- Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
- / ISBN・EAN: 9784834022780
作品紹介・あらすじ
第二次大戦末期のオランダ。ドイツ軍に町を追われた十一歳の少女ノーチェは父親とともに、人里離れた農家にたどり着く。はじめて体験する農家での暮らしに喜びを見いだすノーチェだったが、その平穏な日常を戦争の影が静かに覆っていく。農家のおかみさん、その息子エバート、脱走兵、森に隠れるユダヤ人一家。戦争の冬を懸命に生きる人々の喜びや悲しみが、少女の目を通して細やかにつづられる。オランダの「金の石筆賞」を受賞。
感想・レビュー・書評
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喜びと悲しみが交互に押し寄せて、
眉をしかめたり顔がほころんだり、感情がいそがしかった。
第二次世界大戦末のオランダ。
ドイツ軍に、暮らし慣れた街アルネムを追われ、避難民として田舎に逃れていく人々。
ノーチェと父さんは森の中の農家、クラップヘクにたどり着きます。
クラップヘクでは信心深い夫婦が拒むことなく人々に食べ物とひと時の暖かな時間を差し出しました。
ヤンナおばさんは言います。
「みんながおなかをすかせている、そう思うだけでつらいんだよ」
11歳のノーチェは
農家での暮らしを愛し、輝くばかりの子ども時代を、ここの息子エバートと過ごします。
戦争の影があちこちに見えるけれど、エバートやクラップヘクの人々と過ごす日々は愛おしいほどに輝いて…
子どもたちにとってはかけがえのない日々なのです。
ここに暮らすひとたちの悲しい影。
結核を患って逃げてきたドイツ兵のテオ、
おばさん達がかくまっているユダヤ人の夫婦。。
「戦争って、なだかへんね
すごくいやなこともあるけど、みんなといるから、楽しいことだってあるもの」
戦争の影が描かれますが、それは敵味方関係なく、ノーチェの目線で全ての人々が戦争の犠牲になっていたんだということを語っているように思えて、それがとても共感できました。
作者のペルフロムさんが、実際にアルネムから疎開した子ども時代が舞台になっているそうで、ペルフロムさんにとっても懐かしい日々だったのだなと言うことが伝わります。
でも、
やり切れないですね。。
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第ニ次世界大戦末期のオランダ。
11歳の少女ノーチェは住む町を追われ、父親と共に森の中の農家にたどり着いた。
この本では、戦時下の人々の暮らしが少女の目を通して語られていく。
「この家ってふしぎね。場所によってぜんぜんちがうにおいがするんだもの」
農家クラップヘクの見取り図が書かれてあるので、人や家畜が同じ屋根の下で暮らしているのがよくわかる。
おやじさんとヤンナおばさんは淡々と日々の仕事をこなし、お腹をすかせている人には牛乳や食べ物を分け与える。脱走兵をかくまったり、住まいを無くした人を受け入れたりと共助の精神を持っている。
ヤンナおばさんは、障害のある「おねえちゃん」を他の子と分け隔てなく育て、農家暮らしが初めてのノーチェのこともよく見ている。〈この子なら出来るだろう〉とお産の手伝いまでさせるのだからすごい。
大人は戦争の中の子どもは「かわいそう」と言う。子どもは「こわいこともあるけど、楽しいことだってある」と思っている。いつも好奇心や冒険心を忘れない。ここでの暮らしがかけがえのない思い出として心に残っていたから、著者は書きたいと思ったのだろう。
ノーチェが森に隠れているユダヤ人の子どもに語ってあげた、ウクライナ民話『てぶくろ』をもう一度読みたくなった。 -
第二次世界大戦中のオランダでの普通の人々の暮らしがえがかれている。ノーチェの暮らすオランダのアルネムはドイツ軍に占領され、ノーチェと父は住む場所を失い、町から離れたクラップヘク農場に助けてもらい住むことになる。
クラップヘクのおやじさんやヤンナおばさんは、見かけ以上に肝がすわっている。ユダヤ人の家族を森でかくまったり、脱走兵のテオをこっそり住まわせたりしていた。見つかったら死んでしまうかもしれないのに。そして気前もいい。ミルクや野菜やスープなど助けを求めてくる人に分け与える。さり気なく気配りして、自分勝手なウォルトハウスさん一家ともイザコザを起こさない。ノーチェは歳の割に大人びていて、赤ちゃんの世話や農場の手伝いもして、お産の手伝いまでこなす。戦争のせいかも。
戦争中であっても理性を保ち、人間らしい生き方ができる人達には尊敬の念しかない。
ノーチェは戦争が終わり、また、町に戻る事になったのが、残念で、学校にいても時々ぼんやりしてしまうのだった。
戦争という大人の都合で振り回される子ども達こそが最大の被害者だと思う。
自然描写や農場の様子が写実的でよく分かるのが素晴らしい。金の石筆賞受賞作。 -
戦時のオランダの話だ。むごい場面、不安な場面も出てくる。けれども主人公の少女の心には、毎日、続いていた日常へのどうしようもない哀切がある。戦時の日常でも、日常には変わりはない。お父さんを始め大切な人がいる。他人の子だけれども、任せてもらった赤ん坊もいる。自然も豊かだ。出会ったことのない物語だ。戦争を告発している。しかし、主眼ではない。愛する場所がある。そこから離される深い悲しみ。愛読書とはこういう本がなるのだろう。
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「第二次大戦末期のオランダ。ドイツ軍に町を追われた十一歳の少女ノーチェは父親とともに、人里離れた農家にたどり着く。はじめて体験する農家での暮らしに喜びを見いだすノーチェだったが、その平穏な日常を戦争の影が静かに覆っていく。農家のおかみさん、その息子エバート、脱走兵、森に隠れるユダヤ人一家。戦争の冬を懸命に生きる人々の喜びや悲しみが、少女の目を通して細やかにつづられる。オランダの「金の石筆賞」を受賞。]
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松岡享子さんの帯の言葉、
"戦時下に育つ一少女の日常を徹底して描くことで、この作品は、児童文学の中に第二次世界大戦を確かな記録として残した。"
こどもにも読んでほしい1冊。
森での暮らしと、戦争。 -
「外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック」の「1. 外国のくらし」で紹介されていた10冊のうちの1冊。
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第二次世界大戦下、オランダの一軒の農家を舞台にした物語。ヨーロッパ中が戦場だったんだなぁ。
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戦争。