カラー版 空海と密教美術 (カラー新書y)

  • 洋泉社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862487513

作品紹介・あらすじ

命を賭して密教を唐から持ち帰り、帰国後、日本の仏教をリードしていった空海。空海ディレクションのもとにつくられた東寺講堂の立体曼荼羅は、空海の目指した密教空間として現在も唯一無二の存在感を示している。一方、空海の伝説は各地に伝わるが、実際はどうだったのか?豊富な密教美術の紹介や読み解き方を入り口として、空海の実像、その思想までを理解する。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルと内容とのギャップがある。前書きにも断っておられるが、空海の密教思想を分かりやすく解説することが本書の中核だ。
    多様で雑多な密教美術を紹介・解説してくれる入門書が読みたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      myjstyleさん
      網羅的な入門書は難しい気がする。図書館で図録系を探せば何かあるかな?
      myjstyleさん
      網羅的な入門書は難しい気がする。図書館で図録系を探せば何かあるかな?
      2021/05/03
    • myjstyleさん
      猫丸さん おはようございます。

      密教は意味わからなくて、ただ今、棚上げ中です。(^。^)

      偏見と浅薄な理解ですが、密教は、教義や...
      猫丸さん おはようございます。

      密教は意味わからなくて、ただ今、棚上げ中です。(^。^)

      偏見と浅薄な理解ですが、密教は、教義や修行によって、個を極め己を解放しようという道を離れ、ひたすら貴顕に仕え現世利益を追求します。精緻な密教図象は、観念である仏教世界をヴィジュアル化し、直接訴える感覚を確保する手段ではないかと思っています。だとすると、今のところ興味がないのです。
      2021/05/03
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      myjstyleさん
      それに近いコトを丸谷才一だったかの著作で読んだような、、、
      まぁ宗教の大半が人心掌握の手段ですから、我々には判り難い様...
      myjstyleさん
      それに近いコトを丸谷才一だったかの著作で読んだような、、、
      まぁ宗教の大半が人心掌握の手段ですから、我々には判り難い様になっています(偏見)。

      猫的には、図像学と呪術について知りたいので、ちょっぴり齧ってます。。。
      2021/05/03
  • よくある、仏教美術品の紹介と解説本かと思いましたが、ここまでしっかりと空海と密教について解説された本を読んだのは初めて。
    美術品を全てカラー写真で掲載している点が嬉しいですし、空海という人物について、全体的な理解ができるようになっています。

    空海ゆかりの寺院、神護寺や金剛峯寺の所蔵品の数々。保存状態が良く、国宝や重文が多いことに驚きます。
    鎌倉期の運慶の「八大童子立像」をカラーで見られたのは嬉しかったです。色が消えずに鮮やかなままで、生き生きとして写実的。
    8人の体型も少しずつ違い、それぞれの個性がはっきりと出ていました。
    快慶の「孔雀明王像」は、その精緻さとバランスの良さが素晴らしいです。
    愛染明王と不動明王は、もともと密教の仏なんだそうです。

    東寺にある、空海の師恵果が作らせた密教法具は、国宝ながら、今でも行事のときに使用されているとのことです。
    宝物館に厳重に仕舞われているわけではないんですね。

    密教については、長いこと、生半可に触れてはいけない神秘的な宗教のような気がしていましたが、特に秘密の宗教というわけではないのだそうです。
    小乗仏教→大乗仏教→密教という流れを汲んでおり、密教は仏教の新しい形態なのだそうです。

    また、仏教において、煩悩とは撲滅すべきものだとされていますが、密教では「煩悩即菩提」という考えがあると知って、驚きました。
    迷っているからこそ悟りを得られ、自心の仏に気づくと説いているのだそうです。
    日々、俗世の楽しさと煩悩にまみれて生きている身にとって、なんだか密教が、ぐっと身近なものに思えてきました。

    天台宗の最澄との不仲は、空海が、密教とは人と人との間で教わるべきものとしているのに対し、最澄が経典から学ぶべきものと捉えていた、考え方の相違にあるとのことです。
    なるほど。理論と実践という点で折り合えなかったのですね。

    恵果と知り合い、一番弟子として密教を受法したのが三カ月、その三か月後に恵果は亡くなったという、たった半年のドラマティックな師弟関係。
    すぐに密教を日本に広めようとしたものの、もともと唐で20年間学ぶという命の元に遣唐使に選ばれたという空海だったため、すぐの帰国は予定になく、遣唐使船もそうそう来るわけではないため、実行までが大変だったようです。

    それにしても、平安時代に20年間唐にいるとは、ほとんど異国の地で一生を費やす覚悟だったのでしょう。
    なんとか3年後に帰国を果たした空海。
    それでも当初の約束をたがえたことで、3年間京都には入れなかったそうです。当時の規律は厳格だったんですね。
    ちなみに空海と一緒に唐に渡った最澄は、はじめから短期予定だったので、先に帰国したそうです。

    また、弘法大師への信仰は、真言宗や密教にかかわらず、宗派を問わないものなのだそうです。
    それで、四国八十八か所巡りに繰り出すお遍路さんたちは、あんなに大勢いるのですね。

    空海密教の究極は、「本来の自分に気付き、仏の真似をして仏になりきる」ということだそうで、解脱するには相当人生をかけた修業が必要ですが、模倣でよいなら、気持ち一つで行いやすい、なんとも人にやさしい宗教なんだなと、目からうろこが落ちる思いがしました。

    以前、五木寛之の『親鸞』を読みました。
    小説としての脚色はあったものの、かなりわかりやすく、親鸞本人に親しみが持てるようになったので、同じように空海の一生が小説になっているものがあったら、ぜひ読んでみたいと思います。
    (そういえばかつて、北大路欣也主演の映画がありましたね。DVDを探してみようかな。)

  • タイトルからも分かるように空海と密教美術展を意識した内容になっている(ただし、本文には展覧会の話は出てこない)。前半は「空海と密教美術展」に出ている品を中心としてカラー図版と解説。中盤以降は空海の人物像、思想について考えている。文章は読みやすい。展覧会の予習としても良いと思う。

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著者プロフィール

1949年、愛媛県生まれ。1977年、高野山大学大学院博士課程単位取得退学。その後2年間、東京大学史料編纂所に内地留学。1981年から1997年、『定本弘法大師全集』の編纂に従事。2002年から2012年、文化庁文化審議会専門委員(文化財分科会)。2013年7月設立の「空海学会」初代会長に就任。現在、高野山大学名誉教授。空海研究所長。博士(密教学)。専門は、日本密教史、特に空海伝・初期真言宗教団成立史。第32回日本印度学仏教学賞、密教学術奨励賞(1992・2007年の二回)受賞。著書に『弘法大師空海の研究』『空海伝の研究 後半生の軌跡と思想』(吉川弘文館)、『空海はいかにして空海となったか』(KADOKAWA)、『弘法大師 伝承と史実 ―絵伝を読み解く―』(朱鷺書房)、『「弘法大師」の誕生 大師号下賜と入定留身信仰』(春秋社)など、共著に『あなただけの弘法大師 空海』(小学館)、『空海と密教美術』(洋泉社)、『遣唐使船の時代―時空を駆けた超人たち―』(KADOKAWA)、『般若心経秘鍵への招待』(法藏館)など多数。

「2023年 『天皇と般若心経』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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