オールアラウンドユー(定価1980円税込)

著者 :
  • ナナロク社
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本棚登録 : 840
感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784867320167

感想・レビュー・書評

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  • どうしてかしら、木下さんの短歌は続けて読みたくなる。

    何回も読み直したい短歌。

    谷川さんとの対談も良い。

  • 木下龍也さんは本当に日常の切り取り方、表現の仕方がうまい方なのだな、と思う。何冊か歌集を読んだけれど、どれも誰もが実際に体験し得るラインと、そうでないラインの境目をついてくるような感じ。何回か読み返しながら、もっと好きな歌を見つけていきたい。

  • 谷川俊太郎、岡野嗣との共作や読者からの依頼による作品集を経ての第三歌集。アイロニーとユーモアにセンチメンタルが溢れる。装丁と厚めのページに温かみを感じる。何度も読み返したくなる歌集。

  • 情熱大陸を見た後に購入したというのもあるのかもしれませんが、木下龍也さんの第三歌集『オールアラウンドユー』大変感動して拝読しました。

    木下さんの第一歌集『つむじ風、ここにあります』第二歌集『きみを嫌いな奴はクズだよ』どちらも読んでいましたが、個人的にこの第三歌集が一番ピュアな作品かなという気がします。

    木下さんの作品の中で一番好きな作品です。

    あとがきに書かれていましたが、第一・第二歌集を作るところまでは一人で、その後、共著を出して、依頼者と共に作った『あなたのための短歌集』を出して、第二歌集から6年間を経て満を持しての第三歌集の完成。

    僕は、このストーリーのファンです。

    情熱大陸で少しお話しされてましたけど多分この6年間の間に、職業歌人として独立するプロセスがあって、その大きな軸が『あなたのための短歌集』なんだろうと思います。

    いろんな歌集を読んでいると、やっぱり短歌って著者の個人的な視点や内面のことを題材に書くことが多いと思うのですけど、誰かのために作る短歌というのはありそうでいてあまり読んだことがなかったように思います。

    そして依頼者さんからのお題を見ていると、やはりディープなものもあるし、辛くてしょうがない時とか、何か特別な思いを持って依頼しにきている人ばかりで、「オーダーメイドの言葉のお守り」を作りに来ているような感じです。

    そこに答え続けるというのは、ある意味で、駆け込み寺のような役割を果たしているようにも見えるし、他人の人生の大事な部分を短歌で引き受けることに腹を括っているような気迫を感じます。

    情熱大陸を見て、精神的にすごくタフな作業をされているな、苦しそうだなと思いましたが、ボクシングなどしながらバランスをとって続けているのは本当に何か一つ突き抜けた決意のようなものを感じました。

    そんな中で、“あなたのため”を離れて、改めて自分自身と向き合って作ったのが『オールアラウンドユー』だと思うのですが言葉を眺めているだけで、込み上げてくるものがあります。

    「今でも不安です」とか「短歌を作ることを楽しいと思ったことがない」とか、インタビューでおっしゃってて、きっとほんとにそうなんだろうなと思いますが、この歌集を読むと、それでも短歌を作ることで得ている充実感や、祈りにも似た何かを、少しづつ捕まえている手応えがあるんじゃないかなと思います。

    今後、木下さんに短歌を作って欲しい人とか増えると思いますし、いろんなお題が集まって負荷が重くなりすぎないといいなと思いますが、でも逆にそういう負荷を経て磨かれた、よりウェイトのある、木下龍也さん個人の作品を今後も楽しみにしていきたいと思いました。

    『天才による凡人のための短歌教室』で、“自分の歌では自分の胸は打ち抜けないという絶望に至った”と言ったようなことが書いてありましたが、こういう活動を続けていく限り木下龍也さん個人の作品はこれから先まだまだ良くなるのじゃないのかなと思います。

    その伏線としての第三歌集『オールアラウンドユー』なのではないのかなと思いました。

  • 今までの歌集の中でいちばんつかみどころがない印象を受けた一冊。目次や詞書もなく、1ページに一首、多くとも二首しか掲載していない。一首ずつそれぞれが独立しているという印象が際立つ。

