貧困のリアル (家族で読めるfamily book series 11)

  • 飛鳥新社
3.75
  • (1)
  • (4)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 26
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (94ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784870319509

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  稲葉剛・冨樫匡孝著『貧困のリアル』(飛鳥新社/750円)読了。この前読んだ『グーグルが本を殺す』と同じく、ブックレット「たちまちわかる最新時事解説」の1冊。

     著者2人は、湯浅誠の人気もあって一躍脚光を浴びたNPO法人・自立生活サポートセンター「もやい」のメンバー(稲葉は代表理事)。「もやい」の活動をふまえ、現場から日本の貧困・ワーキングプア問題を語った1冊である。

     100ページほどの限られた紙数の中に、貧困問題のさまざまな論点をわかりやすく盛り込み、実例も適宜挙げて、よくまとまっている本。湯浅誠の『反貧困』に感動した人は本書も読むとよい。

     「もやい」の活動内容もくわしく紹介されていて、その真摯な取り組みに頭の下がる思いがする。たとえば稲葉は、連帯保証人がいないため住居の契約ができないホームレスのため、「一番多いときには五○○人以上の連帯保証人をしてい」たという。

    《あまりに多くの連帯保証人を引き受けてきたので不動産屋に「もう稲葉さんは連帯保証人にはなれません」と言われるようになってしまいました。しかし次第に〈もやい〉の認知度が高まり、不動産屋から「団体としての〈もやい〉さんだったらいいですよ」ということで話がまとまり、二○○六年度から〈もやい〉が団体として保証する形式に切り替えています。》

     こういう人たちこそが現代の「聖者」なのではないか、という気さえする。

  • もやいが担当したケースを複数紹介しつつ、社会問題である貧困層の実態について述べている。
    日本は本書に書いてある通り、一度落ちたら這い上がる事が難しいシステムであるので、そこは是正しなければならないと感じた。
    貧困に喘ぐ人々の苦労は、他人事として考えては行けない。私も含め、一般の人でもハウジングプアになる可能性は厳然としてあるのである。
    昨今、生活保護の不正受給が明らかになっている。しかしながら世の中には恵まれない人は確かにいるので、そういった人々のためには支援の必要性を感じた。
    もやいの貧しい人を救うという行為は立派な事であると思う。ただ、団体としてどうやって利益を得ているのか不思議ではある。

  • 『つながりゆるりと』を読んだあとに、名前の出てきた稲葉さんの本は図書館にあるかなと検索してみたら、まだ(?)『ハウジング・プア』はなくて、この本が出てきた。

    「家族で読めるfamily book series」(http://www.asukashinsha.co.jp/search/s1224.html)の一冊で、90ページちょっとの本である。

    ▼稲葉 …日雇いの建築現場で働いているおじさんたちも、ネットカフェ難民の若者も、不安定な仕事しかないから、住まいが安定しない。そういう意味では基本的には一緒です。派遣切りにあった人たちも同じなんですが、そこがなかなか理解されずにその時々の見え方だけが注目されてしまうだけなのです。(p.23)

    ▼冨樫 …もし、本当に自分の責任で貧困に陥っていたとしても、「じゃあ、どうしたらその人が元気に働いて稼げるようになるのだろう?」ということを考えるのが、社会の役割なのではないでしょうか?(p.80)

    ▼稲葉 …仕事は選り好みできるように、選択できるようにしなければならない。そうしなければ労働の質自体が落ち、社会全体の質が落ちるということになっていきます。(p.88)

    稲葉さんや冨樫さんの話を読みながら、前に『We』150号で紹介を書いた、岩田正美さんの『現代の貧困』を思い出した。

    ▼…もう一つ、岩田が強調するのは、貧困対策は貧困な人たちの権利を守るだけでなく、社会統合や連帯という面をもっていることである。それは、貧困と富裕、下流と上流といった社会の分裂を防ぎ、同じ社会に生きる人と人とがつながって「私たちの社会」を築いていこうとする際のもっとも大切な基礎となるものである。(「乱読大魔王日記」80回、『We』150号、p.51)

    *『We』150号(在庫あり)
    http://femixwe.cart.fc2.com/ca12/10/p-r12-s/

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1969年、広島県広島市生まれ。1994年から路上生活者を中心とする生活困窮者への支援活動に取り組む。
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事、認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人、生活保護問題対策全国会議幹事、いのちのとりで裁判全国アクション共同代表、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授。
著書に『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『コロナ禍の東京を駆ける』(共編著、岩波書店)、『ハウジングファースト』(共編著、山吹書店)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『生活保護から考える』(岩波新書)など。

「2021年 『貧困パンデミック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲葉剛の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×