実例が語る前置詞

著者 :
  • くろしお出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874248874

作品紹介・あらすじ

気鋭の認知言語学者が贈る、英語学習者のためのまったく新しい前置詞解説本。
「使いこなす」ために必要な学習姿勢をはじめ、各前置詞の解説、および横断的な着眼点も示す。

◼本書の紹介
なんとなく意味はわかる… なんとなく訳せる…
でも、話したり書いたりすることはできない…
インプットの際にわかった気になれることと、自分でアウトプットできることの間には、実は大きな壁があります。

本書は、この「壁」を乗り換えることを目指す方へ贈る、英語前置詞にまつわる類のない17章です。
映画・ドラマ・小説・学術文書からレシピやミュージシャンのライブMCまで、400を超える多彩な例が前置詞の世界へと誘います。
「本質」だけの追求や従来のイメージ重視の学習法では辿り着けない、「使いこなす」への長い長い階段を一緒にのぼってみませんか。

対象読者
●中~上級レベルの英語学習者
●文章をじっくり読む習慣のある方

内容例
●out thereは一体どこを指し、何を表しているのか?(→第1章)
●日英差を理解して「経路」情報は前置詞に込めよう(→第4章)
●使えると便利!「すぐ行くよ」を「will be right +1語」で(→第5章)
●by doing ... の実例と哲学から探る(→第9章)
●Let’s all look for it {in / as} a group はみんなで探す? バラバラで探す?(→第11章)
●What chapter are you on? は自然なのに What book are you on? は言いにくい? 言える場面とは?(→第13章)
●travel through Naganoはあちこちまわる? まっすぐ移動?(→第15章)
●What have you done with XとWhat have you done to Xの違いとは?(→第17章)

◼目次
はじめに
本書が推奨する学習姿勢

Part I
第1章 位置の2段階指定
第2章 hit him on the head型の表現
第3章 「たら」「とき」「あいだ」が潜む前置詞
第4章 経路にまつわるあれこれ
第5章 will be P構文
第6章 差分スロット
コラム 関連付けの自由

Part II
第7章 as
第8章 away
第9章 by
第10章 for
第11章 in
第12章 of
第13章 on
コラム 未分類ファイルのすゝめ
第14章 through (1)
第15章 through (2)
第16章 to
第17章 with
コラム 語を知っていることと人を知っていること

