新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない

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  • ワニブックス
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  • Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784847098802

作品紹介・あらすじ

日本いや世界中を苦しめる新型コロナウイルスは習近平政権の隠蔽によって拡大した!
中国からの厄災は対岸の火事ではない!
香港の自由と法治の守護、台湾の国家的地位
チベット・ウイグル弾圧からの解放は日本の国益!
そして、日本は新型コロナなんかに負けない!

感想・レビュー・書評

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  • 大陸ウォッチャーとして、真摯に、時にコミカルに共産中国とその周辺、
    台湾、香港などの国々の状況をも伝えてくださっている、福島香織さんによる一冊。

    ジャーナリストとはかくあるべきか、と感じさせられ、一気読みしてしまいました。

     “(今回のコロナ禍のような危機に直面すると)民主主義の自由と人権を尊ぶ価値観と、
      安定や発展を理由に、時に自由と人権を踏みにじるような手法をとる
      中国式の全体主義的な価値観のどちらがいったい世界にとってより良いのか、
      という判断を問われたとき、一瞬迷う人も出てくると思う”

    との警鐘を鳴らされたうえで、根底では、、

     “日本人の価値観には、はっきりと人権と法治の価値観、民主主義を是とする価値観がある”

    との想いを持たれていて、これは麻生太郎さんが外相時代に提唱された「自由と繁栄の弧」ででも
    「普遍的価値観」と表現され、この価値観を共有できる国々と手を携えて、との理念にも通じる想いかと。

    大枠としては、香港デモから始まり、台湾総統選、コロナ禍(武漢肺炎)、
    そしてアフターコロナのトピックから、香港・台湾の活動が第二局面に、、な流れでしたが、

    先日の全人代で、香港弾圧法(国家安全法)が採択されました、それに伴い、
    香港への「共産中国の軍事力による弾圧を加えることが可能になりました」ので、不安定さが増しています。

    アメリカから、即時にカウンターが出ていのは頼もしい限りですが、一つ疑問なのは、
    こうした弾圧法案に対して声を上げる、人権派(屋)が、どうして日本国内にはいないのか、との点。

    現在進行形で、共産中国が侵略を続けているウイグルやチベットで行われている、
    「民族浄化(エスニッククレンジング)」に考えが及ばないのであれば、相当にお花畑でしょう。

    憲法9条とやらは、日本を侵略から守ってはくれない、それは、連日の尖閣諸島への侵入を見ても明らか、
    にもかかわらず、オールドメディア(第四の権力)は、なぜ、批判的な意見を出さないのか、本当に不思議です。

    また2017年でしたか、共産中国の習近平氏が、実質的な終身国家主席≒独裁制を導入したのは、
    それについても、終身国家主席と化した習近平氏を独裁者と指弾するメディアが皆無であるのも、また不思議です。

    仮に、安倍さんがそんなことをしようものなら、どうなりますやら、、と皮肉を込めたくなりますね。

    まぁ、安倍さんはそんなことは絶対にしないでしょうけども、この戦時下ともいえる、
    コロナ禍(武漢肺炎)への対応のためであっても、愚直なまでに民主的な手続きを守っています。

    それに対して、最速で金寄越せ、でも強権的にするなとは、ただの夢想主義者で、現実感覚がない○○でしょう、
    いわゆる、言うだけ番長ってやつで、現場を知らない声が大きい一部の○○が騒いでる、と信じたいところです。

    そうは言っても、こんな状況下で“民族浄化を行っている独裁者”を国賓待遇とか進めるのであれば、
    さすがに現政権へも批判的にならざる得ません、とも、考えていますが。

    それそれとして、個人的な白眉は、香港デモのアイコンリーダーでもある、周庭(アグネス・チョウ)さんとの対談、

     “強い国、繁栄した国というのは、経済力があるだけでなく、人権や人の命に対する尊重ができる国”

    とは、果たして、今の日本がそうだといえるのか、背筋が伸びる気分でした。

    普遍的価値観を共有できる国々とは、と、久々に思い出させてくれた、そんな一冊です。

  • 香港の反送中デモ、デモの現場のレポート、知名度の高い周庭へのインタビュー、香港理工大学での立てこもり、香港区議会選挙の香港民主派の勝利、台湾総統選の民進党の勝利、武漢コロナの中共の初期対応のミスと隠蔽、パンデミックの中での中共のプロパガンダ、whoの癒着など、香港・台湾・武漢コロナの3つの事象がまだ完全に終わっていない中でよくまとまっていると思う。広く浅くと言う内容が多いが、1つ1つの検証は今後に任せれば良い。

  • 新型コロナが始まった年の2020年に書かれた本で、そこからも、世界ではいろんなことが起こっているけれど・・・香港や台湾で起こったこと、新型コロナでの対応・・・人権無視の習近平政権の怖さを改めて実感。
    中国に頼らない経済力を持ってNOと言える日本にならないと。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50226565

