わたしが先生の「ロリータ」だったころ 愛に見せかけた支配について

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865280685

作品紹介・あらすじ

不眠症と鬱に苦しむ孤独な高校生のアリソンは、新しく赴任してきた英語教師のノース先生と出会う。先生は彼女の文才を見出し、放課後に文芸創作の個人指導をするように。
コーネル大学を卒業しナボコフの『ロリータ』を愛読する、知的でセクシーな彼に惹かれてゆくアリソン。
しかし、それは恋愛に見せかけた抑圧の日々のはじまりだった……。

古今東西、数々の作品で描かれてきた「大人の男と少女の恋愛」という図式のいびつさを暴き、支配的関係から自らの知性と文学批評の力で逃れた少女が大人になって綴ったメモワール。

感想・レビュー・書評

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  • 第一部を読んでいる時は
    17歳の女の子と26歳の教師 2人の
    よくあるような恋物語のように思えた。
    多感な時期に素敵な
    (知性があり、余裕があり、
    優しくリードしてくれる)男性に出会えば
    普通の女の子ならきっとときめくし、
    実際、高校時代、私の周りにもそういう先生や
    彼等に憧れている生徒がいた。
    色々と病んでいたアリソンにとって
    自分を認めてくれたり、
    特別扱いしてくれるノース先生は
    王子様で救世主で、理想の恋人だった。

    でも第二部から
    ノース先生の本性?が現れ、
    アリソンは驚き、戸惑い、疲弊していく。
    第二部を読んでいても、アリソンへの
    グルーミングや支配というよりは
    恋人同士のよくある関係のように思えて
    読んでいてとても共感できた。
    我慢できない事があっても
    その後優しくされると許してしまって
    うん、あるあるだよね。と思ったし。

    ただノース先生がアリソンとの関係を
    「ロリータ」に擬えていた事から
    その欺瞞を疑うようになったことで
    普通の?恋愛にはならなかったのだと思う。

    自分がどう扱われてきたかを分析して
    昇華したところが素晴らしい。
    恋愛のバイブルとしても使えるのでは。

  • この本を読んで「思い当たる節」が全くないと胸を張ることができる現代女性が、果たして何人いるだろうか。

    そう思うことを禁じ得ないまでに、残念ながらありふれた恋愛模様だと感じる。その不健全な恋愛は、新たな不健全な世界へと繋がっていることも珍しくない。

    私自身、作中のアリソンが体験したこと、感じていた劣等感、導き出した結論はすべて見覚えがあるものだった。だからこそ

    「わたしの身に起こったことが誰の身にも起こらないように、できるかぎりのことをするつもりだ。」(p322)

    という想いを持って本書の出版に至ったことに敬意を表さずにはいられなかった。


    「ロリータ」に象徴されるように、「小児性愛」に主軸を置いて語られているが、正直言って年齢は関係ないのだと考える。サポートされるべき人間のSOSを巧みに利用し、自分の欲を発散させるためだけに相手を利用することそのものは、年齢や性別に関わらず卑劣な行為であり断じて許されない。

    虐待の被害者であるアリソンからの視点だけでなく、加害者のノース先生と同じ過ちを起こさないようにという観点も忘れずにいなければならないと思う。なぜならばこの手の加害者は、自身の加害性に全く無頓着であることがほとんどだから(「いつだってロリータのほうがハンバートを弄んでいたんじゃないか」p195)。

    • workmaさん
      みどりさん
      はじめまして。

      みどりさんにフォローしていただき光栄です。本棚に本書が掲載されていたので、詳細を見て、読まなきゃ!と思いました...
      みどりさん
      はじめまして。

      みどりさんにフォローしていただき光栄です。本棚に本書が掲載されていたので、詳細を見て、読まなきゃ!と思いました(女の子が傷つく内容なので読むのに覚悟がいりそうですが(^_^;))
      「無自覚に人を傷つける・支配する」こと、自分も含めて、気をつけたいです…まずは、相手の気持ちに気づくことから…ですかね~( ^ω^ )
      2023/02/16
  • 現実にもロリータとハンバートは存在する。

    精神的に不安定だが才能ある少女が偶然にも紹介された教師は『ロリータ』の捕食者ハンバートに心酔し模倣する男だった。

    若い頃は自分を特別だと思ってしまう傾向があって教師はそこに付け込んでいく。

    「魅力的であらがいがたく、注目に値する存在であるためには、美しいだけではなく、問題を抱え、傷ついている必要があるのだと。美しさと悲しみが完璧な芸術をつくる。」(P81)

