世界一大きな問題のシンプルな解き方――私が貧困解決の現場で学んだこと

制作 : 東方 雅美 
  • 英治出版
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レビュー : 28
  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862761064

作品紹介・あらすじ

15カ国、2000万人の貧困脱却を可能にした単純かつ大胆な解決策とは?「残りの90%の人たちのためのデザイン」を提唱し、スタンフォード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)など最先端の研究者から絶大な支持を集める社会起業家が贈る、本当に貧困を解決したい人たちへのメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • すばらしい本なので読んでください
    問題解決、ビジネス・起業のヒント、1日1ドル以下で暮らす人たちの本当の姿などが詰まっています
    先進国に住んでいると裕福な10%の人々にだけ目を向けがちですが、残りの90%の人たちにどういう価値を提供出来るか考えたいです

  • 掛け値なしに面白い1冊。 1日1ドル未満で生活する、8億人の貧しい人々。彼らを貧困から救い出すための現実的な解法を、著者のポール・ポラック氏は貧しい人々が自らの労働でいかにより多くの収入を得られるかに焦点を絞っている。25年にわたって現場の貧困層に話を聞き、彼らの自立に本当に役立つ道具を開発・販売・指導してきた実例をあげて、徹底してビジネスの観点から語っている。貧しい人々は金がなく、農地も1エーカーの小規模であるといった状況のため、先進国での高価格・最先端機器が役に立たないといった実情は目からウロコ。

  • 世界中の最も貧しい層の生活を改善するために何が必要か、という問いに対し、著者は自身の知識と経験を踏まえ、「貧困層が買える値段のサービスを提供する」ことが重要だと説く。

    貧しい人々にも自らに投資できる力があることを忘れてはならず、自らの力で収入を高め、生活を高められるという経験を積ませることが彼らの糧となり、さらに生活をよくするための投資を生んでいく、というのが著者の主張。それを著者が実際に出会い、関わっていたネパールの寒村の男性の事例を示すことで、夢物語ではないという説得力がある。このネパールの男性の姿を追っていくことで、ビジネス書でありながら物語性もあり、サクサク読み進められる良い構成になっている。

    著者は最初の章で、「現実的な解を導く12のステップ」を紹介しているが、うち10個ぐらいはNGOや国際開発協力の世界では結構、当たり前の話。違うのが「目に見えて良い影響をもたらし、大規模化できる手法を探す」というものと、「具体的な費用と価格目標を決める」というもの。前者は即ち事業を大きく拡大することを最初から考えるということであり(これは持続発展性とはまた少し違う)、後者は明らかに実利的、ビジネス的な視点。この2点は、資金的な制限からプロジェクトを想定したり、そもそも現地の人から収益を得ることを考えなかったりするNGOや国連には全くない視点。

    この2つの視点が、一般的なNGOや国連による「国際協力活動」と、著者の理論による支援との違いを生んでいる。著者は「貧しい人々が収入を増やすことに力を貸すことが重要であり、そのためには低コストで強力な解決方法が求められる。収入が増えれば、貧困の原因のうち必要と思うものを自ら選択し、自ら解決できるようになる」という考え方を持っている。

    「とにかく収入を増やす手助けをするから、そのあとの自分たちの生活向上のために必要なもの(医療、教育、生産性の高い農業手法などなど)は自分たちで考えて選び、サービスを買いなさい」という考え方は、「貧しいために手に入らないサービス(医療、教育、生産性の高い農業手法など)を提供します」という国際機関の従来の支援とはある意味で逆のアプローチ。要は、貧困をスタート地点とするか、不健康や未就学などをスタート地点とするか、その違い。

    でも、サービスや支援を提供する側がしっかり利益を得つつ、貧困を解決するというのは一筋縄ではいかない。その点が、著者の理論を面白く、魅力的に見せている一因だろう。

    ちなみに原題は『Out of Poverty : What works when Traditional Approaches Fail』で、『貧困からの脱出:伝統的な手法が失敗した時、どんな活動が実を結ぶか』といったところか。ここで言う「伝統的な手法」とは、言うまでもなく従来、国際機関や先進国政府がやってきた「必要なモノやヒトやカネを提供します」という支援のやり方。
    「失敗」という語をタイトルで使ってるあたり、原題はなかなか攻撃的。邦題も、この本に関してはそれほど大きく本の内容を損なってるわけでもなく、なかなか巧いタイトルを生み出してると思う。

    原著の出版は2008年。著者が言う「伝統的な手法」による国際協力そのものが、まだ大して長い歴史を持っていないが、その中でもさらに新しい理論と言える。出版から11年経った今でも著者はご健在。彼のアプローチを継ぐ人たちがこの先20年後の国際支援の在り方をどう、変えていくかが楽しみでもある。

  • 1ドル未満で生活する貧困層が豊かになるのに必要なのは彼らが稼げる仕組みとその為に必要なサービスを販売すること。付加価値が無意味に高くても意味はなくて、求めるレベルの付加価値があり、幅広く手に入れやすい値段であることが大切。
    今2017年だと何が変わって、何が変わっていないのかは気になった。