  •  なるほど、今年2020年1月の台湾総統選の民進党蔡英文の勝利は、香港のデモ学生などの民主主義への思いや何よりも2019年早々に発表された周5条に対する中国共産党の圧力からの忌避感によるものだという。なるほど。
     新型コロナウイルス禍に乗じ、アジアをはじめ、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカへ、一帯一路のスローガンのもとに世界にその触手を伸ばし、世界のルールメーカーたらんとする習近平の実像が浮き彫りにされている。
     中国の躍進の裏で、民への言論統制、行動制限、さらにはチベットやウイグルの弾圧が行われている、そんな国家であることを忘れてはならない。著者は必死に警鐘を鳴らしている。

  •  現時点での米中関係を俯瞰するというマクロな視点で参考になったことはもちろん、香港、台湾、中国の中で具体的に何が起こっているのかというミクロな視点も併せて非常に参考になった。非常に読みやすく、筆者も取材で参加された香港デモの記述など感情移入して没入して読んでしまうくらい。具体的な内容次のとおり。
     現時点で国際情勢は、米国に代表される民主主義的、普遍主義的価値観と、中国式全体主義的価値観の衝突を軸に回っており、今回のコロナ事案により、その流れが加速しているという全体的な情勢認識。その上で、我が国としてどういう戦略的立場はあくまで前者に与し、全体主義的価値観に対抗していく一翼となるべきという論理を現場の取材も含む中国ウォッチャーとしての視点から展開する。
     第一章では、2000年代からの香港における民主化デモの背景と、今回の反送中デモの位置付けについて。習近平の強圧政策の下で、一国二制度が風前の灯火となっていること、香港警察が中国公安と一体的に運用され、暴力装置としての傾向が強まっていること、また若き民主化リーダーの一人、周庭さんとのインタビューを引用する形で、民主派の考え、中国に対して抑制的な日本メディアへの苦言を呈している。中でも、「強い国とは経済力だけでなく人権や人命の尊重ができる国」とした上で、日本政府も人権問題について意見表明してほしい、日本メディアは表面だけ見てデモを暴力的と軽々しく言わないで欲しいと訴える。また、選挙離れする日本人に対して折角の権利を行使していないと悔しさを滲ませているのも印象的。
     二章では2020年1月の台湾総統選を扱う。民進党の勝利を蔡英文の勝利では無く、習近平の敗北と位置付ける。やや急進的な蔡英文の国内政策は選挙民の受けは悪く支持率は低迷していたが、習近平が一国二制度による統一を迫る演説をしたこと、その一国二制度が香港で危殆に瀕していること、これに対して蔡英文がノーをはっきりとさせたこと、断固たるコロナ対応で中国からの感染を締め出したことなど習近平のオウンゴールに助けられた点が多く、トランプ政権やオーストラリア政権の支援も側面支援になっていると見ている。
     三章は中国のコロナ対応。SARSの時の隠蔽を繰り返した上に、習近平による個人独裁のせいで現場の情報がまともに上がらず(嫌な情報を上げて勘気を被りたく無い)、十分な情報・分析がないまま判断を迫られるため、政策のピントが外れ、悪循環が生じると分析。例えば、生産の早期回復を指示するのに対して、現場は工場と現地政府がグルになって再開したフリをする、習近平の武漢訪問に際して、住民の不満を交わすために、現地政府が各住宅のバルコニーに警察官を配備して、歓呼の声で答えさせるなど深刻化する現状の糊塗が、コミカルとも言える形で行われていることを紹介。
     四章では、共産党内部で習近平おろしの声が出ていることから秋の党大会で終身制が撤回されるかが注目としている。また、中国による世界の守り手としてのナラティブはイタリアや後進国に浸透しつつあるが、習近平の隠蔽から始まったことを理解している米国はこれに明らかにノーを突きつけているとしている。最後に、コロナ対応のみでは無く、米中の価値観を巡る戦いであるとの大局観を持ち、また中国がその勝者となり、世界のルールを全体主義的なものへと塗り替えていくようなことの内容に我が国としても全力を尽くすべきという観点で書かれている。

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著者プロフィール

ジャーナリスト、中国ウォッチャー、文筆家。
1967年、奈良市生まれ。大阪大学文学部卒業後、1991年、産経新聞社に入社。上海復旦大学に業務留学後、香港支局長、中国総局(北京)駐在記者、政治部記者などを経て2009年に退社。以降はフリージャーナリストとして月刊誌、週刊誌に寄稿。ラジオ、テレビでのコメンテーターも務める。
著書に、『習近平 最後の戦い』(徳間書店)、『台湾に何が起きているのか』『ウイグル人に何が起きているのか』(以上、PHP新書)、『習近平王朝の危険な野望』(さくら舎)、『孔子を捨てた国』(飛鳥新社)など多数。
ウェブマガジン「福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップス)」を連載中。

「2023年 『習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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