作品紹介・あらすじ
空から降ってきた"てんさらばさら"。おばあちゃんから、おしろいをかけるといいことが起きるが人にみせてはいけないと言われ、まゆはそれを大切にします。
感想・レビュー・書評
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子供のころ読んでいた絵本。読み聞かせに使うのは初めて。
ましませつこさんの柔らかくて優しい絵が好き。
鞠やぽんぽん下駄、着物の柄がどれも可愛いし、主人公のまゆが小さな箱に入れたてんさらばさらに真っ白い白粉をパラパラふりかける様はとても素敵だ。女の子が喜びそうな挿し絵が多く、眺めていて楽しい。
ゆきふってこい
てんさらばさら てんさらばさら
かぜにまってこい
おしろいたべて ゆきよんでこい
お婆ちゃんが幼いまゆに歌ってくれたわらべ歌。
ある日、真っ白い雪のような本物のてんさらばさらを見つけたまゆは、お婆ちゃんに言われた通りに、てんさらばさらを秘密の場所に隠す。白粉を掛けると、てんさらばさらは少しずつ増え、そのたびに、まゆに良いことが起こるようになる……
「おしろいをふりかけるたび、てんさらばさらはふえました。そして、ほんとうにつぎつぎいいことがおこりました。」
・霜焼けが早く治った
・嫌いなカブを食べられるようになった
・ぽんぽん下駄を買ってもらった
・おばさんの大事な着物をもらった
端から見れば、ほんとうにてんさらばさらのおかげ?と思うようなことばかりだけど、まゆはてんさらばさらをますます大切に思い、素敵な旦那さまに会わせてと願う。
・若い漁師のかざたろうと出会い、結婚する
・子供を次々に授かる
・かざたろうはいつもたくさんの魚をとってかえる
「それもこれも、まゆにはてんさらばさらのおかげのようにおもえるのでした。」
「てんさらばさらがあれば良いことがおこる」というおまじない程度の話が、まゆの中で「今の幸せは全ててんさらばさらのおかげ」「てんさらばさらがないと幸せになれない」という思い込みへと変わっていったのは、いつ頃からだったんだろう。
てんさらばさらは白粉を食べて増え続ける。まゆは隠し場所のことに気を取られがちになり、夫や子どもたちとの間に小さな溝ができはじめる。
誰にも言えない小さな秘密は、年月をかけて少しずつ膨らんでいき、最後は抱えきれないほど大きくなってしまう。
夫のかざたろうは、ついにまゆに疑いを持ち始める。
この辺りの流れがすごくリアル。家族がバラバラになってしまうかもしれないという恐怖を子供心に感じたのか、実は昔はこの絵本が少し苦手だった。
それが、久しぶりに読み返してみると、ラストの清々しさにこれまでの印象が覆されておどろいた。
真相を知ったかざたろうとまゆが交わす言葉の力強さと温かさ。まゆが本来持っていた明るさや愛情がすっと正面に立ち上がったように感じた。
こんなに気持ちの良い絵本だったんだ。
子供の頃に親しんだ絵本に、大人になって出会い直せるのは、読み聞かせの楽しみの一つ。
ところで、増えすぎたてんさらばさらを隠すために、まゆが端切れを取り合わせて大きな袋を縫うのだが、これがまあ可愛い!
子供の頃、この特大秘密袋を自分でも作ってみたいなぁと思っていた。
この絵本を読み聞かせていて、久しぶりにお裁縫欲がむくむく湧いてきた。冬休みにレゴ入れやおままごと入れ、作ってみようかな。
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挿絵の綺麗な、とても温かなお話。どちらかと言うと女の子向けかな。
ゆきふってこい
てんさらばさら てんさらばさら
かぜにまってこい
おしろいたべて ゆきよんでこい
主人公・まゆのおばあちゃんが歌うこんな歌に誘われたかのように、
白くてふわふわしたあるものが、風に乗って舞ってくる。
「てんさらばさら」というものだと教えてもらい、おばあちゃんの言葉通り
白粉をふりかけては育てて大事に大事に増やしていくが・・
その後成長して、5人の子のお母さんになった「まゆ」の姿までが描かれる。
読んでいる方もいつの間にか、てんさらばさらを守ることばかりに気持ちが
傾いてしまう。
だって、これが幸せを運んでくると知ったら、ましてその通りになっているような
人生だったら、やむを得ないというもの。
だが、まゆの夫のかざたろうさんは違っていた。
最後のかざたろうさんの言葉のために、この一冊があるようなもの。
低学年からでもOKかもしれないが、出来れば大人のお話会で読みたい。
たぶん深くうなずくひとも多いように思われる。
幸せとは何か。それを教えてくれる。
約8分。まゆの着る着物の柄が、少女から大人へと変化してくのも楽しい。
挿入歌にはぜひわらべ歌のようなメロディをつけてね♫
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てんさらばさら、てんさらばさら・・・なんて素敵な響き!
