防大女子 - 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち - (ワニブックスPLUS新書)
- ワニブックス (2021年10月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784847061875
作品紹介・あらすじ
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「究極の男性組織」に身を置いた「防大女子」の生活、人生とは?
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防衛大学校の全学生に女子学生が占める割合はわずか12%。
一般の「女子大生」とはまったく違う世界に飛び込んだ彼女たちの
生活、苦悩、そして喜びを、自身が「防大女子」だった著者が詳細に描く。
実体験に加え、多くの防大OG、女性自衛官にも取材し、
特殊な環境で働く女性たちの本音にせまり、課題を提示する
【本書の内容より】
防衛大学校とはどんな組織か
意外に多い「文系」出身者
女子が防大を目指す理由
テレビなし、毎日腕立て伏せの日々が始まる
わずか5日で1割退校
防大生の1日
「空」と「陸」どっちが「ラク」か?
防大生の「目指すべきあり方」とは
防大生同士の固い絆
男女の友情は成立するか
緊張感あふれる「女子部屋」事情
防大女子の心が折れるとき
卒業後任官しない道を選択する防大生
女性自衛官の苦悩
ロールモデルの不在とはびこるハラスメント
防大女子のこれから 他
感想・レビュー・書評
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ふだんはなかなか覗くことができない防大女子学生の生活。
防大時代だけではなく、彼女たちの「その後」も網羅しているところが良い。
幹部自衛官として勤務を続けている者、どこかの時点で自衛隊を辞めてしまった者。
それぞれに一口では語り尽くせない思いがある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
●全学生の1割を女子学生が占める。この30年間で入稿者が1300人。3分の1は卒業の前に防大を去る。また多くのものが自衛隊を離れる。
●海外では、陸海空の士官学校は別々に設置されるのが普通であり、防大のように一堂に会して学ぶ環境は極めて珍しい。
●身分は「特別職国家公務員」たる「自衛隊員」階級のある自衛官ではなく自衛隊員となる。月11万7千円の手当と賞与。基本衣食住は無料。
●文系は地方の旧帝大レベル、理系はMARCHレベルと言われている。
●日本国籍を有しないものは入校が認められていないが、世界各国の士官学校からの留学生の数は6%程度に及ぶ。
●志望理由は、金銭的理由が半分。親が自衛官、自衛隊への憧れなど。
●「教え子を再び戦場に送らない」と言う、戦後日教組が提唱したスローガンは教育現場ではいまだに残っているようだ。
●中高は文化系も少なくない志望者。
● 1年の夏の遠泳がある。1ヵ月の訓練期間が設けられる。東京湾を8キロ泳ぐこと。
●現在の学生舎では8人部屋が基本となっている。部屋は居室と寝室に分かれ、テレビやゲームなどは全くない。
●入校数日で約1割が減る。卒業時にはもう1割ほど減っている。
●月曜日にカレーが出ることが多い。夏の白い制服に飛び散った時を「被弾」と呼ぶ。
●朝昼晩合わせた1日の摂取カロリーは約3400キロカロリー。一般的な同年代の女子の倍!
● 1学年は「模倣実践」2学年は「切磋琢磨」3学年は「自主自立」4学年は「率先垂範」と言う標語。
●訓練のテストで「敵の歩哨を見つけた場合、生きたまま保護するのが最も好ましいが逃げられそうな場合は刺殺、できなければ射殺する」との回答を書いた。
●防大の卒業までに必要な単位数は152もある。防大ならではの単位は24単位だけ。訓練はそもそも単位が設定されていない。
ただ日常的には週に1回2時間程度位しか訓練は無い。季節ごとにまとまった訓練期間はある。
●世の中には3種類の性別がある。男子、女子、防大の女子学生だ。
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一割しかいないのに、興味津々で着目しちゃう。男性社会と女性の在り方を考えるうえで、一つの基礎になりそうなサンプルである。
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自らも防大を卒業した著者が女子防大生の日常や悩み、そして、それに続く幹部候補生学校や部隊で、女性幹部としていかに生きるか、あるいは、限界や見切りをつけて退職したか、50人ほどの取材・インタビューを通じて描き出す。
男社会と思われてきた防大や自衛隊という組織において、女性がいかに生きるか、また、多様性の面からも女性が存在することが有意義かということが強調されるが、それだけ未だに女性活躍のための壁が厚いということでもあるようだ。 -
深い体験談。ご本人、非常に頭がよい。
しかしこのような優秀な方が辞めてしまう自衛隊、それこそが問題だと思う。 -
「世の中には三種類の性別がある。男子、女子、防大女子だ」
防衛大出身のフリーランス作家が描く、究極の男社会を生きる防大女子のリアルな姿。
防衛大の女子学生は約1割、そのうち3分の1は卒業前に防大を去るという厳しい世界。卒業後にも中途で退官する例も多いという。筆者もその一人。その後時事通信の記者からフリーランスという経歴。
装丁からはエピソードを羅列した単なる暴露本かと思ったが内容は至って真面目。防衛大と自衛隊における女性の立場がどうあるべきかというテーマに、真摯に立ち向かっている。自衛隊に限らず官民問わず他の社会にも有用な内容、得るところが多い。
防大同期生の深い絆から生まれた本書、志半ばで自殺した同期生の存在が本書の執筆の大きなモチベーションであるという。
防大女子の苦悩と未来を描いた作品。本書が初著作という筆者の今後の活躍を期待したい。文句なしに五つ星。