愛と別れ 夫婦短歌

  • 短歌研究社
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  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862726131

感想・レビュー・書評

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  • 治りたい両手で妻を抱きしめたい髪の匂いを留めていたい 
      内田康夫

     作者は、「浅見光彦シリーズ」で知られる、旅情ミステリー作家。長年のファンに惜しまれつつ、2018年に死去。享年84であった。

     15年夏、新作「孤道」を連載中に脳梗塞で入院。連載を休み、リハビリを重ねる中で、妻との「夫婦短歌」を発表することとなった。

     すでに内田には、「歌枕かるいざわ」(02年)という歌集があるが、詩人でエッセイストの妻・早坂真紀は、短歌創作は初めて。けれども、五感を重視し、等身大の生活を歌う早坂の作風は印象に残る。
     
     お湯のみの温もり両手で抱きしめてその温もりで夫【つま】の頬抱く
        早坂真紀

     内田は、手の動きや言語感覚がなかなか戻らないことの不安を、率直に吐露する。掲出歌の「治りたい」も肉声そのものだ。とはいえ、笑いのエッセンスを忘れないのは作家精神ゆえだろうか。こんな歌も。

     ぼくはまだ生きているのに心電図【死んでんず】折れ線グラフの今は谷底
    内田康夫

     妻側から見ると、3年半の介護生活には当然、喜怒哀楽いずれもがあった。そのうえで、半世紀近くを共に歩み、さまざまな感情共有を経て、お互いの心こそ「ふるさと」だと発見したようである。

      わたしにはふるさとがないどこにもないあなたの胸がいつもふるさと
              早坂真紀
    (2019年7月21日掲載)

  • 「夫婦短歌」というキーワードに惹かれ、読み始めた。
    有名な作家さんだとは知らなかったが、病気で亡くなられる直前にリハビリとして書くことになったらしい。
    そういった背景があるからか、短歌に力強いメッセージ性を感じた。
    切なくて、愛おしくて、思わず涙目になってしまった。
    夫婦で短歌を詠むのって良いなぁ。

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