電通巨大利権~東京五輪で搾取される国民

著者 :
  • サイゾー
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784866250939

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  • 位置No.1757
    電通が単なる広告屋であるなら、どれだけ大きくなっても大した問題ではない。だが本書で示して来たように、現在の電通は第4の権力であるメディアを凌駕し、国民世論をも操作できるほどの力=権力を持ってしまっている。

    ネット広告の不正請求事件があった。
    忘れかけていたが、長期にわたって100社あまりのスポンサーに不正請求を行っていたのは、一部の社員の仕業ではないということだ。この犯罪は、「会社ぐるみ」であったというべきなのであり、その全社的な遵法精神と自浄能力の欠如は強く指弾されなければならい。

    この事件は、天下のトヨタ自動車からの指摘で明るみに出たものだった。
    そんな大会社から言われなければそのまま無視を通したであろうことは容易に想像できる。(テレビよりも)もうけが少ない部署であったことが背景にあろう。つまり、他の部署の利益があまりに大きく、人員削減の対象となっており、会社ぐるみで不正請求により売り上げの嵩上げが必要となったのではないか。

    それが深夜・早朝までの残業につながった可能性がある。

    社員が自殺したとき、通常であれば高額な見舞金・慰謝料によって親族を抑えていた。しかしながら、入社間もない社員だったこともあって初動を間違えた。
    見舞金が不十分だったのだろう。

    電通であれば報道を忖度させることもできた。
    つぶす自信があったのだろう。驕りがあった。
    しかし、現実には電通であっても制御できないメディアが存在した。
    忖度されずにその場で公開される情報源により、事実が公にされることになる。

    Twitterだった。
    本人のツイートは、リツイートされて大きく広まってしまう。

    刑を犯した会社には、応札できなくなるペナルティが課せられる。
    まもなく東京オリンピックが始まる。

    +++

    と、こんなお話でしたが、相当よろしくない会社ですね。
    ほんとうのブラック企業は社員から搾取する、とどこかの本に書いてありましたが、それを実践する会社です。お給料が高いから、一部上場だから、いいんだ、と割り切るのであれば別ですが、でも国民の税金・ボランティアの善意を思うままに使うのはどうかと。

    札幌オリンピックもやってほしくないです。
    結局予算が膨れて、その膨れたお金はどこかに消えてしまう。
    IOCもJOCも、公開する義務はない?
    それは公開したらまずいことがあるからですよね~

    テレビなんてみてたらだめだな~、と改めて思わせられました。

  • 日本の総広告費は6兆2000億円(2016年)。電通はその25%を占め、2位の博報堂の2倍以上の規模。テレビで37%、新聞で16%、雑誌で12%、ラジオで11%を占め、いずれも数十年間1位であり続けている。あらゆる媒体の購入交渉において電通専用枠がある。

    一方、メディアの経営は、テレビ・ラジオで7割以上、雑誌は6~7割、新聞は3~4割、インターネットは8割以上を広告に依存している。電通の売上高は2兆3000億円で、フジテレビの6500億円、朝日新聞社の4700億円よりも大きい。つまり、第四の権力と言われるメディアをはるかに凌駕する存在となっている。電通はこの地位を活用して、スポンサーのネガティブな報道や批判記事が世に出るのを防いできた。メディア側も、電通に忖度したり、自主規制する体制ができあがった。

    欧米では、寡占を防ぐために広告制作・マーケティング立案部門とメディア取引部門が分かれており、1業種1社制度になっているが、日本ではいずれも分かれていない。

    電通の新入社員の半分以上、女子は8割以上が縁故入社と言われる。具体的には、広告主の社長や広報宣伝部部長、有力官庁の課長職以上、政治家の子弟で、安倍昭恵も森永製菓社長の娘。縁故社員の能力は低く、楽な部署に配属される一方で、正規採用された社員は激務の部署に放り込まれる。

    2016年には、電通のデジタル部門が複数のスポンサーに対して過大な料金請求や架空請求を数年間にわたって繰り返していたことが明らかになった。しかし、スポンサーからは別の代理店に移したり、告発する動きもなかった。

    オリンピック、サッカーワールドカップなど、大型の国際スポーツイベントは、ほぼすべて電通が担っている。東京五輪もすべてを電通が取り仕切っており、スポンサー契約も1社で独占している。JOCや五輪組織委の大半は東京都や各省庁からの寄せ集めで、広告や国際イベントの知識はないため、電通からの出向組が実務を取り仕切っている。JOCの竹田会長の裏金送金疑惑についても、送金口座は電通が推薦したものと証言されている。

