クリティカル・ワード ファッションスタディーズ 私と社会と衣服の関係

  • フィルムアート社
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784845921096

作品紹介・あらすじ

ファッションを読み解く23のキーワードと、
さらに深く知るための11の分野のブックガイド。

現代文化を考えるうえで知っておきたい基本と、
多様な視点・アプローチを学ぶことができる、
さらに先を考えるためのヒントが満載の、
新時代のファッションスタディーズの入門書が登場


ファッションは「時代を映す鏡」だと言われています。社会状況や文化の変容にともない、ファッションを取り巻く状況も大きく変化しています。流行の変遷や資本主義グローバリズムの加速、その反省や批判的視点からもたらされたサステナビリティやエコロジーへの意識、多様性/ジェンダー/マイノリティへの多角的な視座といった、現代社会において最重要である問題は、ファッションの分野から新たな事例や議論が生まれ続けていると言っても過言ではありません。さらに、3DプリンターやAR/VR等、テクノロジーの進化や成熟がもたらすファッションの新たな可能性と展開は常に注目を集めており、その一方で、人間の身体性の再考の重要性も議論されています。このように、ファッションについて考えることは、現代文化のあり方を多角的に考えることにもなると言えるでしょう。

本書は、「ファッションスタディーズ」という分野について、その歴史や文脈と紐付けながら、理論や事項をマッピング・整理し直すことで、ファッションスタディーズの新たな射程を見通すことを試みた、まったく新しい「ファッションスタディーズ入門」です。
現代ファッションをとりまくものの多様性・横断性に特に注目し、哲学、社会学、文化人類学、メディア論、ジェンダー論、環境学、デザイン論といった、多様な分野とファッションの結びつきを照らし出します。

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◆シリーズ[クリティカル・ワード]
現代社会や文化および芸術に関わるさまざまな領域を、[重要用語]から読み解き学ぶことを目指したコンパクトな入門シリーズです。

基本的かつ重要な事項や人物、思想と理論を網羅的に取り上げ、歴史的な文脈と現在的な論点を整理します。もっと深く理解し、もっと面白く学ぶために必要な基礎知識を養い、自分の力で論じ言葉にしていくためのヒントを読者に提供する新しい入門書です。

感想・レビュー・書評

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  • 『クリティカル・ワード ファッションスタディーズ』蘆田裕史・藤嶋陽子・宮脇千絵 編著|馬場紀衣の読書の森 vol.3|光文社新書(2023年3月18日)
    https://shinsho.kobunsha.com/n/ne90f349c22e4

    ファッションと哲学、社会学の関係性を紐解く 蘆田裕史や藤嶋陽子らが編著した書籍発売 | FASHIONSNAP(2022.03.24)
    https://www.fashionsnap.com/article/2022-03-24/fashionstudies-2022/

    クリティカル・ワード ファッションスタディーズ 私と社会と衣服の関係 | 編著/共著 | 新刊紹介 | Vol.46 | REPRE
    https://www.repre.org/repre/vol46/books/editing-multiple/suzuki/

    クリティカル・ワード ファッションスタディーズ 私と社会と衣服の関係 | 動く出版社 フィルムアート社
    http://filmart.co.jp/books/fashion/cw_fashion_studies/
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    (まやこふすきさん)アートと歴史、文化についての本棚から

  • 哲学、社会学、ジェンダーなど様々な視点からのファッション研究。
    歴史も辿れ、用語の解説や推薦図書も充実していて、初心者にありがたい一冊だった。

  • ファッションを自分なりに考えるとき、いろいろな場面における「自己表現」に他ならないと思っている。家着や寝間着などそれを選ぶ自分の心の動きがあったと考える。
    ファッションに興味はない、そんなものにうつつを抜かしてなど言っても誰もがファッションと無関係ではいられないはずだ。(選択を放棄するという、自己表現?)
    いろんなキーワードとともに多角的にファッションが考えられて楽しかった。

