細い赤い糸

著者 :
  • 論創社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784846018856

作品紹介・あらすじ

連続殺人を繋げる"赤い糸"の秘密とは? 日本推理小説文壇最長の白寿記念出版。日本推理作家協会賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 何の関係性もない人々が織りなす群像劇のようでいて、怒涛のクライマックスで予想だにしない接点が暴かれる。
    注目すべきはラスト30ページ、ミステリー史に残る衝撃の展開だ。

    物語の重要なキーでありながら、あくまで物理的な小道具として登場する“糸”が暗示するもの。
    それに思い至るとき、偶然の積み重ねに翻弄される運命の皮肉に、やり切れない哀しみが募る。

    *************************************
    ・テーマ/世界観 ★★★★
    ・背景描写    ★★★★
    ・キャラクター  ★★★
    ・インパクト   ★★★★★
    ・オリジナリティ ★★★★★
    ・テンポ/構成  ★★★★
    ・文章/語彙   ★★★
    ・芸術性     ★★★
    ・感動/共感   ★★★★
    ・余韻      ★★★★★

  • 「幻の名作」「知られざる寡作作家」といったパッケージングから「屍の命題」(門前典之)や「十二人の抹殺者」(輪堂寺耀)を連想したが、あの手のあっとびっくり系ではなく、むしろ松本清張を彷彿させる。
    1962年刊というアナクロ感は、冒頭の公衆電話に列なす人々、お茶出しや荷物運びをするのは女子職員、妻が夫に敬語で話す、職場で算盤(!)使用といった程度で、もともとの文体が乾いてモノクロームなためか、あまり古びた色は感じなかった。むしろ、月給2万円の時代に「毎月何千万の仕事」とかどんだけ景気よかったんだと、今の日本の凋落ぶりが印象に残った。

    バラバラにしか見えない物語は淡々と進み、もう残りいくらもないぞこれをどうやって繋げんだラストで適当に帳尻合わせたら許さねえぞゴルァ…と思っていたら、その帳尻合わせが水準以上だったので満足できた。
    「あっとびっくり」なことをやっているわけではないが、なるほどその手があったか、としみじみしたし、時代を考えたら当時はそれなりに「あっとびっくり」=画期的であったと思われる。

    容赦のない筆致やサスペンス性(逆に言うと、読者の推理はあまり許されない)は本作のみにとどまらぬ著者の持ち味だそうで、乱歩賞最終候補の「疑惑の夜」や1990年刊行の最新長編「青いリボンの誘惑」あたり、読んでみようと思った。

    追記)読んだ(ついでに、作品集だったので他の中短編も)。それなりに楽しめたし、作風にブレはない。裏を返せば地味で、マイナーに甘んじた理由はそれかと思った。

    2020/7/11読了

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著者プロフィール

1921年、山口県生まれ。本名・烏田専右(からすだ・せんすけ)。東京帝国大学工業学部卒業。工学博士。1946年、『宝石』懸賞探偵小説「犯罪の場」を投じて入選、翌年、同誌に掲載されデビュー。短編と並行して『死を運ぶトラック』(59)や『死にぞこない』(60)などの書下ろし長編を精力的に発表、62年に長編「細い赤い糸」で第15回日本探偵作家クラブ賞を受賞する。75年にコンクリート工学の研究で日本建築学会賞受賞後、本業多忙のため短編「とられた鏡」(76)を最後に断筆状態が続いたが、1990年、旧友が出版社を立ち上げた記念に長編「青いリボンの誘惑」を書き下ろし、久々に新作を発表した。2001年、日本推理作家協会名誉会員となる。2021年死去。

「2022年 『飛鳥高探偵小説選Ⅵ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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