魚はどこに消えた?―崖っぷち、日本の水産業を救う

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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863101135

作品紹介・あらすじ

「えっ!知らなかった」ではすまされない、日本の水産業の大問題!!20年以上世界の水産業の現場を見てきた著者が提示する、日本の水産業復活の処方箋。

感想・レビュー・書評

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  • もともと漁業資源に恵まれているのに、世界で一人負けを続ける日本。獲れる魚は何でも獲って、回復不能なまでに獲り尽くす。さらに大きくならないうちに獲るから、市場では買い叩かれる。脂の乗りも悪いのにのべつまくなしに獲るから、美味しさを知らない若者ほど食べなくなる。日本にも資源管理制度はあるけど、漁獲制限対象の魚種は少なく、そのくせ割当量は多く、さらに水揚げが漁獲枠に近づくと枠を増やしたりする大甘運用。海外からも「拙い」と揶揄される制度なのに、失敗の原因の「乱獲」を棚に上げて、「環境の変化がなぁ」と言ったりする。

    マスコミも何年ぶりかの大漁に大喜びで囃し立て、その裏で処理が追いつかず、価値の高い魚をわざわざ価格を下げて餌として出してる実態を伝えない。漁業関係者も、行政も、消費者も、マスコミもみんなバカやってしまった。

