内田裕也 俺は最低な奴さ

著者 :
  • 白夜書房
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784861915253

作品紹介・あらすじ

内田裕也とは何なのか!?フォトセッション/内田裕也×若木信吾×井上嗣也。

感想・レビュー・書評

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  • Rock'n'Roll!!!!!!! 最高!

    <blockquote>だいたい俺、芸能界の十分の一は殴ってるよね。(P.85)</blockquote>

  •  内田と親しい近田春夫がインタビュアーをつとめた、語り下ろしの自叙伝である。
     内容は、インタビューのテープ起こしそのまんま。裕也さんのロケンローな語り口が生の状態で文章化されている。

     井上嗣也のアート・ディレクションによる約60ページに及ぶグラビア・ページがあり、そこではなんと、内田裕也がオールヌードになっている(!)。まさに「誰得」。「うわ~、なんかヤバイもん見ちゃったなあ」という気持ちになる。

     グラビア・ページはいただけなかったが、内容はなかなか面白く、400ページ超を一気に読ませる。ロカビリー時代から1970年代までの日本のロック・シーンの舞台裏が垣間見えるし、内田が生きてきたロック界・映画界・芸能界の興味深いエピソード、危ない裏話も満載である。
     たとえば――。

     大島渚の『戦場のメリークリスマス』で坂本龍一が演じた役は、当初沢田研二にオファーがあったものだった。そこまではわりと知られた話だが、本書には沢田がオファーをことわった経緯が詳細に語られており(内田はその場に同席)、それがじつに面白い。
     ちなみに、大島は沢田のかわりを探すため、稲越功一の写真集『男の肖像』を見て、そこに登場する男たちの中から坂本と桑名正博を候補に選んだのだとか。

     内田が主演した『水のないプール』で中村れい子が演じたヒロインは、当時まだ無名だった高畑淳子が演じるはずだった(高畑が脱ぐのを拒んで降板したという)そうだ。
     内田は高畑のドタキャンをいまだ根に持っており、「会ったら蹴飛ばしてやろうと思ってんだけど、なかなか会わねぇんだよね」と言っている(笑)。

     内田も近田春夫も余分な説明抜きでどんどん話を進めていくので、本文だけ読んでいると読者は置いてけぼりになる。だが、音楽評論家の中村俊夫さん(日本のロックの生き字引みたいな方)が全編に詳細な注釈を付しており、それを併せて読むとよく理解できる(※)。

     読みながら、「この人、ロックンローラーというよりただのちんぴらヤクザじゃないか」と粗暴ぶりにうんざりする部分もある。なにしろ、「だいたい俺、芸能界の十分の一は殴ってるよね」だそうだから(笑)。現実の内田裕也とはけっしてお近づきになりたくない。『俺は最低な奴さ』というタイトルに、「まったくだ」と納得してしまうのである。

     だが、時代の先を読む鋭敏なセンスとプロデューサーとしての嗅覚は、やはりすごいと思う。
     内田がプロデュースしたフラワー・トラヴェリン・バンドは日本のロックの金字塔だし、『水のないプール』『十階のモスキート』『コミック雑誌なんかいらない』あたりまでの映画で見せたセンスは、ロッカーの片手間仕事の枠を超えたものだった。
     ハドソン川をスーツ姿で泳いだパルコのCM(内田自身のアイデアによるもの)も、内田が本書で「アートとしてクオリティすごい高いと思うよ」と自画自賛するとおり、優れた表現だった。

     内田自身による大ヒット曲は一曲もないが、それでもやはり、彼を抜きにして日本のロック史、サブカル史は語れないのである。少なくとも1960年代から80年代については……。

     とくに印象に残ったくだりを、一つ引用する。

    《沢田(研二)の言ったことで、いまもすごく覚えているのは、「裕也さん、アバンギャルドなことをメジャーでやるのがアーティストなんだってよく言ってましたよね」って。「あ、そうかよ」って言ったんだけどね。アバンギャルドなものに対する先鋭性っていうかな、それがなくなったらなあ、はっきり言ってタコだよ。》

     映画『コミック雑誌なんかいらない』(内田は企画・脚本・主演)やハドソン川を泳ぐCMは、まさに「アバンギャルドなことをメジャーでやる」ロックンロール・アーティストの真骨頂であった。

    ※重箱の隅をつつくようだが、本書の注釈にも、例の「角ゆり子(内田裕也主演の『嗚呼!おんなたち 猥歌』に出演)は殺された」というデマが事実であるかのように書かれていた。
     調べてみると、このデマの発生源は、『ラブ・ジェネレーション 1966-1979』(2000年/音楽之友社)というムックの『二十歳の原点』のサントラ(四人囃子)のアルバム評であるようだ。その中に、「後に角ゆり子は僕と同じ区のアパートで殺害され、それを元恋人だった僕の高校の国語教師から聞かされる、というオマケがついた忘れられない一枚」という一節があったのだ。
     そのアルバム評を書いたのは和久井某という人。おそらく1975年に起きた菊容子(『好き!すき!!魔女先生』に主演した女優)殺害事件と混同し、それをそのまま書いてしまったのだろう(確認しろや)。角ゆり子と菊容子――ちょっと似ているし。

  • そう思ってないよ。

  • オールヌードとなった写真には驚いたが、中身は約400ページを飽きることなく読ませる素晴らしい内容。
    内田裕也氏を慕う近田春夫氏の労作にしてインタビュアーとしての代表作であることは間違いない。
    自らの出生から現在に至るまでの道のりをほぼ網羅して語った内容となっている。関西出身というのが意外。
    私自身は内田氏に対して大きな興味を持っていた人間ではなかったのだが、このインタビューは非常に楽しく読めた。
    フラワー・トラベリング・バンド、「戦場のメリークリスマス」などなど愉快なエピソードが多数。
    この本を読み、内田氏語るところのテーマである“ロックンロール”と“リベンジ”がぶれていなかったことを賞賛の念を抱きました。
    (笑) の表記がないのもいいですね。

  • 裕也氏が好きな人にとっては、一気読みできるスピーディーなロケンロールな内容で、思わずくすっとしてしまうナイスな読み物になっています。
    興味のない人にとっては、3,000円をドブに捨てたようなものとなります。
    読者を選ぶバクチ的な本。

  • 2010.02.07 日本経済新聞に掲載されました。

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著者プロフィール

内田裕也(うちだ ゆうや)
1939年11月17日 - 2019年3月17日
兵庫県西宮市生まれミュージシャン、俳優。エルヴィス・プレスリーに憧れて高校をドロップアウト。大阪府立三国丘高等学校卒業後、日本大学法学部の夜学中退。音楽活動などを経て、1970年代後半から俳優、映画監督など様々なジャンルで活動した。
書籍代表作に『俺はロッキンローラー』、『内田裕也 俺は最低な奴さ』、『ありがとうございます』がある。

内田裕也の作品

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