- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864106016
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ピーターティールは、これまで読んだ『ゼロ・トゥ・ワン』や『イーロン・マスク 未来を創る男』の中で、完全にIT技術オタクではなく、ちょっと距離感のある書かれ方をしていて、ペイパルマフィアの中でも異色の存在だなと思っていて、特にペイパルの創業時にあのイーロンマスクと組んで更にポジション的に追い込み、その後、彼の事業に出資しているところなど、相当な曲者感を勝手に持っていたが、この本では、トランプの選挙戦での支援などで、リバタリアン的な政治信条を持っているけど軸足はもう少しビジネスよりな感じがすこし見えたかなという印象。
ピーターティールは、IT大好きなオタクではなく、ビジネスマンであり投資家、自らが起業するより才能ある起業する人を見つけて投資する事が好きな人で、その手法などが書かれているけど、投資本というほどでもなく、ちょっと中途半端な仕上がりと言っても良いのかも。本の出版がドイツが元になっているとの事で、想定読者とか感性が少し違うのかもしれないが、本人の人間臭さみたいな所まで踏み込めていない感じを受ける。
『ゼロ・トゥ・ワン』の副本という感じが強い。
-
シリコンバレーの大成功者で多くの起業家に影響を与えている奇才ピーター・ティールの伝記である。
ピーター・ティールは「ペイパル・マフィア」と呼ばれるシリコンバレーの起業家集団の中心人物としてその名をとどろかせている。ペイパルに関わった「ペイパル・マフィア」には、Tesla MotorsとSpaceXのイーロン・マスク、LinkedInのリード・ホフマン、Yelpのジェレミー・ストッペルマン とラッセル・シモンズ、YouTubeのスティーブ・チェン、チャド・ハーリー、ジョード・カリム、Yammerのデビッド・サックスなどきら星のごとく有名人がの名前が並ぶ。「マフィア」と呼ばれるほどその関係は濃いが、ティールによるとスタートアップの成功の条件として友人とも言える強い絆を持った仲間と起業することだという信念があることからもその関係性は当然なのかもしれない。また起業家としてだけでなく投資家としても、フェイスブックにかなり初期の段階で投資をしたことでも有名である。
ティールは、先の大統領選において、シリコンバレーの誰もが反対(どちらかというと嘲笑でさえあった)トランプ大統領を支持したことでも有名になった。結果は、トランプの勝利に終わり、ティールは政策顧問として大きな権力を持つこととなった。 ティールの著作『ゼロ・トゥ・ワン』で、「世界に関する命題のうち、多くの人が真でないとしているが、君が真だと考えているものは何か?」を問うべきだと書いていたが、トランプ支持はまさしくそれに当たる。『ゼロ・トゥ・ワン』は、ティールの考え、シリコンバレーの掟と、その上での起業の勧めが書かれていて、ドキリとさせられるところの多い、起業を考える人には必読の名著である。ティールは、起業とは賭けではなく、人生をコントロールする手段であるという。
本書は、ペイパルの成功物語として、イーロン・マスクの会社との合併や軋轢、イーベイが提供する決済ツールとの競争、イーベイによる買収、といった比較的知られたストーリーが語られるが、コアとなる内容はティールの経営者としての哲学である。ティールがペイパルの後に興したパランティア社にしても、多くの人が真とは思わなかったが、ティール自身は真だと考えた業態であり、競争をしないという経営哲学に沿っているものだ。いまやパランティアの社員は1500人を超えているという。ちなみに選考試験に受かった応募者は課題図書として、『倒壊する巨塔 -アルカイダと9.11への道』を読むように言われるそうだ。あの本はジョン・オニールという人物のキャラの立ち方もあって圧倒的な傑作だ。
