- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784863855694
作品紹介・あらすじ
装丁:山田和寛+佐々木英子(nipponia)
栞文:瀬戸夏子、平岡直子
夏の井戸(それから彼と彼女にはしあわせな日はあまりなかった)
我妻俊樹の短歌を初めて集成する待望の第一歌集。
誌上歌集「足の踏み場、象の墓場」から現在までの歌を含んだ唯一無二の686首。
わたしがポストニューウェーブ世代でもっとも影響を受けた歌人は我妻俊樹だ。
この歌集を前にして、可能な限り無力な読者として存在してみたかった、と思った。
──────瀬戸夏子
心がないものにこそ心があると思うから、こういう歌だけを信じられる。
我妻さんの歌は、無数の蛍が放たれた小さな暗がりのようで、一首の歌がいくつもの呼吸をしている。
──────平岡直子
2023年3月下旬発売。
【収録歌より】
名刺だよ 髪の毛を切って渡すと私のことに気づいてくれる
秋が済んだら押すボタン ポケットの中で押しっぱなしの静かな神社
渦巻きは一つ一つが薔薇なのに吸い込まれるのはいちどだけ
ガムを噛む私にガムの立場からできるのは味が薄れてゆくこと
橋が川にあらわれるリズム 友達のしている恋の中の喫茶店
感想・レビュー・書評
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後悔してます。ちゃんと見てかったつもりなのに。なぜ、買ったのか。
ここには、「そんなこと、あるかいな」「それ、なんのこっちゃ」「わかりません」「何言おうとしているの」「ほんとうに、あなたは見えたのか」・・・そんな言葉が出てくる短歌ばかり。
友達にはしたくないな。一緒に飲みたくないな。
あまりにも、難解なので、同じページにある歌の、上の句と下の句を入れ替えて詠だりしたり、それのほうがより意味が通じたりして遊んでいました。それぐらい関係ないことばを偶然合わせたぐらいのつながり・・・私のあたまでは、どの歌も想像できる画像は大きくひびが入って割れていました・・・残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ワンルームいっぱいに月の裏側を暗すぎるかな敷きつめるのは」
面白かったなぁ…!
えっ、そう繋ぐ? えっ、どこから来た? という驚きでいっぱい。
上に挙げた歌などは目では自動補正で下の句をひっくり返して読めてしまうところを、追って頭が音をつけて読むとあれ逆?! となって、目と脳が分離するような感覚。
言葉の順だけでなく選び方からびっくりして、ぞわぞわして、でも何だか不思議に居心地も好かったりもする。
「若者が巻き付けられて点される電飾のコードは土中より」
「その雑誌の表紙は夏の十字路の信号がすべて赤の瞬間」
「工事中の道迂回する自転車をどこかで巻き込んだ万華鏡」
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作者の顔が見えず、性別も年齢も不詳、というのが我妻さんの歌に対する第一印象。いつか紙の本でまとめて読みたいと思っていた。わたしは期待していたのだと思う。あなたの幽霊をページの隙間に見つけたかった。何かを待ちつづけるのはいつも忘却との戦いだよね。わたしの言葉とあなたの言葉に違いがあるとしたら、記憶の網を張り巡らせようとする気持ちの強さだよ。ここにあるのは迷わないようにするための地図。それから、犬と窓と怪談と、食パンが挟まった本棚と。今あなたのポケットの中に入っているのはビスケットですか?それとも希望ですか?