本書で引用した文献
あとがき
謝辞

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  •  英語の上級者向けの本。前置詞をテーマにして、こんな使い方をするのか、という知ってないと絶対に使えない用法を、実例とともに紹介する本。前置詞というと、すぐに抽象化したイメージを前面に出して、そこに色々な用例をあてはめて紹介する、というのがオーソドックスだけど、結局抽象化したイメージだけでは使えるようにならないし、だから具体的な用例を覚えていくしかなく、でもその用例自体をたくさん眺めてできるだけ共通するイメージ、意味を取り出しつつ、アウトプットできる知識を蓄えよう、という本。上から(演繹)と下から(帰納)の両面で、でも下からの土台を優先しよう、という趣旨の本。単なるイディオムの暗記、というレベルではないからね、という本で、あるべき語学のアプローチ(の1つ)を捉えている。
     おれも両面から攻めるでしょ、というのは自分の語学経験からしても言えることなので、辞書なんかも用例を見るのは今でも楽しいし、逆に用例を見ないと分からないと思っているし、という意味で、とても共感できた。だからとても面白いし、チャレンジで、おれの勉強としてはこの上なく面白いけど、おれは教員でもあるから、これどこまで生徒に教えるんだろうなあ、どうやって教えるのかなあという思考を常に巡らせると、これはいいかな別に、アウトプットは難しいけどインプットだけなら分かるしな、と思う部分が多かった(じゃなくてアウトプットを目指そう、というのがこの本の趣旨なので、やっぱり相当英語が出来る人向けだと思う)。例えば「動詞1語away」で、「こちらの気持ちを考えて遠慮するなどということなく、思う存分やってくれ」という意味(p.165)とか、難しい、というかあんまり教えないし教わらない項目だなと思う。Ask away.とか使ってみようかな、という、あくまで自分の勉強として楽しむ感じ。あといくつか、そういうところを抜き出してメモする。A by doing Bは正直「BすることによってA」で読んでしまってたけど、確かによく考えると別に意図的にBしてなくてもこれを使える、ということを用例から見ることが出来る。例えば "I'd like to end my speech by thanking the people who made this conference possible." (p.178)は、「感謝することによって終わる」は変で、Aするのだけれど具体的にはBします、と読める、というのは面白かった。進行形の解説用法(パラレルの進行形)っていうのがあるけど、それと何となく似てるかな、と思ったり。あと本論ではないけど be written across Xで「文字がXの表面がでかでかと書かれている」(p.229)とか、確かにacrossってなかなか使えないよなあ。hope forという用法を最近教えたが、hope for that SVの形(前置詞の目的語thatSV)は嫌われるので、forが省略されて他動詞に見える、とかこれはdecide onと同じ(p.261)というのは、もしかしたら教えられるかもしれない。基本自動詞なんだけどthat節の時は~、みたいな感じ?「床を掃く」とかsweep the floorしか知らなかったけど、run a bloom for 空間、とか(p.296)、これも実例を見て気づかなければたぶん一生学べない表現。there is X to Y構文がずっと解説されているが、著者も言うように論ぶにゃレポートを書く時には"there is some truth to the view [idea] that SV"「~という考え方にも正しい側面が多少ある」(p.308)とか、使えそう。大学入試の自由英作文にも使えそう。その構文を紹介する実例が載っているHow We Got to Nowは、「今の我々が『あって当然』と思っている日常的な品物や考え方が、そのような歴史を経て発明されたのかを教えてくれる本」(p.299)って面白そう、と思う。あと最後に「同等比較が逆接の従属節を作るパターン」(p.320)って教えた方がいいんじゃないかな。例えばas much as I like your perfume, just don't wear any.「その香水良いと思うけど、今度からはつけないで」とか、We're not supposed to say, as much as I'd like to tell you about it.「教えたいのは山々ですが、言ってはいけないことになっているので」というような使い方。as much as I like / I'd like to...なんて、使えそうな表現だし、わかんないとインプットも出来ないかもしれないし。
     という感じで、だいぶハイレベルな内容なので、本当に英語を「勉強」している人が面白いと思う内容。最後の参考文献の紹介も、いくつか読みたいと思うものがあって、勉強にはなった。(23/11)

  • 信頼する先生のお弟子さんが書いた本でその先生に勧められて読んだ。とても良い本だ。説明もあるが「実例が語る」というだけあって例文が豊富で具体的。ネイティブみたいに英語を話したい人を対象にしているのでレベルの高い内容が充実している。この本をマスターすればかなりの前置詞遣いになれるだろう。著者も地道な学習の重要性を繰り返しと言いているが、例文をすべて覚えればけっこうネイティブに近づくはず。そのためには二度三度と読んで身体にしみこませなければ。読み終えた時点ですでにほとんどを忘れているのだから。。。

  • 実例で例証していく前置詞の意味

    これまでの前置詞のタイトルがついている商業的な本は、コアミーニングの解説があって、それからほぼ全てが派生していくと解説するのが多いが、この本は部分的にその考えを採用しつつも、それだけではその表現を活用できるようにならないと主張する。学習者が母語話者と同レベルに言葉を使いこなすにはどんな情報が必要なのか、どこまでの抽象化もしくは具体化が必要なのかを絶妙な塩梅で整理している。著者はUsage-based な考え方で、言葉が習得されると考えている。

    例文にはひとつひとつページが許す限り、その例文が使われる背景が書いてあり、丁寧。そしてそれがその後の抽象化されたサブカテゴリーになっていくのは面白い。参考文献も豊富でそのうちいくつかの文献は仕入れようと思っている。