ティールは、6歳の時にナミビアの港湾都市に一家で移住している。シリコンバレーの大立者には移民も多いが、イーロン・マスクが南アフリカで育ったことを思うと、未成年期にアフリカのような異文化環境の中で育つということは、社会の規制からいったん距離を置く眼を身に付けることにつながり、何かしら人生を自らの手でコントロールし、さらには世界もコントロールしたいと思うような大きなビジョンを持つことにつながっているのかもしれない。そういえば、リチャード・ドーキンスもアフリカで育っている。
ただし、学生時代については、後にそのことについては自らも批判的に語ることになるが、かなり保守的であったようだ。学業成績も他の普通の学生たちがそうするように、よい成績を取ることにこだわりを持っていたという。何より少し集中すればそれができたからということでもあろう。その後ニューヨークに行って法律事務所に入ったことも無駄な時間として語っている。
なお、ティールは自身の経験から、アメリカの教育制度に大きな疑問を抱いており、大学中退を条件とした奨学金を支給したりもしている。
ただし、本書で描かれる学生時代のティールの経歴や興味の中心は自分から見ると魅力的だ。特にスタンフォードで哲学を専攻し、特にルネ・ジラールに心酔しているというのは意外でもあり、魅力的でもあった。昔少し入れ込んだフランス現代思想の一人として、ジラールの『欲望の現象学』を読んだことがある。スタンダールの『赤と黒』を題材に「欲望の三角形」ー 欲望とは、他人の欲望の模倣である - を描いていて目から鱗が落ちる思いをした。ジラールを通して人間の「欲望」や「模倣」について深い洞察を、ティールも得たのだという。「私たちが何かをするのは、結局のところ他人がそうするからだ」と語り、「競争は敗者のもの」として、競争に勝つのではなく、競争しないことを目的としなくてはならないと主張する。
「ジラールはさらに、競争者は自分の本来の目標を犠牲にして、ライバルを打ち負かすことだけに夢中になってしまう傾向があると言っています。競争が激しいのは、相手の価値が高いからではありません。人間は何の意味もないものをめぐって必死に戦い、時間との闘いはさらに熾烈になるんです」フォーチューン誌のインタビューでティールは語る。「人は完全に模倣から逃れることはできません。でも細やかな神経があれば、それだけでその他大勢の人間を大きくリードできます」
彼が、最高傑作と呼んでいるジラールの『世の初めから隠されていること』はいつか読んでみたい。
また、ペイパルマフィアの一員で、後にLinkedInを創業したリード・ホフマンも哲学を勉強していて、二人が哲学科で出会ったというのも驚きだ。また、政府や軍のセキュリティ関係部門にビッグデータ解析ソリューションを提供するパランティアのCEOにスカウトしたアレックス・カープもドイツのフランクフルトでユルゲン・ハーバーマスのもとで哲学の博士号を取得している。カープは、CEOの面接で、パランティアに関して、市場や売上げではなく、世界で一番重要な会社を作ることについて語ったという。哲学とビジネスは、大きく隔たれているものと考えていたけれども、そこには意外なショートカットがあるのかもしれない。
現在、ティールはAIとアンチエイジング研究に大きな関心を寄せているという。彼はシンギュラリティを支持している。人間の健康寿命が今よりも各段に伸びることを信じている。さて、どうなることか。
----
『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4140816589
『倒壊する巨塔〈上〉―アルカイダと「9・11」への道』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4560080194
『倒壊する巨塔〈下〉―アルカイダと「9・11」への道』のレビュー
https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4560080208 -
2018年の時点までのピーターティールという人物について紹介、解説されている一冊。起業家であり、投資家、また政府の顧問や講師など様々なことをしてきたピーターティールについて理解が深まる。1番の彼のメッセージは「他人との競争の愚かさ」ではないだろうか。独占の必然性が起業にも投資にもあらわれている。スタートアップにいる人におすすめしたい。
-
途中、哲学的な話が出てきて読み進めるのに苦労した。