  • 「日本は終戦直後100万人以上いた漁業就業者が2013年現在20万人を切り、かつ高齢化が進み60歳以上が5割を超える」「一方世界全体では、漁業従事者の数は増えています」「日本では水産資源の減少とそれに伴う水産業の衰退で、かつて大漁でにぎわった水揚げ地が地域社会ごと衰退してしまっているのです」(P6-)
    「世界の水産物の需要は、供給を上回るペースで伸びており、気が付いたら輸入が難しく、「魚が足りない」という事態になりかねない状況」(P16)
    「他国の輸入量は毎年伸びているので、ほとんどの主要水産物において、日本向けの比率は減少を続けている」「これに加え水揚げ量も減少している状況が続くと、近い将来」「魚が足りなくなるのです」(P24)
    「日本の水産業の衰退は」「米国が1976年に200海里漁業専管水域を制定したことによる海外からの徹底」「厳格な漁獲枠の設定なき早獲り競争の継続」「国内水揚げの減少および買負けによる輸入減のため取り扱い資源量が減少、が主な原因と考えられ、これに水産物の消費減退が加わり「売れない、獲れない、安い」という、水産業を通じて発展を続ける世界の国々と真逆の道を辿っています」(P25)
    「餌用になるような小サバや脂がのっていないサバは獲らないので、ほぼ全量が価格の高い食用に回っており、水揚げされるサバの単価は大きく異なっています」「ほぼ同じ水揚げ量にもかかわらず漁業者の収入は大きく異なり、ノルウェーの方が2倍」(P30)
    「日本の「買負け」」「メロのような魚はすっかり、米国や中国をはじめとする海外枠が主導権を握り、日本は身の部分をほとんど買えず、価格が安いカマの部分を何とか輸入している」(P32)
    「買付け競争の前提である「円高」が「円安」へと傾くと、たちまち日本への輸入水産物の供給量が激減し、「足りない」という状況になっていきます」(P33)
    「漁師もバカなもんだから、買う人が来るもんだからってなんぼもハタハタ揚げて、買い手がいねくなるほど獲ったんだ。最終的に何としたかってば、傷んでしまって、海さ投げたもんだ。いま思えば、まあ、魚がいなくなったのは罰よ。いまの言葉でいえば乱獲だったんだ」(P37)
    「資源が減り始めて、魚が小さくなり価値が低い魚が増える。卵を産める大きさに成長していない魚でも、獲り続けるため水揚げ量はさらに減少し、水揚げ金額も減少していき、そして『獲れない、売れない、安い』という最悪の状態に陥る」(P42)
    「水産業はとても裾野が広い産業です」「造船所、漁網等の漁具、製氷工場、ドック等漁業に関連した設備」「加工用の機械、資材、技術開発と加工に携わる多くの人々とその家族が生活する住居、子どもの学校」「保管のための冷蔵庫」「水産物を全国に配送する物流機能」「荷物を買い取って販売する荷受・商社機能」「金融機関」「人が多く集まれば、付随する宿泊施設、食堂など様々なビジネスが生まれます」(P42-)
    「水産資源の管理をしっかりしていれば、その地域全体が活況を呈し、コミュニティーを形成しながら町全体が発展していくのです」「水揚げ量が多かった1980年代後半までが、まさにこの形でした」「若者は仕事を求めて都会に行かなくても、地元で豊かな暮らしができていました」(P43)
    「処理能力の関係で、連日2000〜3000トン以上水揚げされたら、品質を維持しながらの処理は追いつかない」「当日処理できない分は、翌日そして翌々日へと処理が遅れていきます」「あまりにも処理量が多く、鮮度が落ちてくる場合は、処理を一気に進めなければなりません。そこで登場するのが通称「がんがん」」「魚を箱には入れずに、金属製の冷凍パンに入れて凍結」「傷が付きやすい等の問題があり、品質的に加工用にはあまり向かず、餌用となることが多い冷凍方法です」(P62)
    「脂がのった時期の中・大型のマサバを、わざわざオリンピック方式により魚の価値を下げるように水揚げしているのです」(P63)
    「日本のニシンの平均水揚げ量はたったの5000トン」「ノルウェーで同時期の年間平均水揚げは67万トン」「日本では信じられないことに、これだけ低水準の漁獲が続いているにもかかわらず、未だにニシンに対して漁獲枠の設定さえない」(P76)
    「ノルウェーは、非常に巨額な元本(=親魚)を残して高い利率で利子(=生まれてくる魚)を大きくしながら漁獲を続けています。魚を見つければ獲り続け「海から魚を借りて借金生活を続ける日本の漁業」とは、根本的に大きな違いがある」(P77)
    「当時、北海道でニシンの資源管理をきちんと行っていたら、数の子をアラスカやカナダから輸入することは、ほとんどなかったと思います」「日本人は数の子を輸入するために、両国に生産技術を教え、また非常に高い価格で競って買付けてきました」(P78-)
    「『あ、ジューシー!』そのさばはきっとノルウェー産です」「パサパサ、それは国産サバかも知れません」「旬の秋には脂がのっていて充分に美味しいのですが、問題は脂がのっていない時期にも漁獲して、流通させてしまうことです」(P86)
    「できるだけ多くの魚を一度に港に持ち帰ろうとするので、魚が獲れれば港は水産物で溢れます」「漁業者も、水揚げされた水産物を処理する冷凍加工業者も必要以上に大きな規模と人員を短期間のシーズンのために持つことになり、効率が悪く、多くの無駄とチャンスロスが発生します」(P92)
    「EUでは2010年から漁獲証明がない水産物は輸入できなくなりました」「輸入国が「過剰に漁獲されている水産物は輸入しない」という意向を明確にすることで、輸出国も経済的な影響が出ることを回避するために、結果的に乱獲は減少するのです」(P101)
    「マクドナルドは2011年、欧州39ヶ国、7000店でMSCマークの取り入れを決めました」「2013年2月には、本家の米国でも欧州の2倍に当たる1万4000を超える店舗で原料の白身魚すべてを、MSC認証を受けた水産物からの製品にすることにしたのです」(P103-)
    「欧州市場では、同じスケトウダラでも水産エコラベルが付いている米国産と、付いていないロシア産では売れ行きが決定的に異なります」(P104)
    「EUに輸出するためのHACCPの中国認定加工場は550も存在し、米国の948、カナダの638に継ぐ数です。一方日本は26の工場に留まっています」「2010年に秋ザケが北海道と東北で約16万トン水揚げされ、このうち約5万トンが中国に輸出されました。中国は輸入したサケを加工し、欧米に輸出して利益を得ています。日本では欧米への輸出許可を持っている加工場はほとんどないので、付加価値は中国で付けられています」「ただ、中国の水産加工業は、これから為替と賃金上昇という2つの要因のために、大きく変化する可能性があります」(P126)
    「1992年、カナダ政府は400年続いたマダラ漁の禁漁を決めました」「ニューファンドランド島の経済的な生命線がわずか1年で途絶え、700億ドル分の仕事がなくなったのです。3万人以上が職を失い、カナダの歴史上最大のレイオフといわれています」(P130)
    「産卵に来たニシンを、散乱群を考慮せずにソーラン節を歌いながら獲れるだけ獲り続ければ、魚がいなくなるのは当然です。ニシン来たかとカモメに問うても、あなたたちが獲り尽くしてしまったことに気づかないの? と笑われることでしょう」(P136-)
    「日本の漁業や漁協は、政府から何かしらの補助金なしでは運営が厳しいケースがほとんどでしょう」「補助金についてアイスランドの水産学者に聞いたところ、「補助金? むしろ漁業者は税金を納める方だよ!」と即答されました」「日本の漁業において、「儲かりすぎているので税金が増やされる」という場面は、果たして想像できるでしょうか?」(P139-)
    「北欧での燃料費対策の例としては、2隻だった漁船を1隻に集約したり、新しい大型船に換えたりするケースが増えています。また、漁場の情報や獲れた魚の内容をお互いに公開して、無駄に漁場を探し回らずに燃料費を削減するやり方も、既に当たり前になっています。本当に高収益を上げ続けている漁業者にとっては、漁業者間で競争する時代は随分前に終わっているのです」(P158-)
    「日本では成長時計の針が止まってしまい、魚が減り、船の老朽化と高齢化だけが進み、地方がコミュニティごと衰退していくという最悪の状態に陥っています。一方で、ノルウェーでは魚が増え、若者が水産業に従事するので高齢化は問題にもならず、水揚げが安定しているため、水産業とともに町が栄えているのです」(P184)
    「一度に水揚げがまとまれば、魚価が下がります」「「いかにたくさん獲るか」が腕の見せどころではなく、決められた数量の中で、「いかに水揚げ金額を増やすか」が腕なのです。水揚げが分散することで、鮮度面でもより良い状態が保てます。そして加工場の稼働率・稼働日数も増加します」(P187-)
    「欧米では、米国のウォルマート、英国のセインズベリーといった大手の量販店が、水産エコラベルがついていない商品を扱わない方針を出しています」(P195)
    「アフリカ市場では、日本のサバの評価は、残念ながら「最低」となっているようです」「脂肪分が少ない時期であっても、日本は魚がいれば漁獲して輸出してしまいます。これが日本のサバの価値を下げている主な理由なのです」(P198)
    「今や水産王国となったノルウェーは」「実質的に国内に鮮魚市場を持っていません。従って水揚げ後は、大半を冷凍して輸出しています。一方、日本にはノルウェーにはない、巨大な国内鮮魚市場を持っているという強みがあります」(P201)
    「水産業で成長する欧米を中心とした国々の流通業界や消費者は、適正に資源管理がされていない水産物は、店に置かない、レストランでも出さない、消費者は買わない、といった資源管理に対する姿勢が明確で、社会的関心度も高いのです」(P210)

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