カッシーラーのシンボル哲学: 言語・神話・科学に関する考察

著者 :
  • 知泉書館
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862851147

作品紹介・あらすじ

エルンスト・カッシーラー(1874-1945)は,既成の文化形式を破壊し,新たな文化を創造しようというワイマール文化の中で育った。カントの「理性批判」を「文化批判」へと発展させ,〈象徴的人間〉として完成する〈シンボル形式の哲学〉という独自の文化哲学を展開した。シンボル形式とは知覚した感覚印象をシンボルへと構成する精神的な力であるが,それは外界の認識手段としてのみならず,文化を生み出す精神の現象全体を意味する。
彼の主著『シンボル形式の哲学』は「言語」「神話的思考」「認識の現象学」の三つの主題によって構成される。
著者は関連する文献をも駆使して本書を読解することにより,その全体像を初めて本格的に解明する。
まず「言語」ではヘルダーやフンボルトの言語論の影響を通して,シンボルとしての言語がいかに文化的生活を可能にする根源的な力であるかを明らかにする。
「神話的思考」については,シンボル哲学全体を基礎づける自然的シンボル機能を検討し,言語と神話の起源を考察することによりシンボル形式の原始状態としての「神話的思考」の特質を考察する。
「認識の現象学」では,人間文化の最高にして最も特徴的な成果である科学および科学的思考を,それとは対照的な神話的思考と比較しつつ,シンボル形式との関連を追究することにより,新たな認識の道を切り開く。
カッシーラーの議論は多彩な分野の理論を活用し,その主題が枝や葉に覆われ見えづらくなるが,著者はそれらを適切に剪定し,簡潔な理解を可能にした。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 『シンボル形式の哲学』を中心に、カッシーラーの思想についての考察をおこなっている本です。

    著者はまず、ヘルダーとフンボルトの言語思想を概観し、彼らの思想がカッシーラーのシンボル形式に関する思想にどのように継承されているのかを明らかにします。とくにカント哲学を下敷きにすることで、それぞれの関係がわかりやすく示されているように思います。

    次に著者は、神話に関するカッシーラーの議論を読み解き、ヘルマン・ウゼナーの神話論を参照しながら、神話の起源についてのカッシーラーの考えを解明します。さらに著者は、カッシーラーのシンボル形式についての思想がもつ、認識論的および人間学的な意義を明らかにし、宗教や科学、哲学史など、幅広い思想的な関心を示すカッシーラーの哲学の根幹となっている思想について考察を展開します。

    なお巻末には、カッシーラーの思想の継承者ともいうべきランガーの思想と、カッシーラーの宗教哲学についての論考、さらにカッシーラーの論文「ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの言語哲学におけるカント的要素」の日本語訳が収められています。

全1件中 1 - 1件を表示

齊藤伸の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×