- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784864107525
作品紹介・あらすじ
累計28.5万部突破の人気シリーズはついに、バブル、震災に揺れた激動の時代『平成』へ突入!!
日銀の政策ミスが日本経済を繰り返し破壊した。
「平成」を正しく理解した者だけが令和時代を生き残れる!
今明かされる「失われた30年」の新事実!
感想・レビュー・書評
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日本の景気が日銀の無知と身勝手さ、日本の政治に大きく左右されていることが、経済理論による説明でよく分かりました。この30年の日本の歴史から、今後の政治を経済的な観点でどのように選んで行けばよいのか分かったような気がします。
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プラザ合意で円高になったのを是正するために低金利政策をとったことからバブルが始まり、突然金利を上げて急ブレーキを踏んだことからバブルが終わり、長期の不況に突入したことがよくわかった。また、不況が長引いたのは日銀の政策が円高原理主義に囚われていたことによる、またそういう人物が総裁についていたからだと理解できた。アベノミクスの称賛は鵜呑みには出来ないが、実質賃金などデータを用いて記されていたので勉強になった。
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平成時代の経済を概観できる本。わたしはバブル崩壊の真っ只中に生まれたので、バブル期の狂乱以外は経験してきたので、非常に面白かった。郵政民営化、消費税増税、リーマンショック、東北大震災の復興増税、民主党政権のグダグダぶり、など様々な政治的・経済的なターニングポイントがあったが、学生時代の当時はそこまでそれぞれのイベントの背景や出来事を理解していなかった。そのため、本書で体系的に平成史を概観でき、理解が深まった。
面白かったのは以下の点
①バブルはフリーアルバイターがいた
空前の好景気で有効求人倍率は右肩上がりだったので、高卒でアルバイトもしくはフリーターになる人も給与水準が高かった。これが後にロスジェネと呼ばれる、失業者へと繋がってしまう。
②郵政民営化の背景
小泉内閣が郵政民営化を実行したのは、日本郵便の構造が限界だったから。国民の預貯金を原資として、日本郵便は財政投融資を特別法人へ行い、特別法人がインフラを始めとする公共事業を担っていた。特別法人からすると数百兆円もの財源が毎年確保できるため、どんぶり勘定で不採算事業も投資していた。不採算事業の赤字は国民の税金から賄っていたので、遅かれ早かれ、日本郵便は民営化せざるを得なかった。
③日本の所得格差の原因は少子高齢化
高齢者比率が高まると非正規雇用が増えるため、自動的に労働者の平均賃金が下がってしまう
④実質賃金のトリック
新規労働者は技能経験が少ないために給与水準が下がる傾向にある。そのため、景気拡大の局面で雇用が増加すると、新規労働者の給与は比較的低いので、実質賃金の分子に当たる平均賃金が減少する。
⑤東北大震災の復興増税は人災
景気後退局面にあった当時の日本にとって、東北大震災の復興増税は不況を一層強めることになった。しかし、当時のムードや野党であった自民党の強い提案もあり、復興増税は実行された。しかも、増税することで財源確保は保証できない。なぜなら、増税を考慮して、人々は消費を控え、企業は投資・生産を控えるから
⑥麻生内閣の金融政策と財政政策のチグハグ
大規模な財政政策を麻生内閣で実行するが、当時の日銀総裁が緊縮財政を目指していたため、日本円を高い水準で維持した。つまり、財政政策の原資である円を政府が市場から回収したため、市場に円不足が発生し、結果的に円高になり、日本経済は不況から抜け出せなくなった。結果論ではあるが、当時の日銀は財政政策と連動して、市場に円を供給し、円高にならないよう調整する必要があった。
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上念氏と同年代なので、卒業・就職・結婚・子育てと社会を意識しながら生活してきた平成。ニュースもそれなりに見ていたはずなのに、何も見えてなかった事に愕然としました。無知は罪。反省しました。
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平成時代は自分は働いていたけれど、政治や経済には全然興味もなかったし、時間もなかったので「こんなことになってたんだ…」と新鮮な気持ちで読めました。経済が苦手…という人にこそ読んで欲しい一冊だと思いました。
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上念氏による「経済で読み解く日本史」シリーズの最終版・平成時代(6冊目)です。文庫版サイズが今年(2020.7下旬)に出版されて夏休み中に読み終わったのですが、レビューを書くのが今になってしまいました。
歴史を学ぶのは楽しいですが、上念氏のこのシリーズのように「経済=お金の流れ」という切り口から、歴史上で行った事件を見てみると新たな気づきがあって面白いですね。
どの時代も面白かったですが、戦国時代や明治〜昭和について、もう一度読み直してみたいと思いました。
以下は気になったポイントです。
・三重野日銀総裁のインフレファイター的な金融政策のスタンスは引き継がれていった、平成大不況の原因はまさにこれである。この姿勢を改めるのに20年以上の歳月が必要であった、大蔵省の総量規制に加えて、三重野総裁は利上げをして景気を冷ましてしまった(p19、35、100)
・本シリーズの一貫したテーマは「経済的に困窮した人々はヤケを起こして危険思想に走る」1980年代末から始まるバブルの生成と崩壊、その後の長期停滞に至る流れはこの法則に当てはまる(p27)
・1990年頃のフリーアルバイター(フリーター)を経済的に支えていたのは、有り余るほどの求人であった、賃金は1980-97年までは右肩上がりであった、93年入社と94年入社の間でバブル崩壊の中でのターニングポイントとなった(p31、65)
・イトマン事件の3年後の1993年に引当金の計算式が、高橋洋一氏によって作られた(p57)
・郵政民営化の本当の理由は、あのまま続けたら郵貯は破綻し、多額の国民負担が発生する可能性が高かった(p135)
・変動相場制の国において金融政策のサポートなし(金融緩和をしない)に財政政策を発動すると、円高を通じてその効果は逃げてしまう、マンデル=フレミング効果である。これが2008年-09年にかけて起きたこと(p179、181)
・政府が日銀に売却した国債は、返さなくても良い借金である、金利は国庫納付金として政府に還流、元本も同額の国債を渡すことで永久に借り換えができる、日銀は448兆円の国債を保有(2018.3末)これを資産に加えるとと政府の債務超過は52兆円に激減する(p211)
・非正規社員hが増えているのは高齢化という日本全体の問題である、正規社員が200万人増えていることはアベノミクスの成果(p235)
・実質経済成長率と輸入伸び率は相関関係がある、中国の2015年の輸入は14%減少しているので、経済成長率がプラスであったと考えられない(p244)
・国債のマイナス金利が実現しているということは、日本国債が市場から非常に信頼されているから、日本政府が将来返済できないなら、多くの人は国債を売却して国債価格が暴落、金利は上昇する(p250)
・米中の関税の掛け合いをした両国の勝敗を決するのは物価上昇率である、相手国の物価を上昇させた方が勝ちとなる、中国の物価は高くなった(p264)
・日本のコロナ対策戦略の肝は「大きな感染源=クラスターを見逃さない」である、感染源を正確に把握し、その周辺をケア、小さな感染はある程度見逃しを許容する(p284)
2020年9月26日作成 -
おもしろい!昭和後半の先輩方の仕事の中身の正体、平成はなぜゴタゴタ続きだったのか、金融・財政・消費税とは…経済から読み解く歴史は多くの示唆を与えると思う。これからの世代には、賛成派も反対派も必読かと。ここに書かれていることを踏まえたレベルで議論しなければ、社会とはこうも無常なのかと思う。努力せねば。