  • # 12のステップ
    - 問題が起きている場所に行く
    - 問題を抱えている人と話,その話に耳を傾ける
    - 個々に特有の状況について,可能な限りすべてを知る
    - 大きく考え,大きく行動する
    - 子供のように考える
    - 当たり前のことを見て,実行する
    - すでに誰かがやっているかどうか調べる(やっていればする必要はない)
    - 目に見えて良い影響をもたらし大規模化できる手法を探る(少なくとも100万人が活用でき,大きな生活改善につながる手法)
    - 具体的な費用と価格目標を決める
    - 現実的な3カ年計画に基づいて実行する
    - 顧客から学び続ける
    - 他の人の考えに流されず,前向きでいる

    # 安いことは素晴らしい
    - 道具の重量を厳しくダイエットさせる
    - 余分なものはつけない
    - 時代をさかのぼってデザインすることで未来へ進む
    - 最先端の材料で昔のものに色を添える
    - レゴブロックのように無限に拡張できるものにする

  • テコになるのはどこなのか。
    どこのボタンを押せばいいのか。

    つまりそういうことかな。納得。
    Design for other 90%のファンとしては、感動した。

    2017年再読
    馬一頭の価格と運べる荷物量、これを単純に貧困層が購入できる価格帯まで運べる荷物量も比例してさげさせるという考え方、基本的には購買力がカギとなるという事だと思う。また貧困をなくすために多面的なサポートが必要とのトレンドに対し、収入の増加があれば自分達が自然とその他の項目に対してはお金を投じていくという考え方も興味深い。スラム街における陶磁器作りを担う人たちを、世界有数の博物館等で売られているレプリカ作成に回せないかというのも興味深い。

    IDEは農民たちに可能性を信じてもらう所から始める。砂漠に水をやるような作業のこともおおく、行動を起こす事が出来る人はごく一部である。だが一人生まれれれば、それをロールモデルに多くの人が変化を信じるようになるのだ。

  • 他の人のレビューが良かったので読んでみたが、期待通りでした。

    貧困問題の解決について具体的で明確に書かれていて素晴らしいと思った。私も何か実践してみたいと思わされた。ビジネスとしても成功することが必要というのがミレニアムの目標とは違って良いと思う。

  • 農業を使った貧困からの脱却。安かろう悪かろうで十分な市場が大きいことが分かりました。

  • まだ半分しか読んでないけど、今まで複雑でcatch22だらけだった問題が本当にシンプルに解決できる(かもしれない)方法が沢山紹介されている。高校生の時にこの本を読んでいたらデザインを進路に選んでいたかもなぁ。デザインに関わる人は是非読んでもらいたい。もちろんこの不平等で不条理な世の中で無力さを感じている人にも。生き方が横柄になっている人は必読!

  • 2011年の年の瀬に読んだ本で、大きなヒントを貰った本があったので紹介する。
    世界一大きな問題のシンプルな解き方――私が貧困解決の現場で学んだこと
    元々途上国支援、特にそこでの社会起業?に興味を持ちそういった本を読み漁っていたのだが、若干、巷間溢れる途上国支援、社会起業の本に違和感を感じていた。 チョコレートやコーヒー等の従来の大規模プランテーションからフェアトレードで買い上げるモデル。更に進んで、先進国でも単純に「かっこいい」「可愛い」ブランド価値をつけたマザーハウス(途上国でのバッグ生産)のようなモデル。どれもアイディアは面白く共感する部分は大きいのだが、どうも先進国で「買ってやる」ことを前提としていて、本当に現場の生活の延長線上にある、彼らの力を活かした支援のような気がしないなぁ、というのが漠然とした実感だった。  
    今回本書のIDE(International Development Enterprise)のモデルに感心したのは、以下の二点。
    ●途上国の生活の延長線上、現在その地域で作られている作物の生産性/付加価値をあげ、貧困のループから抜け出すことを支援している。  具体的には低コストで大きく生産性をあげることができる農具の開発/提供/技術指導。
    ●先進国のデザイナー・技術者たちに夢を与えるような「技術・デザインと貧困撲滅を結びつける」可能性を示している。
    また、本書ではクリシュナ・ババドゥ・タパ一家が1日1ドル未満の生活から2エーカーの農場で年間4800ドルを稼げるようになるケースを取り上げており、これがとても現実感に溢れエキサイティングなストーリーだった。この本に溢れる魅力をなんとか紹介してみたいと思う。  

    1.貧困支援の最先端は農村の生産性向上だった!
    この着眼点から全てが始まっているといってよい。 現在多くの貧困層が生活の基盤としているのは小規模農場だった。国際食料研究所(IFPRI)の調査官であるオクサナ・ナガエッツが小規模農場に関する2005年の概要報告書をまとめた際に発見した事実は注目すべきものだった。 世界に存在する5億2500万の農場のうち、約85%にあたる4億4500万の農場は5エーカー(2ヘクタール)未満だったのだ。 また、ポール・ポラックは現場で多くの農民と話す中で以下のことに気がつく。 80歳近い彼の素直な好奇心が掴みとったポイントは以下