    憲法改正の国民投票では、投票日から14日以内のテレビCMが禁止されるほかは、何の制約もない。国民投票が国会で発議されると、60~180日という長い投票運動期間になり、広告は無制限に展開できる。国民投票の長い歴史を持つ欧州の主要国では、テレビのスポットCMを禁止している。

    公正取引委員会は、2005年に広告業界に対して独占禁止法違反の疑いがあるとする報告書を公表し、2010年にもフォローアップ調査の報告書を公表している。

    ネット業務不正請求事件が明らかになっても、スポンサーは別の代理店に移す動きがなかったことは、不正がないがしろにされるほど寡占状態にあることを示しているように思われる。公取はもっと積極的に動くべきだと思う。著者は、電通が広告業界だけでなく、五輪や国民投票にも大きく関与していることから、解体または分割すべきだと主張する。

  • ちょっとした校正ミスや同じような文章が重複して出てきたりする(後者については後書きで説明がある)けど、それを補って余りある内容。高橋まつりさん事件の報道の時は、スポンサーを持たないからとて、ずいぶんNHKは力入れてるなぁと思ってた。(申し訳ないけど)食傷気味だったくらい。でも民放が出来ない分も、という使命感があったのかな(勝手な想像)。こんな勇気のある本を書けるのは著者だけでしょうね。もはや“広告代理店”の範疇を超えた第5の権力、電通。ぜひもっと読まれて欲しい。

  • 普段、一般消費者としてほとんど関わることのない「電通」という会社。正直、広告代理店というのがどういう業種なのか、よくわからない中、たまたま仕事で関わる機会があったため、その実態を少しでも知りたいと思い読んでみた。
    感想として、電通という会社のあまりにも大きな影響力を感じることができた。著者が元博報堂の社員であったということからも、説得力がある。ネット社会が進んできたとはいえ、一般市民はやはり新聞、TVの情報に頼らざるを得ず、その新聞やTVの首根っこを掴んでいる電通は、社会的影響力が大きいと言わざるを得ない。
    著書の主張がすべてとは言わないが、オリンピックに国民が浮かれている裏で、ボロ儲けしている者がいるという現実を知っておく必要はある。ただ、多くの国民はそれでもなお、自分に直接関係のない難しいことを考えることよりも、オリンピックの熱狂の中に身を置くほうが楽しいと考えて、東京2020は熱狂のうちに終わるであろう。しかし、その熱狂には多くの国民・都民の血税が、電通という巨大組織に吸い込まれていることを忘れてはならない。

  • 博報堂出身の著者が何かを思って書いたのだろうか?

  • 『ナチスを追及した作家のハンナ・アーレントは、「悪の陳腐さ」「悪の凡庸さ」という言葉でナチスに協力した人々を定義した。ユダヤ人虐殺の罪に問われたアドルフ・アイヒマンは怪物ではなく、ただ思慮の欠如した凡庸な官僚だった。

    アーレントは、思考停止した多くの人々の無責任さが、巨大な悪をのさぼらせたと告発したのだ。

    ナチスは滅んだが、アーレントが指摘した陳腐で凡庸な悪は、現代世界にも形を変えて存在し、人々を苦しめている。』

    『戦争広告代理店』を思い出す。改憲、五輪はどうなるのかなぁ〜。
    権力の腐敗と国民の搾取はどうしたらなくなるんだろう?

  • 夢や希望を抱えて社会に出た若い女性が会社に殺された。電通の女性
    新入社員の過労自殺は労働基準法違反罪で罰金50万円で終わった。

    人を殺しても罰金50万円で済むのだ。しかも、巨大広告代理店である
    電通にとって50万円なんて痛くも痒くもないだろう。

    この女性の例が過労自殺の初めてではない。表に出てないものも含め、
    電通では昔から仕事に追い込まれて自殺したり、過労死したりしている
    例がある。

    不祥事を起こした企業は一時期、業績が傾くのが通例だが電通だけは
    この例ではない。何が起こってもびくともしない。それがこの会社だ。

    それは「広告」という武器を握っているからだ。原発の安全神話を振り
    撒いて来た電子力村と広告代理店の関係を暴露した著者が、本書では
    電通の持つ力を改めて明らかにしている。

    2020年東京オリンピック開催にあたって大量に募集されるボランティア
    への危惧。そして、遠くない将来発議されるであろう憲法改正に対しての
    国民投票における改憲派による広告戦略の危険性。

