- Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
- / ISBN・EAN: 9784860293062
作品紹介・あらすじ
画業七十余年。堀文子の対談集。
感想・レビュー・書評
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ああ、いいなあこの感覚、と言えるものが色々見つかる。山の手のお嬢さんながら厳しい躾の家庭にそだち、今では考えられないほど不自由な時代に自由を求めてそれを貫いた人。自由でいながら筋の通った、折り目正しい、いってみればシュッとしたひと。ひとりでシュッと粋に立っている。友人たちも一本筋の通った、飾り気のない、柔らかい頭をもった人たちばかり。お嬢さんなのに1番の親友が神楽坂芸者なのもわかる気がする。ここで対談している人たちの中に、流正之氏がいて、それで改めて興味を持ち、おととい美術館を訪れるきっかけになった次第。
このなかで、能役者との対談があって、そこで文化があまりにも大衆に迎合している、大衆化、素人化というのは文化のレベルダウンにつながる、と語り合う箇所があった。うん、なるほどとその時は納得したんだけど、昨日、鳥の劇場に置いてあったフリーペーパーをパラパラめくっていて、偉い人、凄い人がいる、ではなく、市民力、民度の高さ、市民が作り出すのが文化、と対談している記事があり、うーんそれも一理あるなと。
もし自分が戦前に生まれていたら、田舎に住む平民女子としての限られた文化しか享受出来なかったと思うし。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
“言葉遣いと姿勢”を重んじる家庭に育ち、“群れない、好かれない”をモットーにしている堀さんの、粋人たちとの対談集。何よりその言葉遣いの美しさに、そして直球勝負でありながら相手を慮る爽やかな気遣いに魅力を感じた。
一流の人こそいつまでもはにかむ心を持ち、相手を傷つけない言葉のセンスを持つと語る堀さんは、欲を持たず空っぽの心で相手を見ていると相手のことが素直に見えてくるといい、会話の鉄則の一つに相手の弱点に触れてはならないことをあげている。
24人の粋人との対話は楽しく、粋人それぞれに思わぬ発見がいくつもあった。
とりわけ、植藤造園代表の佐野藤右衛門氏との対話“桜の嫁入り”は非常に印象深い。アサヒビール代表取締役の樋口廣太郎氏との対談で交わされた、「あそこまで人間の気持ちのきれいな場所はない」というカトマンズ、堀さんをして「人間というものがこれだけ高貴なものだったのか」といわしめたカトマンズの人々にぜひ会ってみたいとも思う。
粋人たちの人生哲学は、いずれも一層の興味を掻き立ててくれ、これからの読書に新たな扉を開いてくれる一冊となった。 -
本人を存じ上げないが、画家。
芸術とは王侯貴族のようなものに庇護されて、芸術家が、芸術のことだけを考えてこそ生まれるもの
最近の芸術は、大衆に迎合しなくてはならないので、質が落ちている。
芸術家が抱えている覚悟やら、笑いとともに苦難を乗り越えるやら、堀さんの人柄が素晴らしく、対談相手も高齢の、しっかりと信念を持って生きてきた人たちなので、意味深い
吉行あぐり(美容家)-人生に老後なし-吉行あぐり述. 山本夏彦(作家)-ムダ話の長電話-山本夏彦述. 鈴木治雄(昭和電工名誉会長)-わが師匠は自然-鈴木治雄述. 藤村志保(女優)-さすらいの風来坊-藤村志保述. 村松友視(作家)・露木(元芸者)-響き合う会話-村松友視述 露木述. 青木玉(随筆家)-明治の躾-青木玉述. 吉行和子(女優)-自分が自分のパトロンになる-吉行和子述. 浅見真州(観世流シテ方)-感性は個に宿る-浅見真州述. 黒田杏子(俳人)-草や木や風の声-黒田杏子述. 佐野藤右衛門(植藤造園代表)-桜の嫁入り-佐野藤右衛門述. 岸惠子(女優)-それぞれの渡欧-岸惠子述. 片岡孝夫(現十五代目片岡仁左衛門 歌舞伎俳優)-日々変わっていく-片岡孝夫述. 瀬戸内寂聴(作家・僧侶)-情熱よ、どこへ行った-瀬戸内寂聴述. 