  • 【書誌情報】
    『実例が語る前置詞』
    著者:平沢慎也
    出版社:くろしお出版
    定価:2,750円(2,500円+税)
    ISBN:978-4-87424-887-4 C1082
    発売日:2021/12/29
    判型:A5
    ページ数:356頁
    ジャンル:英語教育・英語学習 ― 英語学習

    気鋭の認知言語学者が贈る、英語学習者のためのまったく新しい前置詞解説本。「使いこなす」ために必要な学習姿勢をはじめ、各前置詞の解説、および横断的な着眼点も示す。

    ◼︎本書の紹介
     なんとなく意味はわかる… なんとなく訳せる…でも、話したり書いたりすることはできない…。インプットの際にわかった気になれることと、自分でアウトプットできることの間には、実は大きな壁があります。
     本書は、この「壁」を乗り越えることを目指す方へ贈る、英語前置詞にまつわる類のない17章です。映画・ドラマ・小説・学術文書からレシピやミュージシャンのライブMCまで、400を超える多彩な例が前置詞の世界へと誘います。「本質」だけの追求や従来のイメージ重視の学習法では辿り着けない、「使いこなす」への長い長い階段を一緒にのぼってみませんか。

    対象読者
    ●中~上級レベルの英語学習者
    ●文章をじっくり読む習慣のある方

    内容例
    ●out thereは一体どこを指し、何を表しているのか?(→第1章)
    ●日英差を理解して「経路」情報は前置詞に込めよう(→第4章)
    ●使えると便利! 「すぐ行くよ」を「will be right +1語」で(→第5章)
    ●by doing ... の実例と哲学から探る(→第9章)
    ●Let’s all look for it {in / as} a group はみんなで探す? バラバラで探す?(→第11章)
    ●What chapter are you on? は自然なのに What book are you on? は言いにくい? 言える場面とは?(→第13章)
    ●travel through Naganoはあちこちまわる? まっすぐ移動?(→第15章)
    ●What have you done with XとWhat have you done to Xの違いとは?(→第17章)
    https://www.9640.jp/book_view/?887


    【目次】
    はじめに
     1. 本書の内容
     2. 対象読者
     3. 本書の例文
     4. 本書の「つまみ食い」的な性質について
     5. 構成と読み方

    本書が推奨する学習姿勢
     1. 学習姿勢の全体像
     2. 抽象知識と具体知識の両方の重視
     3. アウトプットにおける具体知識優先の原則―「本質」主義からの脱却―
     4. 熟語を覚えようと言っているのではない
     5. まとめ

    Part I
    第1章 位置の2段階指定
     1. 位置の2段階指定とは
     2. 日本語ではどうか
     3. 学習者がつまずきがちなbackパターン
     4. out thereの熟語性
     5. まとめ

    第2章 hit him on the head型の表現
     1. 部位構文とは
     2. 書き換えはいつでも可能か? 失われる意味はないか?
     3. 位置の2段階指定の一種としての部位構文
     4. {in / on / by}のうちinのみがOKになる部位構文
     5. {in / on / by}のうちonのみがOKになる部位構文
     6. {in / on / by}のうちinもonもOKになる部位構文
     7. {in / on / by}のうちbyのみがOKになる部位構文
     8. 定冠詞theの謎を解く
     9. {in / on / by}以外の前置詞と部位構文
     10. まとめ

    第3章 「たら」「とき」「あいだ」が潜む前置詞
     1. 「たら」「とき」「あいだ」が潜む副詞要素
     2. with
     3. on
     4. in
     5. まとめ

    第4章 経路にまつわるあれこれ
     1. 経路を俯瞰してみよう
     2. 情報の割り振り方の日英差
     3. way構文
     4. 経路とその終点
     5. まとめ

    第5章 will be P構文
     1. will be P構文とは
     2. will be P構文の周辺
     3. be動詞で変化を表すパターンは他にも
     4. まとめ