    著者は最近よく耳にする「グルーミング」を経験してしまったがなんとか解放された。私も子どもに対して「完璧じゃなくていい」と言える大人でいなければいけないなぁ。

    それにしても、女性が読むとひたすら気持ち悪いあの『ロリータ』を「ロマンチックじゃないか」(P178)と言い切ってしまうニック、シンプルに無理。ちょっとイケメンでお金を持っていて…というのがまたハンバートと似てるんだよなあ。

    『ロリータ』を読んだことがない人が想像する『ロリータ』はむしろこの本の内容なんじゃないかなぁと感じました。『ロリータ』はハンバートが本当にイッちゃってるので…(汗

    「訳者あとがき」は男女関係なくぜひ子どもに読ませたい教えでもある。

    「悪い恋愛は、人生を台無しにしかねないほど危険なものだ。」(P330)

  • 中学生くらいの課題図書にしてほしい。

  • この本に出会えてよかったと思った。
    終盤にかけて、語り手である著者が自力で自分の置かれている状況から脱するところは、ある意味謎解きであり、過去との答え合わせ。
    自分はこの本に書かれているようなことは体験しなかったけれど、女子高生の身近にある恐怖を自分事として改めて考えられるきっかけになったので、本当にいい読書だった。

  • これは、結構良かった。アリソンが異常だったことに気付くところが爽快。腑に落ちるところがあったな、愛がなんだかんだとか言って誤魔化す大人は少しお子ちゃまな気がしたな。ノーはノーだよね。

  • 「ロリータ」は未読。あらすじを読んだ段階で、ちょっと〝うえ〜〟となってしまって。
    「愛に見せかけた支配」か…。彼はこういう行為を愛だと信じているのだろうな。そこそこ分別のつく大人になった私は、自分は、自分たちは、特別だと信じたがっているアリソンにはらはらして、ようやく彼から逃れることができたことにほっとする。
    でも、彼はどうだろう。支配することが愛だと思ったまま、歳を重ねるのだろうと思うと、彼の不幸と彼の餌食になる女性(というより女の子)の不幸を考える。
    こういう関係は秘されることが多いから、周りの助けを得ることが難しい。自分で罠に気づいて、自分でそこから逃げなければいけない、というのは、なんと理不尽なことか。

    年若い女性に限らない。その愛は支配を隠していませんか?

  • 捕食されるのはアリソンのような若年層だけではない。歪な愛は親子間にも存在する。「ロリータ」を通して愛とは何かを考えさせられる作品。

  • これ、全ての中高生の課題図書にしたらいい。高校教師と付き合った女子高生が、それを愛ではなく搾取とDVだと気づき呪縛から解けるまでを書いた話、作者の体験に基づいてる。ここにでてくる男性教師27歳が、吐くほどキモい。けど自分の当時を思い出してもこんな感じのいたわ。教師は用もなく学生の体に触ってきたりしない、教師は学生とふたりきりになりたがったりしない、教師は校外で休日に会いたがったりしない、他に誰もいない家に呼ばないなどなどという本人の気づきメモが、当たり前のことばかりなのに洗脳されてて気づけない。しかも気づいたのは成人後、何年も経ってからだからつくづく学校という閉鎖空間は良くないな。あとそろそろこの手のドラマも禁止してほしい

  • フォロワーさんのレビューを見て気になり、手に取りました。不安定で傷つきやすい17歳の少女が出会った26歳の英文学教師はナボコフの『ロリータ』のように教え子を愛した――と思っているのは彼だけで、実際は愛と見せかけた支配と虐待だった。読んでいると教師であるニックの狡さ、下劣さに強い憤りを覚えます。ティーンエイジャーだったアリソンに必要だったのは真っ当な大人からの助けであり、また同年代のクラスメイト達との温かな繋がりで、決して性的欲望を含む愛や恋ではなかった。こういった不健全な関係は見えないだけで、相当数あるように思えます。アリソンが長い時間をかけて自身に起こったことを整理して立ち直ったことに安堵しました。ナボコフの『ロリータ』もまた読みたいです。

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著者プロフィール

作家、英文学講師。ニューヨーク大学で美術学修士号を取得後、同大学で創作講座の教鞭を取る。《ニューヨーク・タイムズ》、《ヴォーグ》、《ヴァニティ・フェア》などに寄稿。文芸コミュニティ・webマガジンのPigeon Pagesを主宰している。本書が初の著書である。

「2022年 『わたしが先生の「ロリータ」だったころ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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