    <貧しい人たちから学んだ4つのポイント>
    ・貧しい人たちが貧困状態にある最大の理由は、十分なお金を持っていない、ということだ。
    ・世界で極度に貧しい人たちのほとんどは、1エーカーの農場から収入を得ている。
    ・高付加価値で労働集約的な作物を育てる方法がわかれば、貧しい農民たちはもっとお金を稼げる。たとえばシーズンオフの果物や野菜を育てるのである。
    ・そのためには、非常に安価な灌漑装置、良い種子と肥料を手に入れる必要がある。利益の出る価格で作物を売れる市場にもアクセスできなければならない。
    地球上に生きる人間は誰でも水に対するアクセスを持っており(そうでなければ数日で死んでしまう)、小規模農場はバケツで水を汲み上げて散布するといった方法で灌漑を行なっている。 ポール・ポラックが取ったアプローチは、この世界人口の1/3の生活を支える農場(1つの農場に4人家族がいるとして)の生産性を上げることだった。IDEのアプローチの主要技術はドリップ灌漑である。

    ※IDEのドリップ灌漑のプレゼンテーションをここでみることができる。 ロスの大きい従来の灌漑技術から、非常に低コスト(1年間に元が取れる技術だ)の導入により需給が逼迫し野菜の価格が高くなる乾季にも作物を育てることができ、年間を通じて安定した現金収入を得ることが出来る。   またIDEは無償での設備供与はしない、Business Relationであるというのも大きな特徴だ。寄付により掘られた井戸や学校が誰も管理する人間がいないため打ち捨てられるといったケースを聞いたことはないだろうか。無償で与えられたものは自ら管理するインセンティブが生まれづらい、一方で本当に必要だと認知された技術で、それが手の届く価格設定であれば、成長への梯子の序段に手をかけることができるのだ。そして一旦そのサイクルに入ってしまえば無限にその成長を拡大していける。本書ではクリシュナ・ババドゥ・タパという農夫の一家のケースを切り取っている。ポール・ポラックはババドゥ一家が1日1ドル未満の生活から2エーカーの農場で年間4800ドルを稼げるようになるまでのケースは決して稀なる成功体験ではないという。また、IDEは専任のスタッフを派遣し技術指導も行なっている。その内容はドリップ灌漑だけでなく肥料の作り方や低価格の害虫駆除方法にも及ぶ。  

    2.学ぶべき問題解決手法
    ポール・ポラックの問題解決手法について、12のステップを提案しており、これはすべて非常に重要だと考えるが、特に重要と思う点を挙げてみる。

    12のステップ
    ①問題を抱えている人と話し、その話に耳を傾ける
    途上国開発に於いて陥りがちな罠として自らのアプローチを押し付けてしまうことがあるが、そこにある課題を共に認識し、自分が差し出せるものを提案し、相手の決断により取らせるという支援のありかた。
    ②具体的な費用と価格目標を決める
    理念や信念がどれだけ立派でもその効果が出なければ開発支援にならない。コストを数字に落としこみ具体的なViabilityを測らなければならない。
    ③現実的な三カ年計画に基づいて実行する
    できることを確実なステップに基づいて実行することが重要である。ビル&メリンダ財団は「長期ビジョンは、3000万世帯の年間収入を1年間に500ドルずつ増やす」というIDEのアイディアを気に入った、より形になってみえる2ヵ年計画を求めたという。最終的にビル&メリンダ財団は14百万ドルの支援を約束する。  

    3.デザインの可能性
    ポール・ポラックは「D-Rev:残りの90%の人たちのためのデザイン」という組織を2007年に立ち上げた。現在のデザイナーは世界の富の10%を持つ先進国の人々のために働いているという。勿論それが彼らが「喰う」ための道なのだが、残りの90%を相手に仕事をすることへの可能性の大きさを、ポール・ポラック率いるIDEはその活動で示している。MITでも適正技術と開発と普及を目指しD-Labが設立され学生たちの注目を集めている。技術者とデザイナーを勇気づける動きだと思う。 その他にも例えばTABLE FOR TWOでもそういった途上国と先進国が共に生きるモデルが通底しており非常に共感する。やはりキリスト教的な「可哀想」だけでする援助や寄付だけでは世界は変えられないのではないか。※ちなみにTFTに注文をつけるとしたら支援先の情報発信充実。オペレーションを行なっている提携団体の姿がみえづらい。  

    最後に。幾多ある途上国開発の本を読んできたが、ここまでクリアな戦略性を持ち、具体的な成果を残している団体は稀だと思う。 他地域にも横展開できる汎用性と無限の拡張性を備えている。非常に夢が広がる本だった。

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