- Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
- / ISBN・EAN: 9784861823398
作品紹介・あらすじ
PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しむ被災者の「心の叫び」と、自らも被災しながら取り組みつづけた精神科医によって、阪神大震災の被災地から届けられた感動の"心のカルテ"。本書は、サントリー学芸賞受賞作に改訂を加え、さらに新たに阪神大震災および災害精神医学に関するエッセイや論考を大幅に増補し、そして著者と関係の深かった方々の文章を収録した決定版。
感想・レビュー・書評
-
深い思いやりと優しさを感じる、災害精神医療の本。
阪神大震災で自らも被災されながら、丁寧な被災者支援をなさった安先生の視点は、どこまでも謙虚で優しくて、読みながら何度も涙ぐんでしまいました。
ソーシャルワーカーの私にとっては、
「その人の生活に沿って、その人が困っていることに即して、そのなかでメンタルヘルスを考えていくことが大事」というところに強く同意を覚えました。
読み進めていく中で、その人がその人らしく生きていくためにはどうしたらいいのか、どんな心構えで支援をしていけばよいのか、優しく教えていただいているような気持ちになりました。
災害時支援に限らず、対人援助の仕事についていらっしゃる方にはぜひ、読んでいただきたい一冊です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB05889993 -
この著者が若手で有能な精神科医で、大震災の際に心のケアで極めて重要な働きをされた記録が身に染みた。書いておられることは私自身が経験したことで、その感覚が今でも脳裏にこびりついている。それこそ心の傷として残っているのかもしれない。
阪神においては被災者を支援する人そのものが、また被災者であり、傷ついていた!心のケアということが、あの時から注目を浴びていたことを思い出す。貴重な報告を残してくれていると思う。中井久夫氏や鷲田清一氏その他精神科医の方々の著者への想いが募る巻末の文章も印象的だった。「なぜ他ならぬ私に震災が起こったのか」「なぜ私は生き残ったのか」「震災を生き延びたが、この後どう生きるのか」いずれも重い心の課題だと思う。 -
蛇足…増補は完成された書籍から余分な物が付いたような、最初の臨場感が失われました。
-
本書を読み終わってまず思ったのは、後半に掲載されている本書の作者安克昌さんへの多くの人々の投稿での賛辞です。若くして亡くなられた作者に多くの人からこれ程の文書を寄せられる、作者安医師の死は本当に残念なことであり、存命であればもっと多くの人が心の傷を癒せたことは間違いないと思う。東北大震災の11年前にこの世を去られている。彼は生きていれば、東北大震災後どうされたであろう。存命であれば、多くの経験を踏まえ、被災者の心の傷を数多く癒したと思うし、多くの人を育てたと思う。育てた人はさらに多くの人の心の傷を癒したと思う。本当に残念だ。
-
震災とPTSD。
心の傷のありかたを知り受け止め方を知る。
当時の生々しさが記録されている。 -
根源的な優しさと知性に基づいた名著の復刊に心から感謝したい。的確なアドバイス、鋭い分析。著者は単なる臨床家ではない。考える人、学ぶ人、行動の人、現場から離れなかった人。こんな貴重な人が早く亡くなるなんて。
-
著者の人柄が伝わってくる。寄せられた中井久夫の文に涙してしまう。
-
阪神大震災時に自身も被災し、医者として忙しく働くかたわらで、現場の医療事情などを著者は一年間新聞のコラムとして連載し続け、1996年にそれが一冊の本となった。本書は、出版後に発表された文章を追加した、増補改訂版である。
著者の震災時の仕事は、「稀有な一次的予防精神医学の実践であった」と、師である中井久夫に一目置かれる。しかし著者はその評価を超えて、人工的な都市がいかに脆く人間がいかに傷つきやすいか、ということに心を寄せ、日本の社会は今後、人間の傷つきやすさをどう受け入れていくのだろうと懸念する。
震災から5年後、39歳という若さで著者は病に斃れる。死の直前まで患者を治療し、産まれてくる子供の名前を考えていたという心優しき著者が遺した本書は、何度でも繰り返し読まれるべき名著だ。