくらい好き。
幼稚園大好きっ子なので、幼稚園が舞台というのが気に入っている理由の一つのようなのだけど、他にも惹きつけるものがあるんだろうなぁ。
最後の章は、何度読んでも泣いてしまう。 -
読み聞かせしていたはずの私が号泣。おすすめです。長くても、子どもたちは飽きずに聞いてくれます。ただのダンボールだったカミイがともだちになっていく様は、大人からしたら唐突ですが、幼稚園という空間の中、ともだちづくりに苦慮する子どもの目線なら、自然かも。ずっと読み継がれる名作ですね。
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前半のカミイの乱暴ぶりが、後半でとても生きてきますね。まさかアラフォーのおっさんが童話を読んで、涙がでてきてしまうとは思いませんでした。私の中にもビー玉が入っていたようです。
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越高綾乃さん紹介
ロボットカミイ懐かしすぎて、思わずコメント失礼します。
実は私が子供の頃、初めて...
ロボットカミイ懐かしすぎて、思わずコメント失礼します。
実は私が子供の頃、初めて与えられた長編小説(子供にとっては笑)で、読み切るのにものすごーく苦労した記憶があります・・笑
懐かしいな~
この本と再会させてくださって、ありがとうございます!
コメントありがとうございます♪
こちらこそ、いつもレビューを楽しみにしております(^_^)
そうでしたか。
じゃ...
コメントありがとうございます♪
こちらこそ、いつもレビューを楽しみにしております(^_^)
そうでしたか。
じゃおさんにとって、思い出の作品だったのですね!
確かに、文章は長いなと私も思いました。しかも、幼稚園が舞台になっているので、ある程度、読み聞かせを考慮に入れているとは思うのですが、これは、途中で子どもが飽きてしまう可能性が高いかもしれませんね。終盤で思いきり様変わりしますが、それまでが結構、長くて。それでも読み切れた、じゃおさん凄いですね! しかも、初の長編小説での達成で、そんな素敵な思い出を知ることが出来て、こちらこそ、ありがとうございます(^-^)