paypalがデジタル通貨を模索してた事は初めて知ったし、数年前から金融革命の芽は出ていたようだ。
強かで、逆張り、一点集中など学ぶべき所が多い一冊。
paypal軍団のそれぞれに興味を持てた。
特にパランティアは気になっていた企業なので今後も動向を見ていきたいと思う。 -
図書館にて借りた本。
PayPalやFacebook、Palantirなど、数々の有名企業の立ち上げに携わった投資家であり起業家でもあるピーター・ティールに関する本。
稀有な男であるティールのルーツは大学時代にある。彼は法や経営学ではなく、哲学を学んでいた。スタンフォード大学時に恩師ルネ・ジラールに出会ったことが大きかった。哲学者ジラールは模倣と競争を研究のテーマとしており、彼から起業家、投資家としての精神を形成した。具体的には、「人は完全に模倣から逃れることはできないが、細やかな神経があれば、それだけでその他大勢の人間より大きくリードできる。」というものだ。
印象に残った言葉。
「完全に打ちのめされる失敗であっても、それがどうしたと言いたい。もっとやりがいのある道はいつだって見つけられるのだから。」
「スタートアップにはぶっ飛んだビジョンが必要。そのビジョンこそ、メンバーに他とは違うぞという自覚を与え、結束を高める。」
「誰と創業するかが大事。共通の前史を持つパートナーであるのが肝要。」
ベンチャー企業の失敗5箇条。
「アイディアが時期尚早」
「アイディアが時期的に遅すぎた」
「アイディアに意味がない」
「アイディアが高くつく」
「アイディアにこれといったメリットがない」
「重要なのはとりくむのにふさわしい課題を解決する」
「毎日を自分が永遠に生きかのように生きろ。一瞬一瞬が大事。その結果は時間と共に複利効果を生む。不変の友情や長期的な関係を築くことに時間を投資することによって人生最高の利益を得ることができる。」
「ティールの見解では、すべての企業、すべての産業において進歩の余地がある。大事なのは、競争を回避し、唯一無二のビジネスを作り上げること。」
「当たり前だと思っていることを疑い、新しい視点で徹底的に考え直す。」
「投資するときは、徹底的に銘柄を絞り込め。」
「投資の際、長期的な視点を持つこと、まずは終盤戦の作戦を練ること。」
「ティールにとっての社会貢献は、別のやり方では解決できない問題に取り組んでいる人々を経済的に支援すること。」
「テクノロジーの進歩は人間の全ての問題を解決できるわけではない。ただテクノロジーの進歩なしには私たちは何一つとして問題を解決することはできない。」
ティールに関する本は2冊目だった。今回読んでみて、起業する前にもう一度確認したいと思った。これからもティールの動向には注視していきたい。 -
表紙が印象的だったので衝動買い。
決済サービスPayPalの創業者、ピーター・ティールの伝記。
名前はイーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグの書籍で登場するので知っていたが、桁外れの人物だった。
その一つに投資家として、早期からFacebookの可能性を見抜き、結果50万ドルの出資が10億ドル近い株の売却益に繋がったという。
「逆張り思考」や有名な「競争する負け犬になるな」という独占に重きを置く言葉も成果からも伝わってきた。
PayPal出身者「ペイパル・マフィア」の本は今のところハズレがない、次も関連書籍を読んでいきたい。 -
ピーター・ティールは、「ゼロ・トゥ・ワン」の著者であり、ペイパルというオンライン決済サービスの創業者。そして、ドナルド・トランプの政策アドバイザー。その戦略や思考についてまとめられた本。ザッカーバーグや、ウォーレン・バフェットの話もよくでてきた。印象的だったのは、①ペイパルの経営者としての最良の仕事は、社員全員にそれぞれ一つの仕事の責任を任せたこと。②ゲイであることを共和党全国大会の演説で話した③起業家、投資家として、新しい破壊的スタートアップがあらわれるタイミングを誰よりも熟知④たびたび寄付も行う
-
断片的なティールの記事やインタビュー記事をまとめたやつ
ポリコレが嫌いでドイツ語ペラペラで移民1世でゲイで信頼しあえる仲間は学生時代の友人たち。