  • ファッションという概念も含めて様々な方面で解説してくれる本。
    西洋のみならず非西洋のエリアも含めて歴史を紐解いていく。そしてジェンダーからの目線、伝統的な服がどのような意味を持つのかなど幅広いトピックに渡っている。TikTokなどのメディアの影響についても触れているため直近の流行りについても含めている。
    最近は若い層の支持が強いSHEINは安い服が買える中、服を作る側の労働者の賃金が低すぎる問題や環境保護も問題になっている。もちろん明確な結論はないが、考えるべきポイントはたくさん入っていると思う。
    ただ正直第2部の事例編しか興味が持てなかった。第1部は歴史や概念についてなので相当興味を持っている人でないと厳しいのと第3部は参考文献を羅列しているだけで読み応えがなかった…

  • あなたがファッションに関心を持っているか否かに関わらず、あなたが着る服は何らかの意味を帯びてしまっている。

  •  コロナ禍で誰とも会わなくなって久しい中、服に対するモチベーションが一向に上がらない。もともと別におしゃれなわけでもないし、特段のこだわりもないので、このままだと全身ファストファッションおじさんになりそうと危惧し本著を手に取った。そもそも服を着るとは?ファッションとは?といった超ベーシックな問いに対していろんな領域の学術分野から紐解いてくれていてめちゃくちゃオモシロかった。
     一部で理論、二部で実例、三部で文献紹介という三部構成になっていて段階的に理解を深めることができるし、深堀したくなったときに追加で文献に当たることもできる親切設計になっているのがありがたい。
     読む前からファッションや服を着ることは社会的な行為で他者がいて初めて成り立つものだよなと思っていた。その考えについて文献に基づいて丁寧にどういうことか、本当にいろんな切り口(アイデンティティ、消費などといった観点)で書いてくれているのがオモシロい。文献でしっかり補助してくれているので、書き手の私見に限らないのだなという安心感もある。
     衣服・ファッションの最近のもっぱらの話題はSNSによる情報の在り方の変化とSDGsへのコミットが要求されるサステナビリティへの考慮になっており、その二つが比較的分厚く解説されている点が良かった。前者については今となっては自明のことだけども、インターネット、SNSがなかった頃は情報格差が存在し、例えばファッションショーで紹介された衣服を見ることができる人は限られており、大衆はそこからトリクルダウンで情報が落ちてくるのを待たないといけなかった。また後者については資本主義社会である以上、常に新しい衣服を製造し売り続けなければファッション業界が成り立たないことを前提にしつつ、環境負荷を下げる方向へ各ブランドが画策していることを知れて勉強になった。職種が素材屋なので、その辺りのテクノロジーの進歩の具合にも驚いた。
     ジェンダー観点もかなり興味深くてスカート、パンツが生む男女差の弊害を筆頭にファッションが思っている以上に社会における「性別」を規定していることを思い知る。ファッションは自分のアイデンティティを主張するものでありながら、コミュニケーションツールでもありTPOでの使い分けが要求される。この相反する要求を成立させなければならないと考えるとファッション、服装って難しいものだよなーという認識を深めた。ただ結局履いているのはユニクロのウルトラストレッチアクティブジョガーパンツなので早くこのフェーズを抜け出したい。

  • ファッションについての研究材料がぎっっっしり詰まっている。ファッションに興味のある人、社会学部や人類学部、服飾系の学生で少しでもファッションに興味があるならぜひ読んでほしい。文学部とかでも、映像系の研究をする際にとっかかりになるかも。分厚いが、いろんなトピックが薄く浅く紹介されているので、サラリと読める!

    p.42 バルトがファッション(モード)の研究を行うために注目した調査対象が「服」ではなく、「ファッション雑誌」であったからだ。バルトはメディアとしてのファッション雑誌が、服そのものよりも流行の生成に決定的な役割を果たすことを見抜いていた。バルトによれば、「欲望を起こさせるものは対象(物)そのものではなくて名前であり、人にものを売るのは夢ではなく意味の仕業」である。人は、誰もが知るあの有名ブランド、今まさに話題のアイテムが欲しい。そこで彼は、特定の年代のファッション雑誌を選定し、それらに記載された用語を抽出し「言葉」による表現の機能と役割を分析した。 衣服や商品をファッショナブルなものとして流し、意味付けを行うのが発信ファッション雑誌であり、僕は人々に知られ、話題になることによってファッションとなる。バルトの功績は、ファッション雑誌の「言葉」がいかに有効生生させるのか、その仕組みを解明しているところにある。ここでしばしば指摘されるのは、彼が紙面の多くを占めるイラストや写真を研究対象から外したことである。…

