私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む

制作 : 駒崎 弘樹 
  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862762467

感想・レビュー・書評

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  • 前提として、自分の子育てというより、社会の中で質の高い教育にアクセスしづらい子どもたちに対して、大人は何をすべきかということを説いた一冊。

    非認知能力=《粘り強さ、誠実さ、自制心、楽観主義といった気質》は、子供をとりまく環境の産物だ。

    そして一番の問題となる環境要因は人間関係、とくに子どもたちがストレスを受けているときにどう対応するかであり、人生の最初の3年間の環境がとりわけ大切とされる。

    『学習のための積み木』という概念も興味深く、非認知能力は、土台となる自己認識能力や人間関係をつくる能力がないと育たないというものだった。

    そして本書の一番の学びは、小学校入学くらいの年からは、非認知能力の育成において内発的動機付け(内面的な楽しみや意義を動機として決断をくだすこと)が鍵を握るというもの。
    そのために必要な要素は以下の三つとなる。
    有能感→自分の限界を少し越えた成功体験
    自律性→自分が選び、自分の意思で取り組む
    関係性→好感をもたれ、価値を認められ、尊重されていると感じる

    こうした、人間関係という環境の枠組みのなかで人間の内面を育てることで、学習を中心とした様々なことに向かっていける。
    当たり前といっては当たり前ととられるのかもしれないが、こうしたことを体系的に実証している点が素晴らしい一冊だったと思う。

  • 貧困により教育格差が開いている。けど、6歳以下の子どもをもつ低所得家庭に、しっかり介入して非認知教育すれば、効果的な対処法になる、ということが、ざっくり書いてました。

    とても参考になったのは、モチベーションの話。貧困関係なく、また、子どもと大人関係なく、モチベーションを高める施策は、見返りを顧みない生産性向上が期待でき、そして、自分も他人も幸せにできる、という気がした。
    お金でのモチベーションはダメやね。

    そして、こういう施策が最も効果的なのが、低所得者層で、社会的コストと換算して、持続的な施策を実施できたらいいな〜。換算難しそうやし、まだまだ研究段階なんやろうけど、こういうのは民間から小さく実績つまないと!

  • いわゆる学力ではなく、数年前にグッと流行ったやり抜く力(グリッド)や自制心、誠実さの方が学校を卒業した後の人生に大きく影響を与える、という視座の元に整理されていく「非認知スキル」。

    「非認知スキルが大切なのはわかりました、ではどうすればいいんですか?」という質問が必ず浮上してくると筆者も述べているが、そこだけをサクッと知りたいという方にはおススメできない一冊と言わなければいけないかもしれません。

    ただ、そもそもそういうテクニック的な介入で非認知スキルを上げようというアイデアはどうなんだ?という観点をお持ちの方にはぜひ手に取っていただきたい一冊です。

    どうやって非認知スキルを計測するのか、どのような習慣、そして環境が非認知スキルに影響を与えているのか、ということを様々な事例を通して解説し、さらにアメリカでどのような取り組みが行われているのかを詳説しています。

    途中少々事例連発で中だるみするような印象もありますが、学びの多い本です。

    みなさんの「やり抜く力」を使って読み切ってみてください。

    分量自体はそんなに多くないので構えずともさらっと読めると思います。

  • 生まれにより逆境にある子どもの非認知能力を上げるにはどうしたらいいかについて、様々な研究レポートを取り上げながら書かれている。
    自身の子育ての参考としたく読了したが、我が子はここで扱う逆境にある子ではないので本書で扱う学術レポートによる効果の裏付けはあまりなさそうだった。
    ただ非認知能力とは何か、環境の大切さ、モチベーションの上げ方等学びは多いので読んで損は無い本だと感じた。

  • 意外とさらっと読めたけど、凄く目新しい所見は得られず。正しい愛情や、子どもにちゃんと向き合って構ってあげることは、親はもちろん、教師や周りの大人にとって、とても大切な役割なのだと改めて認識させられた。あえて知見を得たといえば、そういうことが落ち着いた行動だけでなく、成績や将来の所得にもかかわるくらい影響あるということかな。ご褒美賞金で成績や読書は伸びないとか。

