眠れないほど面白い『今昔物語』: 欲望、性愛、嫉妬、ユーモア……男と女の「生の息づかい」 (王様文庫 D 12-10)

著者 :
  • 三笠書房
2.92
  • (1)
  • (0)
  • (10)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 121
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784837967132

作品紹介・あらすじ

あっ!と驚く、ドラマチックストーリー、エロティック奇談の宝庫――!

華やかな王朝文学では描かれなかった
平安に生きた人々の等身大の喜怒哀楽を大胆・鮮やかに再現。
大路のにぎわい、漆黒の闇、男と女の生(せい)の本能、
死と隣り合わせの暮らしから生まれるたくましさ・ユーモア――。
日本の最大、最高の「説話集」を堪能してください!


たとえば……

◎【平安の純愛物語】雨宿りがもたらした一夜の契り
◎【おおらかな性】蕪を食べて身ごもる娘
◎【ぶっ飛び超展開】サディズム趣味の不思議な女盗人
◎【夫の条件】女の色仕掛けにはまる若い僧
◎【会いたくて…】地獄から妻を訪ねてくる夫

 などなど、全36話を厳選収録!


時空を超えて、
猥雑なエネルギーに溢れた平安京の門が開く――!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昨年(2016)の年初に古典を読み始めるぞ、という目標を立てて、その見直しを昨年末にしたときの反省から、今年(2017)こそはという思いで、日本の古典に取り組んでいます。いづれは原書や、それに近いものを楽しみたいですが、今のところは、解説本で私の体を古典を楽しめる感覚にしたいと思っています。

    今回の対象となる本は「今昔物語」です、「今は昔~」という語り口から始まる物語ですが、私の記憶としては高校時代に古文の授業で取り上げられた、という事実しかありません。当時、古文の文法には少し興味を覚えたものの、古文で語られている内容は、殆ど頭の中に入っておりませんでしたので、今回とても新鮮な気持ちで触れることができました。

    高校生の教科書で取り扱うには問題のあるテーマ(欲望、性愛、男と女の生の息づかい等)が多く取り上げられているのを思うと、少し安心した気持ちにもなりました。現在の常識となっている見方で、当時のことを判断することは、歴史を見るうえで慎重にならなければならない、とこの本を読むことでも、その思いを新たにしました。

    以下は気になったポイントです。

    ・本書では、第三部(一部:インド天竺、二部:中国震旦、三部:日本本朝)から36話を激選している、善因善果・悪因悪果・因果応報、という仏の教えが色濃い話が多い(p4)

    ・当時、寺というのは経典の翻訳や学問研究の最先端の場であり、上流階級のためだけにあるインテリジェンス施設であり庶民には近づきにくい場所であった。寺では、葬式はもってのほかで、ケガレがつくからと死人を忌避していた(p5)

    ・通い婚は平安時代になっても続いていたが、それを認めて婿としてとるのが平安時代の「婿取り婚」である。ただし正式な婿とされても、男は女の家に同居するのではなく、通うのが普通であった(p6)

    ・前妻の亡骸は干からびていたとはいえ、まだ肉体が残っていたので、霊魂が戻れたのであろう(p32)

    ・生霊は、生きている人の霊魂がその人の体から遊離したもので、怨みに思う相手にとり憑いて苦しめる。遊離した霊魂が本人の体に戻らないと、本人も死んでしまう(p40)

    ・天上界、人間界は、六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天道=天上界)の一つ、前3つを三悪道、後3つを三善道という。三悪道におちても、そこでの修行次第で三善道に生まれ変われる。(p68)

    ・受領は、実際に任地に赴いて政治を行う国守(地方長官のトップ)で、遥任(名目だけで京にいる地方長官)に対する語(p98)

    ・郡(こおり)は、郡の古い呼び方である。律令制のもと、国の下に置かれた地方行政単位、郡の下に郷(里)、町、村があった(p185、286)

    ・当時のならわしでは、婿の面倒は一切合切、妻の側の実家が見ることになっていた(p244)

    ・西の京(右京)は、朱雀大路より西側であり、当時はさびれた場所であった(p257)

    ・後朝(きぬざぬ)の文は、一夜をともにして女のもとから家へ帰ったら、なるべく早く女へやる手紙のことで、それは習わしであった(p266)

    ・三宝は、仏とその教えである法と、その教えを広める僧の3つ(仏・法・僧)を宝にたとえたもの(p305)

    2017年8月6日作成

  • 読書録「眠れないほど面白い『今昔物語』」3

    著者 由良弥生
    出版 三笠書房

    p290より引用
    “このときは、「これは前世からの因縁であ
    る」とわかって治療しなかった。この蛇と娘
    の間柄は、前世からのものだとわかったから
    である。”

    目次から抜粋引用
    “魂を飛ばして人を殺す女
     夫が見た妻の逆立つ髪
     雨宿りがもたらした一夜の契り
     蕪を食べて身ごもる娘
     地獄から妻を訪ねてくる夫”

     童話や昔話を再現する事に定評のある著者
    による、古典の「今昔物語集」の中から男女
    の話を中心に取り上げた一冊。
     執念深い女性や地獄から舞い戻る男性まで、
    時代背景や言葉の解説を添えて書かれていま
    す。

     上記の引用は、蛇と二度も交わって死んだ
    女性についての話での一節。
    あまりにも理不尽に訪れる不幸は、こんな風
    に思って割り切ってしまったほうが、当時は
    気持ちが前に進んだのかも知れません。
    現代で、不幸に見舞われた人にこの様な事を
    言うと、色々と問題が起こるのではないかと
    思います。
     今昔物語集全部だと、千話を超えるとの事。
    日本だけでなく、インド、中国の話しもある
    そうです。学校で習ったはずなのですが、今
    昔物語という名前しか覚えていませんでした。
     どんな時代になっても、男と女の間には、
    いつでもやんごとない事情がありつづけるも
    のなのですね。

    ーーーーー

  • 今昔物語の分かりやすい現代語訳です。昔の日本の状況や考え方が幾分理解できます。
    今から考えると突拍子もないお話なんかもあったりして、面白いです。
    それにしても男と女の情念はこわい。自分なんてやわだわ、と思いました。

  • 今昔物語夜の部といったところか。
    当時の用語の解説が丁寧なので予備知識はいらない。
    福永先生版のと重複しているので男女問題に興味のある方がこちら側のみを購入しても良かろう。

全4件中 1 - 4件を表示

由良弥生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×