    木下さんならではのトリッキーな短歌は前作に比べると少なくなっており、より情感の表現に寄っていることがなんだか意外だった。

    造本がかわいい。布張りに箔押しで、本文用紙が角丸してある。かわいい。

  • 木下龍也(1988年~)氏は、山口県周南市生まれの歌人。2011年に本格的に作歌を始め、2012年に現代歌人協会主催の全国短歌大会で大会賞を受賞して歌人としてデビューし、俵万智、穂村弘の後の世代では、現在最も注目される歌人の一人である。
    これまで、第1歌集『つむじ風、ここにあります』(2013年)、第2歌集『きみを嫌いな奴はクズだよ』(2016年)を出し、本作が第3歌集である。また、2017年から、個人に対して短歌を作る「あなたのための短歌一首」を行っており(直近は11,000円/1首)、その作品を書籍化した『あなたのための短歌集』(2021年)も出版している。(尚、同書の印税は歌集を購入して学校や図書館などに寄贈するために使っているという)
    私は50代の会社員で、近年短歌に興味を持ち始め、俵万智、穂村弘、東直子、枡野浩一、木下龍也、岡野大嗣、九螺ささら等の歌集や短歌入門書、また、山田航の『桜前線開架宣言』、瀬戸夏子の『はつなつみずうみ分光器』、東直子/佐藤弓生/千葉聡の『短歌タイムカプセル』等の現代短歌アンソロジーを読み、1年ほど前から投稿を始めた新聞歌壇では、多数の歌を選んでいただいてもいる。
    そうした中で、私の最も好きな、憧れる歌人は木下なのだが、それは、テーマの切り取り方・創り方と言葉の使い方のセンスが極めて優れており、かつ、歌人以外には(よさが)分かりにくい歌を詠む歌人も少なくない中で、木下の歌は、素人にも共感・納得できる歌だからである。そういう意味では、俵や穂村以降の数々の若手歌人の中でも、他の追随を許さない特異な存在である。(強いて言えば、岡野大嗣が近い作風と言える)
    また、木下(と岡野)の歌については、『桜前線~』の中で山田が、とても興味深い分析をしている。それは、近代短歌とは、「読み人知らず」の精神を否定し、「ここにかけがえのない僕がいる」と叫ぶことを是とする「個の詩型」で、現代短歌も大方はそれを踏襲しているのに対し、木下や岡野の歌は、「僕の存在」を叫びたいのではなく、「ふとした瞬間に兆した何らかの感情」を共有する超時空のコミュニティを作るために短歌を提出している、即ち、「個の詩型」ではなく、「場の詩型」としての短歌を志向しているというのである。そして、こうした、「個」よりも「場」を重視する姿勢は、短歌のポストモダンへの一つの回答となりうるだろう、とも書いている。
    また、木下は、いわゆる短歌結社・短歌会には(おそらく)所属しておらず、ネットや投稿で認められ、活動している歌人で(歌壇に背を向けているわけではなく、単に必要性を感じていないのだろう)、そういう点でも今後短歌界の在り方を変えてゆく存在になるのかも知れない。
    美しく、繊細で、重くなく、共感・納得感を抱きやすく、前向きな、現代短歌のホープの歌が詰まった、待望の第3歌集である。
    (尚、私は神保町の東京堂書店で木下のサイン入りを購入したのだが、大手書店では暫くは入手可能かもしれない)

  • 図書館で借りたのだけど手元におきたいので購入したいと思う。折に触れて読み返したいと思った。


    「いま」の自分が読んで特に印象に残った短歌、3選
    ~~~~~~~~
    鎮火してもらうつもりでくちづけを求めたけれど、けれど、全焼

    ちぎれない身体のせいでぼくたちはひとつの愛を選ぶしかない

    生きなくちゃ 会う約束をしたために暗に生まれる会わない日々を

  • 読む時の自分の状況で気になる短歌が違いそう。
    手元に置いて日々読み返したくなる1冊。

  • 擬人化のセンスが凄い。装丁の質感も好き

  • 「あなたのための短歌集」でも感じたが、やっぱりすごい。意味がわからないものもあったが、繊細で優しい歌があり、いいと思った。

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著者プロフィール

一九八八年山口県生まれ。歌集は『つむじ風、ここにあります』『きみを嫌いな奴はクズだよ』(ともに書肆侃侃房)『あなたのための短歌集』『オールアラウンドユー』(ともにナナロク社)。その他、短歌入門書や共著歌集がある。

「2024年 『現代短歌パスポート3 おかえりはタックル号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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