組織論や人材育成の本は、世の中にたくさん出回っているが、本書は、中小企業の視点を中心に書かれていることに特徴があると思う。
人材育成が大切な理由を、特に中小企業の視点で取り上げることから始まり、機能別組織・事業部制組織などの組織論の一般的知識を平易な言葉で解説し、バーナードの組織の3要素から、「よい組織」とは何かにつなげている。
個人的に納得感が高かったのが、逆ピラミッドのチャート図。組織は、基本ピラミッド型だが、市場や顧客の情報は、ピラミッドの底辺である一般社員がキャッチする。それをミドル⇒経営者に伝達し、必要な意思決定
をするという、いわば当たり前の流れなのだが、実際の企業でどれだけ、この情報伝達が速やかに実践できているかは疑問である。
情報伝達を正確に速く行うための、管理職の役割、コミュニケーションの在り方についても丁寧に書かれており、とてもよい。教育研修の在り方、具体的事例と続く。
人事部門の方、教育担当の方、ミドルの方にお勧めかと思う。
以下、一部引用
『企業にとって環境の変化を知る手がかりとなる「市場」や「顧客」などの情報は、そこに直接接している一般社員が得ることが多いものです。この情報に基づき、企業が的確な経営判断を下す必要がある場合、一般社員が得た情報を管理職が得てどのように判断し、変革の意思を的確かつ迅速に経営者につなぐかがカギとなります。
一般社員が市場や顧客から情報を得ても、そこから管理職に伝わっていなかったり、管理職が意思決定しなかったりすると、結果的に業績が上がらないだけでなく、ひいては経営者の段階での意思決定を誤らせ、極端な場合は企業の存続にかかわる可能性もあります。』