    第6章 差分スロット
     1. 差分の大きさを語ろう
     2. 差分表現+along ...
     3. 差分表現+down ...
     4. 差分表現+through ...
     5. 差分表現+in(to) ...
     6. 差分表現+away from ...
     7. 差分表現+ahead(of ...)
     8. 差分表現+out(of ...)
     9. まとめ

    コラム 関連付けの自由

    Part II
    第7章 as
     1. 前置詞のasは「…として」か
     2. なりきりのパターン―変装・仮装・モノマネ―
     3. 理由を表すパターン
     4. まとめ

    第8章 away
     1. ハグ離れ?
     2. 外界から切り離される[動詞1語+away]構文
     3. [動詞1語+away]構文のよくあるパターン
     4. まとめ

    第9章 by
     1. by doing ...の探求
     2. 日本語の「…することによって」
     3. by doing ...は硬くない
     4. A by doing BのBは意図的行為でなくてもOK
     5. A by doing BはAを狙っていなくてもOK
     6. A by doing BはAとBが同じ時間幅を占めていてもOK
     7. まとめ

    第10章 for
     1. チャンスがあれば痛い目に遭わせてやる
     2. have it in for sbの仕組み
     3. 相対的未来における経験主体を導くfor
     4. 「相対的未来」はここにも
     5. まとめ

    第11章 in
     1. in an {effort / attempt} to do ...
     2. 同一の行為の捉え直しのin
     3. 実は「形状のin」も…
     4. まとめ

    第12章 of
     1. 摂取から数分以内に死ぬのか,摂取により数分以内に死ぬのか
     2. within X of Yの時間用法
     3. within X of Yの空間用法
     4. of ...に「…から」の意味があると指摘することにどれほどの意義があるのか
     5. まとめ

    第13章 on
     1. What chapter are you on? の謎
     2. 実例が教えてくれる具体的な使用パターン
     3. タイミングの一致
     4. 機器のモード選択
     5. 選択肢の中から吟味して決める
     6. リストという線に乗って
     7. 線の代表選手「道」登場
     8. onと移動式イベント
     9. まとめ

    コラム 未分類ファイルのすゝめ

    第14章 through (1)
     1. smile through tears
     2. 発話への抵抗
     3. 聞き取りへの抵抗
     4. 接触への抵抗
     5. throughを含んだ(比喩的)移動表現
     6. まとめ

    第15章 through (2)
     1. 通り抜けないthrough
     2. 中を進んでいく,ただそれだけ。
     3. 辞書記述の見直し
     4. 「あちこち」への調整が働かない実例―inとの対比―
     5. 「あちこち」への調整が働く実例
     6. まとめ

    第16章 to
     1. there is X to Y構文
     2. Xが「側面」「構成要素」
     3. Xが「規則(性)」
     4. Xが「限度,限界」
     5. Xが「真実性」
     6. Xが「やるべき特別なこと」
     7. Xがmore
     8. 他の用法との関係
     9. まとめ

    第17章 with
     1. do X with Y型表現
     2. 「…と一緒にいるときにその〜に対して」
     3. 「Yを{状態変化/位置変化}させるような行為としてXをする」
     4. do X with Yとdo X to Yの比較
     5. まとめ

    コラム 語を知っていることと人を知っていること

    本書で引用した文献
    あとがき
    謝辞

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著者プロフィール

平沢 慎也(ひらさわ しんや):第1章
2016年 東京大学大学院人文社会系研究科より博士号授与
現  在 東京大学,東京外国語大学,慶應義塾大学にて非常勤講師

 専門は英語学。主要論文に「『クジラ構文』はなぜ英語話者にとって自然に響くのか」(『れにくさ』5(3),2014),「英語前置詞byの時間義」(『言語研究』146,2014),「仕組みを理解することと,丸ごと覚えること―sit up and take noticeから学ぶ―」(『東京大学言語学論集』37,2016),「for all I knowの意味と使用,動機付け」(『東京大学言語学論集』40,近刊)。訳書に「メンタル・コーパス:母語話者の頭の中には何があるのか」(分担翻訳,2017)。

「2019年 『グラフィック・メディスン・マニフェスト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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