  • 私たちに何ができるのかという点では、正直具体的ではないと思う。しかし、格差社会の中で恵まれていない層にいる子どもたちを、その属性だからと諦める必要はなく、そういう目線で見て期待を持たないことこそが、子どもたちのその後の人生に影響を与えているようだということが分かった。温かいまなざしや励ましが、ここにいて良いんだという安心感や役に立っているという気持ちが、子どもを貧困や犯罪から遠ざける。できることなら政策に対して提言していければよい。仕事を通して子どもと接するのであれば、子どもへの信頼、期待を持って接すればよい。親という立場なのであれば、わが子に目線を合わせ、対話したり遊びを通して関わる時間を心がければよい。
    本書の中で、日本の算数・数学教育が良い学習指導方法としてアメリカで紹介されていることに驚いた。日本においても学習指導方法やその評価は変わってきているが、対話的な学び、問題解決的な学び、協働学習などが有効であることも本書からわかり、大人として自分が受けてきた教育と今後求められるものの違いを認識して、ファシリテーション力も磨いていきたいと思った。

  • まず自分の子供からだけど、改めて彼らの内発的動機づけにつながるような外発的動機付けができているのか、その下地として自律性、有能感、関係性が育まれているのかって常に意識しないとだわ。そして、子供を産んでから、自分の子供が幸せであるには、世界中の子供が幸せである必要があるなぁと折に触れて感じることが多い。自分が社会に何ができるかも、考えていくステージに入ったんだなぁ。

  • とびとびで読んだので、少し曖昧ですが、教育について非常に重要なことを学びました。
    数字として表すことが難しい「非認知的能力」。特に貧困家庭の子どもには、将来のひっくり返しのためにこの資質が特に重要だと。
    日本では相対的な貧困家庭が先進国では多い。
    それは普段生活の中で非常に見えにくい。
    教員の資質や制度的な根本からの見直しが必要だと感じました。
    教育に大きな影響を与える賃金、そして教育に対する予算の分配と。
    教育者として目の前にいる子どもたちの将来を背負うにはもっともっと勉強しなければならない。

    そんな事を思わせる一冊でした。
    コンパクトで要点がまとめられ非常に読みやすい一冊でした。
    教員や行政関係の学生にもってこいの一冊かと思うます。

  • 子供たち、特にアメリカの貧困層に属する子供たちに対して、非認知能力を育むための取り組みを紹介し、唯一無二の完全な方法ではないが非認知能力を高めるには何が大切なのかを説いた内容となっています。

    P88:低所得や貧困層の子供たちには、規律や賞罰を用いインセンティブででは効果がない。自分の行動が生む表面的な結果ではなく、その行動によってもらたされる内面的な楽しみや意義を動機として決断を下す。「内発的動機づけ」
    さらに人が求める三つのカギとして、「有能感」、「自律性」、「関係性(人とのつながり)」があり、これらが満たされるかぎり、人は内発的動機づけを維持できる。

    P106:非認知スキルは、子供たちが習得する(あるいは習得に失敗する)可能性のある個別の技能ではなく、子供たちが学習をしている現場の状況に大きく左右される習慣や態度、ものの見方である。

    P112:一般に自分の属性にとって苦手とされる場所にいる個人は、その属性に関する不安が引き金となって実力が発揮できない場合がある。「ステレオタイプの脅威」
    例)工学部で学ぶ女性は男性よりも能力が低い、一流大学に通うアフリカ系の学生は他の人種の学生おり劣っている

    新しい気づきとしては、これくらいがメインでしょうか(取りこぼしは多々ありますが)。明確な結論が提示されているわけではなく、内容でも触れられていますがここの例を挙げ不完全ではあるが方向性を示唆してくれています。
    ただ、個別の子供(我が子)というより教育現場(貧困層の子供たち)にフォーカスしており、格差に対する社会的な問題をどのようなアプローチができるかの考察ですので、この内容を家庭に反映するには、落とし込めるところは自分の解釈でといった感じ。冒頭に述べられている日本の子供の貧困率は18%は、正直実感する環境にいないのか、驚きました。年々格差が広がっていっているのだろうし。

  • 子ども、教育に関わる全ての人に読んでおいてもらいたい。少なくとも自分の子の通う学校教師には読んでいてもらいたい。

    スキルより非認知能力を伸ばした方が長期的には成功するというのは、年度初め生まれの成功と通ずるものがある。
    早生まれ児は遅れを取らせまいと勉強を教えられ、その間に年度初め生まれの子はスポーツしたり友達と遊んで非認知能力を育んでいる…みたいな。

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著者プロフィール

著述家。貧困と教育の関係に関わる著作多数。邦訳書に『成功する子 失敗する子』(2013)『私たちは子どもに何ができるのか』(2017、共に英治出版)『ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦』(2020、みすず書房)がある。『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』『ハーパーズ・マガジン』のエディターのかたわら、『ニューヨーカー』『アトランティック』『エスクァイア』などに寄稿。

「2020年 『ハーレム・チルドレンズ・ゾーンの挑戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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