ネガティヴ・ケイパビリティで生きる ―答えを急がず立ち止まる力

  • さくら舎
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784865813753

作品紹介・あらすじ

「わからなさ」を抱えて生きる方法を熱論!

情報や刺激の濁流にさらされる加速社会は、即断即決をよしとする世界だ。私たちは物事を性急に理解し、早々に結論を出し、何でも迅速に解決しようとする。しかし、それでいいのだろうか。「ネガティヴ・ケイパビリティ」とは不可解な物事、問題に直面したとき、簡単に解決したり安易に納得したりしない能力のこと。わからなさを受け入れ、揺れながら考え続ける力だ。注目の若手論客3人が対話でネガティヴ・ケイパビリティの魅力と実践可能性に迫る知の饗宴!

        *       *        *

リスクや不確実性に満ちた社会を渡り歩くために、大半の人は余計な時間やコストをかけることを避け、身軽で即断即決のスッキリした生き方、悩みや疑いなどないスピード感ある生き方を追い求めています。そういう流れに抗して、私たちはこの本で「ネガティヴ・ケイパビリティ」の価値を訴えようとしています。本書の試みは、濁流の中に「よどみ」を作るような仕事だと言えるかもしれません。激しすぎる流れの中で、魚やその他の水生生物は暮らしを営むことができません。魚などが暮らしやすい環境には、「よどみ」があります。同じことが、人間の生態系にも言えるはずです。何事も変化し続ける社会において「よどみ」は、時代遅れで、回りくどく、無駄なものに見えますが、そういうものがなければ、私たちは自分の生活を紡ぐことに難しさを感じるものです。逆に言えば、この社会に「よどみ」が増えれば、前よりも少し過ごしやすくなります。(「はじめに」より)

感想・レビュー・書評

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  • ネガティブケイパビリティ
    本書によると、物事を宙づりししたまま抱えておく力と定義されています。早期解決が重要視さる現代とは真反対の考え方です。人からの紹介で読んでみたのですが、自分がとても苦手なことが良くわかりました。
    言い換えると「待つ力」とも捉えることができます。他人に対してビジョンを指し示すのではなく、自分自身で描いてもらう、あるいは考え続けてもらうということだと考えております。
    ある意味では他社に対して「問い続けること」に近いのかもしれません。互いにわからない答えを探すために問いを続けることで少しずつ課題や不安がクリアになっていく
    その役割として「思考の共犯者」がとても大切な存在です。
    これから自分が担うべきものは一般的なリーダーではなく、中核を成す主体的なフォロワーであり続けることです。
    なんとも難しい課題ですが、取り組むと決めた以上、逃げずに取り組んでみたいと思います。

  • ネガティブケイパビリティは、物事を宙吊りにしたまま抱えておく力。安易に結論づけず、保留しておく力。

    一問一答的な思考、わかりやすいメリットに飛びつかない。自分が変わることにオープンでいる。

    自分の体験を紋切り型の言葉に回収させない。丁寧に言語化することで、比喩が豊かになる。

    いろいろな共同体に属して多言語話者になる→自分を相対化、多様な関わりや考え方ができる

  • 短絡的な理解、紋切り型の言葉遣い、敵味方思考、バカと言う優越。
    この時代をめぐる悪弊の流れに棹さす試み。
    たくさんの抜き書きをしました。

    願わくば、ネガティブ・ケイパビリティそのものをもっと掘り下げて欲しかった。
    しかし、それは自分に託された部分かも知れない。

    対話の面白さと限界も感じた。

    <ネガティブ・ケイパビリティについての思索>
    *どんどん決めて物事を進めていく。進まないのはつらい。ゴールが見えないのもつらい。そんなとき、強権的なリーダーが欲しいと思うが、現れたら現れたで、「自己」への抑圧は本当に苦しい。

    *ポジティブ・ケイパビリティの特質を列挙してみる。
    ・スピード感
    ・集約的、階層的な組織構造
    ・太陽と月で言うと太陽
    ・能動と受動の役割の明確化