    「リオ・オリンピックは多くのボランティアによって支えられました」
    なんてことが垂れ流されているが、リオでは有償ボランティアと無償
    ボランティアの存在があったことなんて本書を読むまで知らなかった。

    本書でも触れているが、膨大なスポンサー料収入のあるオリンピックで、
    どうしてボランティアだけ交通費や宿泊費等、すべて自腹で賄わなければ
    ならないのか。ボランティアのなかには薬剤師などのプロフェッショナル
    まで含まれている。

    本当、どうかしていると思うわ。電通やJOCにはぼろ儲けで9万人のただ
    働き募集だって?大体、リオ・オリンピックの閉会式で安倍晋三が登場
    する演出だって、あんな仕掛けで相当の金額がかかっている、あれも電通
    仕切りだよね。

    そして、とにかく怖いのが憲法改正の国民投票の広告戦略だ。先の衆院選
    の投票日当日の新聞にでかでかと自民党の広告が出ていたのを覚えている。

    投票日当日の広告は公職選挙法違反になるはずだが、金があればなんでも
    ありってことなのかね。これが憲法改正の国民投票の広告戦略の先駆けか
    なんて思ってしまう。

    金さえもらえればなんでもあり。利権あるところに電通あり。不祥事を
    起こしたって気にもしない。この巨大ブラック企業は一体、どこまで
    のさばるのだろうか。

    オリンピックにしても、国民投票にしても私たちの税金なんだがね。
    そして、電通批判をタブーとしているメディアは恥じて欲しいわ。

  • 読みやすさ★★
    学べる★★★
    紹介したい★★★
    一気読み★★★
    読み返したい★★

    広告業界の裏事情。地方在住かつ一般消費者である私は、電通という会社の存在すらあまり認識していなかったが、反体制側の言論者(私の好む、目から鱗を落としてくれる見方を教えてくれる先生方)からの悪名があまりにも高いため、知識として一冊読んでおこうと手に取った。
    テレビにしろ広告業界にしろオリンピックにしろ、元々そんなに興味がないため、作者のジャーナリズム熱に寄り添えなかったが、よく取材され、電通がカネと権力の掃き溜めのような場所なんだということはよくわかった。
    ただ、あとがきには全く同感。
    無知、無関心、思考停止した大衆の無責任さが社会に悪をのさばらせる。
    ニュースか?広告か?常に見極める力を身に付けたいと思う。

  • 東2法経図・6F指定:674.4A/H85d/Shoji

  • 人権侵害大企業が仕切る、社会の人権意識を向上させる期の一切ない利権イベント。

    高橋まつりさんは、電通に本採用になって2か月で自殺したんだ…。年末。クリスマス。
    私の兄も年末に自殺した。
    幸恵さんも、年末前後の1か月ずつは、心が止まって曇ったような、そんな気持ちになるのかな?
    子どもを誰もが知る大企業に殺される…どれほどの苦痛だろう。

    日本の酷暑は毎年大勢の人を熱中症で殺してる。日本の夏に慣れてても危険。外国人は夏に来ちゃダメ。春か秋に来てください。


    朝日
    頑張ってる記者さんもいると思うけど、五輪のオフィシャルパートナーだからな…。
    メディアがこういう巨大なお金が動くイベントのオフィシャルパートナーになるのって良くないんじゃないの?

    『赤の広場』で『スターリンは馬鹿だ』と叫んだ男が逮捕された。裁判の結果、懲役25年が言い渡された。刑期のうち5年は侮辱罪、残りの20年は国家機密漏洩罪であった。

    治安維持法
    迷惑で失礼な法律だ。
    声を上げて主張するのは市民の権利だし、義務でもある。

    ボランティア:志願 志願兵
     無料奉仕という意味ではない。

    多くの社員は高橋さんの自殺を迷惑としか感じていない。 p.223
    これが、日本の広告を握る大企業の正体?日本の健全な未来のためには潰れてくれた方がいい。

    ワセダクロニクル 花田達朗

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著者プロフィール

1962年生まれ。著述家。1989年、博報堂に入社。2006年に退社するまで営業を担当。その経験をもとに、広告が政治や社会に与える影響、メディアとの癒着などについて追及。原発安全神話がいかにできあがったのかを一連の書籍で明らかにした。最近は、憲法改正の国民投票法に与える広告の影響力について調べ、発表している。著書に『原発広告』『原発広告と地方紙』(ともに亜紀書房)、『原発プロパガンダ』(岩波新書)、『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波ブックレット)、『広告が憲法を殺す日』(集英社新書、共著)ほか。

「2021年 『東京五輪の大罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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