流政之(彫刻家)-風雲に生きる-流政之述. 香川京子(女優)-戦争を知らない世代へ-香川京子述. 樋口廣太郎(アサヒビール代表取締役会長)-メセナとは文化活動-樋口廣太郎述. 星野佳路(星野リゾート代表取締役)・裕一(同常務取締役)-軽井沢を愛する人々-星野佳路述 星野裕一述. 花井幸子(ファッション・デザイナー)-弧高の時間-花井幸子述. 山下洋輔(ピアニスト)-稲妻のごとく-山下洋輔述. 長谷川せい子(「柳生の庄」女将)-夢の続き-長谷川せい子述. タモリ(タレント)-出たとこ勝負の潔さ-タモリ述. 坂田明(サックス奏者)-極微という宇宙-坂田明述. -
堀文子さんという日本画家。
画業70余年、90歳を超えた現在も
新しい出会いがあるのです。
堀さんと尊敬する各界一流の方々との対談集です。
対談のお相手は
吉行あぐり(美容家)
山本夏彦(作家)
青木玉(随筆家)
吉行和子(女優)
岸恵子(女優)
瀬戸内寂聴(作家・僧侶)
樋口廣太郎(アサヒビール名誉会長)
星野佳路・佑一(星野リゾート)
山下洋輔(ピアニスト)
タモリ(タレント)
坂田明(サックス奏者)
花井幸子(ファッション・デザイナー)
片岡孝夫(歌舞伎俳優)
などそうそうたる、粋な方々ばかり
すでに他界された方もいらっしゃって
堀さんいわく
「何十年かのあとこの対談を読む人は
個性も仕事も違う私たちの雑談のなかに、
時代とともに消え去ったこの対談の日の
日本と、その時代を力強く生きた人々に
注目する日がくるかもしれないのだ」
「日本の一つの時代を堂々と生きた
この稀有な方々の個性の記録」
私がこの本を手にとったきっかけは
本文写真を撮られた写真家からです。
私の顔スタンプの写真を撮って頂いた方
なので、ご本の出来上がりを心待ちに
していたのです。
私は吉行淳之介さんの対談が大好き。
軽妙で洒脱で、ユーモアがあって、やさしい
まなざしに満たされる一つの空間を垣間見れることも。
その吉行さんの素敵な対談と同じような
わくわくドキドキする感覚がよみがえって
不思議な気分で味わえました。
もし、知人の写真家の方がいなかったら
この本とご縁がなかったかもしれない。
あー、出会えた良かった、と心に残る一冊と
なりました。
この対談を読んでてびっくりしたのは、
堀さんという画家は、80歳の手前ぐらいまで
メキシコのマヤ、ペルー、ネパールのヒマラヤに
行っていて、2800メートル級の山をシェルパを
雇って、テント生活しながら縦走したそうです。
その後、大病をされ、奇跡的な回復がきっかけで
顕微鏡の中に見える極微な世界に惹かれる
ようになるのです。
坂田明さんって、ジャスのサックス奏者とばかり
思っていたら、ミジンコの研究でも知られる方で
このときの対談では、神様ってどういうデザイナー
なんでしょうか、とか動的平衡の話があり、
すごく面白いです。
それから、幸田露伴、幸田文と続く、青木玉さん。
明治のしつけを教え込まれた玉さんとの
格調高い話し方、言葉の選び方に、
こちらも背筋がピンと伸びるのです。
対談のあとに、堀さんがコメントを書かれています。
画家ならではのイメージ、映像が言葉に置き換え
られるようで、文章の素晴らしさにも心を打たれます。
私はなんの予備知識もなかったのですが
今、アマゾンでみたら、エッセイもすごく人気がある
とのこと。大変、失礼いたしました。
それからなんと、時折読み返す、
柳澤桂子さんの般若心経をわかりやすく書かれた
本のイラストが堀さんだ!自宅で絵をじっくり見よう。
格調高く、気品があって、観察眼が鋭く、
好奇心旺盛で、そして、動物や昆虫のような
感覚で人を見る、柔らかい視点の対談集です。
画集も楽しみに見たいです。 -
日本画家の堀文子先生は、ネパールに青い花を見るために出かけたり、イタリアやフランスに長期滞在するなど80才を過ぎても精力的な活躍をされている芸術家だ。
そんな堀先生には、ステキなお友達がたくさんいることを知った。
先生は対談相手に「あなた様」と声かける。そんな豊かでたおやかな風情を、ちょっぴり味わえた。対談相手と共通する生きる意欲のようなものを、先生は引き出すことに成功している。