    *みなで場を分かち合って、決めがたいものに耐え、よいものを生み出していく努力を共有する。それがネガティブ・ケイパビリティでは。高度な忍耐力、自己抑制力が求められる。本書で触れていた「観察」というのは大事な視点かも知れない。相手をのぞき見るのではなく、触れずして触れさせてもらう。そこには良心が発揮され、「待てよ」という言葉が発せられる土壌がある。

  • 一周目読了。本屋でたまたまネガティヴ・ケイパビリティという文字が目に入り、よく知らないけどなんか気になるなと思いながら買った一冊でした。隣には帚木蓬生さんが書いた“ネガティヴ・ケイパビリティ”関連の図書があって迷ったのだけれど、わかりやすいかもと思い、こちらの本にしました。

    SNSが発展した現代では、多くの人々はポジティブ・ケイパビリティを実践している。ポジティブ・ケイパビリティとは、私的な解釈だと「一問一答」。何らかの問いがあり、それに対してなるべく早く答えを出すということ。とにかく早さや実行力が求められる現代では、ポジティブ・ケイパビリティを互いに押し付け合うような状況から抜け出せない。

    そこで、この本ではその概念と対立するネガティヴ・ケイパビリティの大切さを問うている。答えを急がずに立ち止まり、自分なりに考えて自分なりに答えを出すことが、これからの時代に押し流されないで生きる方法だという。

    難しい話を抜きにして感想を言うと、これからもネガティヴ・ケイパビリティを自分で実践し続けるには、本を読み、他者の物語に触れ、自分の言語をまず育てることが大切だと思った。自分の言語とは、自分の感覚を表現する語彙のこと。日本語の定型文ではなく、拙くても自分の中にある言葉で話すことが、言語を育むことにつながる。

    ただそれは、何に対しても感想を言わなくてはいけないと言うことではない。自分が関心のある分野について、自分で語り、思考するための言語を持つことという意味である。ネガティヴ・ケイパビリティを実践し続けるのは難しい。ネガティヴでいるより、ポジティブでいるほうが簡単だからだ。でもその簡単さに巻き込まれない、明快な解答を引っ張られない。そんな心と思考と生活を保っていきたい。

  • 実験的日常の共有、互いに失敗を恐れないような場を持つこと、素敵だなと思いつつどうすればそれが可能なのかはまだあまりピンときてないので、これからも模索していきたい

  • 東2法経図・6F開架:304A/Ta87n//K

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/566601

  •  

  • 陰謀論に嵌る輩に対する短絡さへの対比。色々本は挙げられているが対話集なので雑談程度。

  • 哲学、公共政策等を専門にする若手3人がネガティブケイパビリティをテーマに語る対談本。概念自体の解説、深掘りよりもこの能力が必要とされる現代社会の課題的状況や背景についてが中心なのでネガティブケイパビリティ自体を知りたい人は箒木さんか枝廣さんの本を先に読んだ方が良い。陰謀論とナラティブ、アテンションとインテンション、SNSなど話題となっていることや話されている内容は個人的には非常に興味深かった。特にワークショップやファシリテーションが広まることで整った場でしか対話できなくなるという話はもう少し掘り下げて考えたい。

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著者プロフィール

谷川 嘉浩(たにがわ・よしひろ):1990年生まれ。京都市在住の哲学者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。哲学者ではあるが、活動は哲学に限らない。個人的な資質や哲学的なスキルを横展開し、新たな知識や技能を身につけることで、メディア論や社会学といった他分野の研究やデザインの実技教育に携わるだけでなく、ビジネスとの協働も度々行ってきた。著書に『スマホ時代の哲学――失われた孤独をめぐる冒険』(ディスカバートゥエンティワン)『鶴見俊輔の言葉と倫理――想像力、大衆文化、プラグマティズム』(人文書院)、『信仰と想像力の哲学――ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)。

「2024年 『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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