求道者(サンガ新書) (サンガ新書 63)

著者 :
  • サンガ
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865640069

感想・レビュー・書評

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  • まず、こんな日本人僧侶が外国にいるのかと驚いた。

    “悟りなんてありゃあしない
    人間は本来悟れないものだと思う”

    この坊さんは本物だと思う。

    インドは自ら目指して辿り着いた場所ではなく、成り行きで導かれたということだろう。
    1億人以上の最下層の人々を仏教に帰依させ、その人々の人生を変えたという事実はとてつもない金字塔だと思う。

    その道程に感嘆した。

  • インドの不可触民の1億人を仏教へと導いた日本人と言う話題から興味関心を持ち読んだ書籍。
    佐々井秀嶺と言う人物がどのように物事を捉えどのように感じ相対しているかが伝わってくる内容だった。個人的にはダライ・ラマに対し自身が抱いていた疑問を解決してくれるかのような記述があり、読んで良かった。と言うのが感想本音である。龍樹菩薩への興味関心が次はムクムクである。

  • 極めてリアルな目線からインドを語られていて、ビジネス向け・旅行者向けとも違うインドの姿が垣間見られた。ムンバイの日本寺院を訪問したことはあるが、あの方もかなりの苦労をなさったのだろうな。

  • 日本にいたら分からないインドの現実。そこで戦い続ける佐々井氏。外側からでは何も見えてこないんだ。ヒンドゥー、カースト、そしてインド仏教。

  • インド仏教一億人の指導者である、日本人僧侶佐々井秀嶺師の本です。
    カースト制度のまだ下の不可触民たちを仏教徒に改宗させ、47年にわたりインドの社会で活動を続けます。
    裏切られても信念を曲げず、インド人を愛し憎んだ師。
    闘う仏教の姿がここにあります。

    過去にインドで栄えた仏教徒の多くは侵略した回教徒に改宗させられました。もし我々がまた迫害をうけた時に黙っていたら、昔のように改宗させられ仏教はなくなってしまいます。向こうが侵略してきた場合には戦いに正義があると思います。侵略に対して人を守り、人権を守ること、これはすなわち不殺生戒であると考えます。 ー 123ページ

    今、チベットで起こっている反中国的な活動は、仏教徒としての自由と独立を欲して起こっているのであり、決してダライ・ラマ一四世がチベットに帰ってきて欲しいという運動ではないことを覚えていてください。チベットの問題は民衆を残して亡命し、その地で闘わなかったのが根本的な原因だと思います。民衆と離れてしまい、国民と民衆に殉じることを放棄したわけですから。 ー 127ページ

  • 著者はインド国籍を取得した仏教指導者。
    カースト差別に苦しむ人々を仏教への改宗によって救おうとする、戦う人権運動家です。
    仏教を語る本にしては強烈な副題。
    内容もけっこうダイレクトで、愚痴めいた記述も多く見られます。
    御年80歳という年齢からかと思いましたが、やはりインドという過酷な風土で、現地の人々と長年やりとりしていると、タフになるのだろうと思います。

    教義や理想論ではない、インドでの仏教布教奮闘の様子が生々しく語られ、氏が苦労に苦労を重ねてインド仏教復興に身を削っている様子が伝わってきます。
    あの強烈な風土では、人はむき出しの人間性で勝負していくしかないのでしょうか。

    国内では今なおカースト制度が強く残るインドですが、対海外でも、近隣の中国やネパールとは小競り合いが続いているため、人々は他国のアジア人を軽蔑しているそうです。
    ただ日本人に対しては他のアジア人とは違う感情を持っているそう。

    氏の教えを受けて、仏教への改宗を希望する人たちは、時に上位カーストから村八分の圧力を受け、隣村まで行っても食べる米すら買えなくなったりするそうです。
    今なおインド社会に根強く立ちはだかる身分差別の壁と日々戦っている彼の苦労がしのばれます。

    インドでは、一つの地区にいくつも掘っ建て小屋のような寺があるとのこと。
    なぜ一つのまとまった寺ではないのかというと、カースト別に寺を建てなければならないからだそうです。
    仏教間の間でもカーストは消えずに存在し、その数は100ほどもあるのだそうです。
    生まれてから死ぬまで、カーストに縛られ続けるインド。
    日本では想像を絶する環境です。

    そんな過酷な場所で活動を続ける氏も、かなり強い個性を持っており、8日間断食をして死にかけた話が載っていました。
    普通は4日目でスープを飲まないとやっていけないところを、一切飲まず食わずでやり通したため、最後には身体から死臭がしたそうです。

    インドと日本の仏教での大きな違いは、人が死んだ後、日本では埋葬し供養しますが、インドには墓そのものがない点だそうです。
    大地に帰るというインドの死生観ですが、祖先崇拝という思想がないため、先祖からの血のつながりを感じる意識がないとのこと。

    氏は、インドでは心からの友達ができないといいます。
    仲がいいのはうわべだけで、心の底では人を信頼せず、お互いだまし合うのがインド。だますよりもだまされる方が悪いとされるお国柄。
    それは先祖の霊を敬わないせいではないかと、氏は考えています。

    聞けば聞くほど、なぜそんな苛烈な風土と思想の中から、慈悲を説く仏教が生まれたのかが不思議ですが、人を思いやる余裕がなく、自分が生きるだけで精いっぱいのハードな土地だからこそ、そこからの救いの道が逆説的に見出されたのでしょう。

    ふだん読むような仏教本とは違う、ヒリヒリとした読了感を味わう内容でした。

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著者プロフィール

1935年岡山県生まれ。25歳の時、高尾山薬王院にて得度。’65年、タイに渡り、その後インドに入る。’67年、
龍樹菩薩の霊告により、B・R・アンベードカル博士由縁の地、ナグプールに赴く。以来、アンベードカル博
士の仏教復興運動を継承し、現地の仏教徒を導く。’88年、百万人の市民の署名によりインド国籍を取得。イン
ド名Arya Nagarjuna Shurei Sasai、およそ1 億人とも言われるインド仏教徒の最高指導者。ブッダガヤ大菩提
寺の管理権を仏教徒に戻す奪還運動を主導。2003年より3年間、インド政府少数者委員会(マイノリティ・コ
ミッション)の仏教代表に就任。1990年代より、マンセル、シルプール両仏教遺跡を発掘、保存。2009年、
44年ぶりに、また2011年より4 度に渡り日本に帰国、東日本大震災の被災地を訪れ、犠牲者を追悼し、原発
の非道を訴える。現在79歳。その人生と活動は『破天』(山際素男著・光文社新書)に詳しい。

「2015年 『龍樹と龍猛と菩提達磨の源流』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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