    p.69 人類学者テレンス・ターナーの「ソーシャルスキン(The Social Skin)」において、人間はいかなる社会においても、それぞれの社会的概念に従って、自身を装飾したり、被ったり覆い隠したり、変化させたりと言うことをに関心を抱いていること、そしてそこから身体の表面が生物学的及び心理学的実態としての個人の境界としてではなく、社会的自己の境界線も意識していることを論じている。そして服装や身体の装飾は、そのような文化的媒体のひとつであり、個人的、社会的アイデンティティーの形成と伝達に置いて、おそらく最も特化した媒体であろうと述べる。

    私とは一体何者なのか、それがアイデンティティーに関わる問いである。自分を象る(かたどる)境界線をさまざまに設定され得るし、当然それを表現する手段はファッションに限定されるわけではない。言語や慣習、信仰等アイデンティティーを示すことができる。しかしターナーが述べるように、ファッションは、即時的・視覚的にアイデンティティーを示す上で効果的なのである。

    p.150 「宗教とは、神聖すなわち分離され禁止された事物と関連する信念と行事との連帯的な体系、教会と呼ばれる同じ道徳的共同社会に、それにこれに起因するすべてのものを結合させる信念である」。デュルケムは、宗教に、個人の信仰の側面、つまり個人と神あるいは超越なる者のつながり側面とともに人間同士をつなぐ側面、つまり特定の行事や共有する場(協会)を通じて信者を結びつけ、同一の生活を生きる集合の集団の結合の役割を見た。宗教が規定する衣服もまた、この宗教が持つ2つの側面で捉えることができる。

    p.163 ドレスコードの役割
    ドレスコードは装いを規定することでいくつかの役割を果たしている。ここでは3つの側面からドレスコードの役割を説明してみたい。

    第一に、着用者が所属する集団及び集団内での位置を表示しつつ、それが適用される集団の秩序を維持する役割を持つ。例えば軍服や学校制服等の制服がこの役割を持つ。軍服は所属する軍隊及び軍隊内部での階級・役職を示しつつ、正しく装うことで、その行動が制定された集団の秩序の正当性を是認し維持する。また国家間の後外交の場で用いられる儀礼的な諸規則(プロトコル)にも服装規定が存在するが、これは同一の慣習規範を採用していることを相手国に示すことで、自国と相手国とが共通の価値を持った集団であることを示す役割を持っている。

    第二に、着用者が参与する活動や場の性質を表示しつつ、活動や場を維持する役割を持つ。パーティーや典礼の際に採用されるドレスコードでは、その内容・時間帯に応じて正礼服・準礼服・略礼服(平服)等の区分と、着用を求められる衣服・装身具の種類が定められる。参加者は行動の遵守を通じて、参加する催しの格式を示す。特定のスポーツにおいての服装規定は、 競技と言う活動の公平性を維持するために正当化される。例えば、日本陸上競技連盟は競技用靴について「競技の時、靴を履く目的は、足の保護安定とグランドをしっかり踏みつけるためである」としつつ(この規定を次に説明する自己の尊重と関連する)、「靴は、競技者に不公平となる助力や利益を与えるものであってはならない。靴はどのようなものであっても、陸上競技の普遍的精神に合致し合理的かつ無理なく入手できるものでなくてはならない」とし、競技と言う活動の公平性を歪める靴の着用を禁止している。あるいは、明文化されていないが暗黙裏に共有されたコードとして、 特定のバンド(例えばメタリカ)のコンサートに全く無関係の別のバンド(例えばビートルズ)のTシャツを着て参加する際の場違い感などを挙げることもできよう。この場合、装いに対する抵抗感は、着用者の場についての理解と相関してもたらされる。音楽に無頓着な聴衆であれば、この場違い感を覚える事はないが、バンドやジャンルの際に就職した聴衆であれば、そのTシャツがコンサートにふさわしくないことを理解することができるだろう(この例は後述のコードの解釈とも関連する)。

