コンビニに生まれかわってしまっても (新鋭短歌シリーズ41)

著者 :
  • 書肆侃侃房
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本棚登録 : 198
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784863853287

作品紹介・あらすじ

【心の底から歌った〈おにぎり〉がある】
明日、生きているのか。
ぎりぎりの声があなたの扉を開ける。
(加藤治郎)

[自選短歌五首]
レジ打ちの青年ユリ根に戸惑いて何かと思いましたと笑う

きみのこともっとしにたい 青空の青そのものが神さまの誤字

コンビニに生まれかわってしまってもクセ毛で俺と気づいてほしい

生きていく 求人サイトの検索に「一人でできる」とまず打ち込んで

非正規とバイトの恋は非正規がバイトのぶんを多く支払う

感想・レビュー・書評

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  • 著者の西村曜さんの経歴は、
    1990年滋賀県生まれ
    2015年短歌を始める
    2016年未来短歌会入会

    タイトルの「コンビニに生まれかわってしまっても」ってどう続くのか気になるタイトルですよね。答えはのちほど。

    靴音高らかに歩いて、明るく生きていこうと思える気がしました。
    322首の歌からキラッと光ってみえたものを選びました。


    ○サブウェイの店長として一生を終える他人がとてもいとしい

    ○きみのこともっとしにたい 青空の青そのものが神さまの誤字

    ○跳び箱を跳んだつもりが跳び箱に座ってそのまま大人になって

    ○コンビニに生まれかわってしまってもクセ毛で俺と気づいてほしい

    ○起きておきて、ホットケーキの日だよって朝の光がもう膨れてる

    ○夕立の味がするってきみは言う 異国からきたミネラルウォーター

    ○「花束」の手話がわからず思いきり抱きしめてみる たぶん合ってる

    ○レールから逸れてしまった人生も歩けば空にほら、くじらぐも

    ○友がみなえらく見えればいいのだが行方知れずの春の数人

    ○はなたば、がすべてあ音であることがうれしいと言うあなた、もあ音

    ○前かごを花で満たしたヤンキーの自転車が行く卒業の日よ

  • きみのこともっとしにたい 青空の青そのものが神さまの誤字
                      西村 曜

    誤字をしてしまった子が照れたのだろうか、当たり前の青空の青に、でもそれだって神さまの誤字なんだから、しりたいをしにたいと言ってもいいよねと俯いて独り言を言う子を想像した。

  • かんぜんにイントネーション「水死体」だったよいまの「恋したい」って がおもしろくて好き

  • ものすごく日常を切り取るのが上手い歌人。
    一首読んでみて「確かにそうかもな」となるが、普通そこを歌にしようとは思わない。日常にありふれすぎているから。
    共感性が高い歌が多いので短歌歴が浅くても良いと思える気がする。

  • これはいい。小洒落た感じじゃなくてなんていうかほぅっと心に入ってくる感じの詩集。夜に窓辺で読みたい1冊。
    だったんだだったんだと行く鈍行で俺はあなたが好きだったんだ

  • ■以下よかった短歌

    コンビニに 生まれ変わって しまっても

    サブウェイの 店長として 一生を 終える他人が とても愛しい

    百均で 迷子になっても これ全部 百円だって 思って走れ

    ポケットティッシュ 受取り礼を 言われてる この世がますます 分からなくなる

    真ん中で 割れたハートの 絵文字、おれ そんなにキレイに 壊れられない

    シマウマが 水玉模様の 世界なら 多分君とは 恋仲だった

    大会が 終われば無職 だと聞いて 水泳選手に 親しみが湧く

    上あごに 海苔を貼り付け 剥がすなど して有意義な 土曜日でした

    暴動の ニュースを消せば 暴動は 消える僕らの 手のひらの上

    TPP PPAP 帰還兵 16% PTSD

    妄想の 中であなたに 触れたけど 俺の感触 しか無かった

    行きずりの 恋がしたいと 言う人と 俺は人間 関係したい

    いつだって 些細なこと 気にしてる トトロ、お前は 傘返したか

    からあげを くん付けで呼ぶ この夜に 孤独紛らす 売り物はなし

    持ってません 温めません 付けません 要りませんいえ 泣いてません

    あなたのその エクボに小指 入れられる 中になるため まずは働く

    たいへんだ 心の支えに した棒が 心に深く 突き刺さってる

    ピクニック って想像上の 生き物だ それにあなたが いたりしていて

    痩せてゆく ことしかできぬ 石鹸を 痩せた体の くぼみに当てる

    「もしもし」と あなたが言って 俺はその 「もしも」の音に 慄いていた

    花占い アプリをめっちゃ タップして 花むしってる 君が怖いな

    かんぜんに イントネーション 「水死体」 だったよいまの 恋したいって

    smileの 綴はスミレと 覚えてた どおりでそんな ふうに微笑む

    かんたんに 死ぬと言うなと かんたんに 言うな夜中の 雨は見えない

    一輪車 逆上がり、キス 七の段 やればできたと 今でも思う

    独り身の バイト帰りの 自転車の 俺を花火が どぱぱと笑う

    はじめての 祈りのように うまく手を 組めないまんま 2人歩いた

    ひまわる、と 謎の動詞を 生み出して 君とひまわり みに行ったよな

    いつまでも 実家暮らしは アレだしと 言う俺自身 分からないアレ

    カワハギは、 皮を剥がれる 前提の 名前であれば 大嫌い、人

    不思議なの 世界がお墓で いっぱいに ならないことが。 無理をしてるの?

    今ここに あるものだけで しりとりを。 寒さ、寂しさ さまんさたばさ

    一生の お願いを言う 9歳が 13歳が 52歳が

    おとおとは かつてペニスに 付けていた あだ名を忘れて 生きる、正しい

    このむねと チャリのチェーンを 軋ませて 会いたい人に 会いにいくのだ

    「花束」の 手話がわからず 思いきり 抱きしめてみる たぶんあってる

  • 人から借りないと興味なくて読まなかっただろうな。初めての短歌集。

    思ったより楽しくよめた。好きなのは深く共感できるものと力強さを感じるもの。あとはよく思いつくなこんな表現。とか気に求めてなかった些細なことに気付かされるものが好きだった。

  • めっちゃよかった

  • 表紙が気に食わないが好き。あーそうそうそうだよねってきもちになる。SNSやコンビニから切り取られる自己、世界観は現代的で精鋭。

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著者プロフィール

1990年 滋賀県生まれ
2015年 短歌をはじめる
2016年 未来短歌会入会
Twitter:@nsmrakira

「2018年 『コンビニに生まれかわってしまっても』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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