行李の中のてんさらばさら、昔触ったことがあるかも・・・とても懐かしさあふれるお話です。
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大好きだった絵本。
『てんさらばさら』はおしろいをふりかけると増えていくふしぎな綿毛(実際には存在しない架空のモノなのだと長年信じてきたけれど、どうやら山形の方には存在?!するらしいし、おしろいの容器に入れておくらしい。本当なのか、1度真相を確かめてみたくてたまらない)
そのてんさらばさらが増えると良いことが起こるので主人公の女の子はとても大事に慈しむ。
けれどどんどん増えていくてんさらばさら。幸福の源を少し捨ててしまうなんてことは出来もせず行李いっぱいに入ったそれを彼女はお嫁入りにも持っていこうとするが…
このお嫁入りの時に起きるくだりがとっても印象的でよいのだ。
読み終わると幸せな気持ちになる。
そして、多分ちびっこでも女の子には『おしろいでふえる』というトコロにときめくのだと思う。
もしかするとあまりメジャーなお話じゃないかもしれないけれど、女の子のおちびちゃんにはぜひともお勧めしたい絵本の一つだ。
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空から降ってきた雪みたいだけど雪じゃない「てんさらばさら」。おばあちゃんが言うには、おしろいをかけるといいことが起きるが、人にみせてはいけないらしい。まゆはそれを大切にして大人になる。
子どもの頃に家にあってよく読んでいた絵本。私と名前が一緒の女の子。「てんさらばさらてんさらばさら」。この言葉やリズム、覚えていた。やっぱり昔の絵本って記憶の奥底に根付いているんだな。幸せは外からやってくるようで、実は自分でそこにあるものに気づくかどうか。てんさらばさらを大切にしてきたまゆだから、自分の生活も周りの人も大切にできた結果の幸せなんだと思う。
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不思議な感じのするかわいいおはなし。読後感がいい。
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山形の海辺の村で育つまゆは、おばあちゃんに言われたように、「てんさらばさら」を大切にして白粉をかけてゆっくりと育てる。家族に愛されて育てられたまゆが大人になると、好きな若者と一緒になって、5人の子どもに恵まれる。ある日、大切にしていたてんさらばさらを失ってしまうが、まゆは家族を大切に生きていくことを誓う。
雪=ゆき=幸=幸せとことば掛けをしている。
与えられる幸せから与える幸せを見つけていく。
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図書館で知って気になっていたので、借りてよんだ
「てんさらばさら」という、願いを叶える、白くてふわふわしたものを見つけた、「まゆ」のおはなし
昔話のような、なんだか不思議な話だなぁ、という印象
何かに頼ることなく、自分の身の回りの人とものを大切にして生きていくことが大切、というようなことは感じた
幸せが連なったらすてきだ
昔を感じられる、和風の絵がかわいい
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子供の頃に読んで心にずっと残っていた。
題名をすっかり忘れていたけれど、こんな題名だったんだね。
いわゆる「ケセランパセラン」の話なので、そういう題名なのかと思っていたけれど、「てんさらばさら」というのは地方の方言なのかな?
「てんさらばさら」を手に入れた"まゆ"は、おばあちゃんの言い付け通り、誰にも見られないように小さな箱にそれをしまい、おしろいを振りかけました。
おしろいを振りかけるたびに良い事が起こると、おばあちゃんが教えてくれたからです。
そしてその通り、おしろいを振りかけるたびに、"まゆ"には良い事が起こりました。
しもやけが治ったり、嫌いだったかぶが好きになったり、それは小さな"良い事"でしたが、まゆは、おばあちゃんの言った事は本当だったと思いこんだんでしょうね。
やがて年頃になったまゆが「素敵なだんなさまに会いたい」と願い、てんさらばさらのおかげで出会えた"かざたろう"。
幸せになればなるほど、てんさらばさらは増えていく。
まゆはいつしか、「てんさらばさら」の呪いにかけられていたのではないのかな。
幸せになるおまじないのようなものだったのに、まゆはもう、てんさらばさらを離せなくなってしまっていた。
本当は、全て、まゆが素直に誠実に生きていたが為に起きた"良い事"だったのかも知れないけれど、
「てんさらばさらのおかげ」と思いこんだまゆは、行李(こうり)に入りきらないほどに増えた"てんさらばさら"を手放せず、見つかれば自分の幸せが飛んでいってしまうと思い、大事に思っているはずの夫のかざたろうにも、可愛い子供たちにも隠し通そうとしてしまう。
結局は、怪しんだかざたろうと子供たちに見つかり、てんさらばさらは飛んでいってしまうけれど、きっとそれで良かったんだと思う。
「そんなものなくたって、おれたち いくらでも しあわせになれるさ。これまでだって そうだったんだ。それでこそ ほんものの しあわせじゃないか」
と、かざたろうは言う。
この絵本を読んだ後、子供の私は思った。
自分の幸せは自分で掴もう。
何かに頼って幸せになったら、それが「本物の幸せ」だったとしても、本物と信じられず、いつか失うのではないかと不安になるんじゃないか、と。
「てんさらばさら」を見つけたら、でも、きっと、
小さなお願いをしてしまうかも知れない。
でもそのお願いは、失っても怖くないほどの小さなお願いにしようと思う。
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母が毎晩本を読んで聞かせてくれたうちの1冊。この頃から本は読むもので、宝箱のように大事にしまいこむものではないと思っていたので、すぐに廃品回収に出していましたが、この本だけは宝箱に。
大人になってから再び手にしたくなったけど、すでに廃版になっていたためどの古本屋にも図書館にも置いてなかった。この本を見つけてきて私にプレゼントしてくれる人と結婚すると心に決めたけど、アマゾンでいとも簡単に自分で手に入れてしまいました。
主人公の女の子と同じような生き方を私はしていると思います。
彼女は幸せになりましたが、私はこの本の中盤でずっととまっています。
著者プロフィール
1939年宮城県生まれ。東京女子大学日本文学科卒業。「はなはなみんみ物語シリーズ・全3巻」(岩崎書店)で産経児童出版文化賞、『もりのおとぶくろ』(のら書店)で産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。その他、絵本に『いちごばたけのちいさなおばあさん』『こよみともだち』『てんさらばさらてんさらばさら』(以上福音館書店)など多数。東京都在住。
「2021年 『こうさぎとおちばおくりのうた』 で使われていた紹介文から引用しています。」
わたりむつこの作品