    第三に、自己と他者を尊重することを表す役割である。大津尚志の『校則を考える』 の中で紹介するアメリカ合衆国の中等学校における服装規則を例に取ろう。これらの学校は通常、制服を定めているないが、「アルコール、武器、タバコ、ドラッグを推奨する」服装の中傷的・侮蔑的な意味を持つ服装を禁止している。また、寝間着や下着に見える装いも禁じられている。この規則の背景には、装いを通じて自己および他者の名誉を傷つけず、尊重することを求める人権意識がある。名誉や尊厳だけでなく、自他の生命を守るために服装が規則される場合もまた存在する。例えば化学物質を扱う実験室での白衣や防護服の着用義務や、MRIなどの装置内での金属等を含んだ装身具・衣服の禁止などがこれにあたる。

  • 第1部 理論編──過去から現在にわたるファッションのとらえ方
     1 流行 香室結美
     2 消費 藤嶋陽子
     3 メディア 平芳裕子
     4 コミュニケーション 高馬京子
     5 アイデンティティ 宮脇千絵
     6 ジェンダー 西條玲奈
     7 身体 小澤京子
     8 テクノロジー 水野大二郎

    第2部 事例編──ファッションを理解するための重要トピック
     個とグローバリゼーション
      1 民族衣装 宮脇千絵
      2 ストリートファッション 有國明弘
      3 ルッキズム 蘆田裕史 

     自己の演出
      4 映画と衣裳 北村匡平
      5 宗教と衣服 野中葉
      6 ヴァーチャルファッション 難波優輝

     規範と作法
      7 ドレスコード 赤阪辰太郎
      8 コピー 朝倉三枝
      9 子ども服 新實五穂

     価値のシステム
      10 セレブリティ/インフルエンサー 田中里尚
      11 ブランド 菊田琢也
      12 文化の消費 田本はる菜

     サステナビリティ
      13 グローバルマーケットと生産 南出和余
      14 リサイクルとバイオファッション 川崎和也
      15 天然繊維 落合雪野

    第3部 文献で読みとくファッションスタディーズ(分野別ブックガイド)
     1 哲学・美学 赤阪辰太郎
     2 社会学 田中里尚
     3 文化人類学 中谷文美
     4 ファッション史・服飾史 鈴木彩希
     5 批評 五十棲亘
     6 メディア論 五十棲亘
     7 記号論 ⾼橋⾹苗・劉芳洲
     8 ジェンダー論 関根麻里恵
     9 環境学 平田英子
     10 デザイン論 川崎和也
     11 身体論 村上由鶴

  • ファッションにまつわる多様な学術的なモノコトをまとめて紹介されています。まぁすごく大まかにまとめられた概論なので、理解するには、もう少し詳細に語って欲しいと思う。文化を学ぶ大学生が入学して最初の前期に読むことが相応しい、そういう基礎的な感じ。
    あと、一部誤字脱字が多い部分があり、読む集中力に欠けてしまい、校正校閲って大事だと感じた。

  • 第1部 理論編―過去から現在にわたるファッションのとらえ方
    第2部 事例編―ファッションを理解するための重要トピック
    第3部 文献で読みとくファッションスタディーズ

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著者プロフィール

1978年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程単位取得退学。京都服飾文化研究財団アソシエイト・キュレーターなどを経て、現在、京都精華大学デザイン学部准教授、副学長。専門はファッション論。著書に『言葉と衣服』(アダチプレス、2021年)、『クリティカル・ワード ファッションスタディーズ――私と社会と衣服の関係』(共編著、フィルムアート社、2022年)、訳書にアニェス・ロカモラ&アネケ・スメリク編『ファッションと哲学――16人の思想家から学ぶファッション論入門』(監訳、フィルムアート社、2018年)などがある。本と服の店「コトバトフク」の運営メンバーも務める。

「2023年 『vanitas』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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