諏訪根自子 美貌のヴァイオリニスト その劇的生涯 1920-2012
- アルファベータ (2013年2月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784871985772
作品紹介・あらすじ
天才美少女として注目され、ヨーロッパへ留学、ゲッベルスからストラディヴァリウスを贈呈され、戦後は日本各地で演奏するも、やがて沈黙。二十年の空白の後、バッハの無伴奏で復活を果たした、伝説の演奏家、その初の評伝。
感想・レビュー・書評
-
事実は小説よりも奇なりというが、まさに劇的生涯である。
大正から昭和、そして平成へという激動の時代に生き、大戦に翻弄されたヴァイオリニスト、諏訪根自子。映画女優といっても通用するような美貌の持ち主でもあった。
天才少女と世間の話題をさらい、昭和11年に16歳でヨーロッパへ留学、日本人ソリストとして初めてベルリン・フィルやウィーン・フィルと協演、そしてナチスの宣伝相、ゲッベルスからストラディヴァリウスを贈られている(それは一体どこから入手したものなのかという疑惑に生涯付きまとわれた)。
ドイツより命からがら脱出したエヒソードや、帰国後の活躍など、その足跡は興味深く、あっという間に読み終えてしまった。
日本のクラシック受容史としても読め、これまでどのようにして日本のクラシック演奏が発展してきたかということも合わせて知ることができた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
その不思議な名前と簡単な経歴しか知らなかった人なのに、その生涯を知って、その波瀾万丈と求道者のようなバイオリンへの思いに、ため息が出てしまった。もう少し詳しく知りたい彼女の思いなどもあったけれど、それは本当に個人的なもので、私が知るべきことではないのかもしれない。
何かを一心に究めようとする人は、人を惹きつけるのだなぁと思う。 -
逢坂剛「さらばスペインの日日」を読むと,戦中を欧州で過ごし,戦後アメリカ経由で送還された人たちのことが出てくる.その中にこの諏訪根自子の名前もある.最近亡くなったのを覚えていたのでこの本を手にとってみた.
この本は一応諏訪根自子の評伝ということになろうが,よく調べてはあるものの,踏み込みが足りなくてちょっと残念なでき.
ゲッペルスから贈られたヴァイオリンの正体もはっきりしないし,なぜ突然,キャリアの長い中断があったのかもわからない.不倫の上での結婚にも軽く触れられているだけ.引退のきっかけは?引退後の生活は?なんていう読者の当然の疑問にもまったく答えてくれない.一人の音楽家のキャリアの紹介ならそれでいいんだけど,著者の目標もそれではなかったはず.
それにしても,「敵性語」を「適正語」と書いたり「週刊文春」を「週間文春」と書いたり,必要のないと思われるところで,文学的な(?)表現を使ったり,難しい字を使ったり.編集者はなにも言わなかったのだろうか. -
映画女優のようなポートレート、帯に書かれた「霧のヴェールに覆われた生涯」の文字に惹かれて手にとりました。
クラシックには疎いので彼女のことは初めて知りましたが、戦前、貧しい環境にありながらヴァイオリンを学び、ヨーロッパ留学、ドイツ軍が侵攻したパリからドイツへ、そしてドイツ敗戦後アメリカへ収容され、やがて日本へ。そして一世を風靡。
その波乱万丈の人生に圧倒されました。
その中でも、生涯気品のある落ち着いた方だったようです。尊敬。