複数の言語で生きて死ぬ

制作 : 山本 冴里 
  • くろしお出版
4.19
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本棚登録 : 400
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874248904

作品紹介・あらすじ

地球には7000もの言語がある。人は、社会や歴史と複雑に絡まりあう言語に束縛され、翻弄されながらも、また言語によって道を探り拓いてゆく。言語の境界に生きることをテーマに、人間の生と死についてその想いや出来事を描く。

■本書帯より
地球には7000もの言語があって、複数の言語を使う人がたくさんいる。境界に生きることには時に困難が伴うけれど、一つの言語に囚われないことで、視界が広がっていく。そこからは、他者とともによりよく生きていくためのヒントが見つかるだろう。

■「まえがき」より
地球上には、7000ともいわれる数の言語があることをご存知でしたか。この本は、人間は生涯にわたってそうした言語を習いおぼえ、失い、常に複数の言語と関わりながら生きているという認識のうえに書かれています。複数の言語と絡みあう人間の生と死について、筆編者らを触発してやまない、記憶に残る人、資料、物語について語っていきます。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、複数の言語の「あいだ」を(2つの間にひかれた「線」)としてではなく、広がりをもつ領域として捉え、その「あいだ」で起きている出来事を語り、言葉を紡ぐことによって、「あいだ」を耕していく実践的な試みそのものである、と思う。本本書におさめられた論考はそれぞれに、「あいだ」をひらき、耕すための文体を模索している。そのことが印象に残った。
    本書の編著者である山本氏は、本書の共同執筆者に「理知的、理性的な議論でありながら、人の感情を揺さぶる具体的な何かを持つ文章を」と依頼したという(「あとがき」)。たしかに、本書におさめられた文章の数々には、自身の経験や、他者による語り、小説や映画で描かれるストーリーを含め、さまざまな「人の感情を揺さぶる具体的な何か」があるが、それと同じか、あるいはそれ以上に重要なことは、それら「具体的な何か」と理知的、理性的な距離を保とうとしながらも、その感情的な波をも掬い取ろうとする文章そのものの構成や文体ではないか、と思う。「あいだ」に生きることのなかに生じる複雑な、ときには相矛盾するような感情が、言葉のなかに、文章のなかに包摂されており、読者は、その複雑さそのものに触れることができる。

  • この本を手に取る人が「コウモリ」となって、境界を耕す一人となれるといい。

  • 知り合いの作家さんが装丁を担当され、その美しさと、解説を読んで「今の自分に必要な本だ」と思い、ネットで予約して購入した本です。読んでいる本があるので、積読ですが、早く読みたいと思っています。 

    #装丁 #自己啓発 

  • 7人の言語学者によってテーマに沿って書かれた、論文でもなく物語でもなく、ただ恐ろしいほどの情報量の詰まった、思考と感情を揺さぶられる書物。
    この薄さでこの情報量と熱量と情熱はものすごい。

    記憶に残った事柄を抜粋しておく。

    ・7000言語のうち3000言語は絶滅危惧言語。この場合の絶滅危惧とは、話者が残り1人の言語のこと。

    ・「言語とは陸軍と海軍を持つ方言のことである」
    言語学者なら誰でも知ってるけど出展は不明な言葉。端的に事実を突いていると思った。

    ・「ペレヒルと言ってみろ」
    ペレヒルとはパセリのこと。ドミニカ人とハイチ人を分ける発音。見た目で区別できない人種の場合、難しい発音の単語を言わせる。ハイチ人はペレヒルの巻き舌発音が苦手。言えないと、スーパーで食材を売ってもらえなかったり公共の乗り物に乗れなかったりする。

    ・クレオール 複数の言語、文法が混ざった状態で異種言語の人同士で意志疎通する言葉。
    ブラジルと日本の移民は、ジャンタする(夜ご飯を食べる)コルタする(切る)アンダする(歩く)コメする(食べる)ドルミする(寝る)などの単語を作った。

    ・関東大震災後の混乱「15円50銭」をうまく発音できない人は不逞朝鮮人としてその場で逮捕された。朝鮮人虐殺の始まり。

    ・旧約聖書にも「シボレテ」とうまく発音できない人を区別して、ギレアデ人が、42000人のエフライム人を虐殺したとある。

    ・デフ・ヴォイス おしの両親から生まれた耳の聞こえる子供をコーダCODAと呼ぶ。手話が母語の家庭環境で、コーダは「損なわれた子供」として差別される。はざまに生きることは誰にでも起こり得る。

  • 言語の広がりと絶滅の根底は支配-被支配の関係がある事に気付かされた。

    印象に残った章は第二章「夜のパピヨン」第七章「『伝わらない』不自由さと豊かさ」第十章「こうもりは裏切り者か?」

    コミュニケーションの必要や欲望のために手持ちの言語で相手に伝える事ができる。言語接触の大小に関わらず起こるの現象が新しい変化を創る。
    これは生物の進化に似た部分がある様に感じた。より強く、必要とされる形質が子孫に受け継がれる様に。

  • ざわっとするタイトル。言語を扱う一人として知っておかなくてはいかない視座。

  • 世界に7,000はあると云われている「言語」

    その中の一つの言語が無くなってしまったら?
    もしも、日本語がなくなってしまったら?

    言語とは、話し手(書き手)と世界を繋ぐツール(という表現が正しいか分かりませんが)なんだと痛感させられました。

    他言語はもちろん、日本語について改めて学びたくなる本でした。

  • 地球には7000もの言語があって、複数の言語を使う人がたくさんいる。言語の境界に生きることを題材に、人間の葛藤や出来事を描く。各章末に「読書案内」も掲載する。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40286851

  • <学生コメント>
    この国では日本語1言語のみでも生きていくことができます。それ故に持ち得ない視点があるのがもどかしくて、この本を読みたいと思いました。ちなみに、ためにならない言語学エッセイとして『ロシア語の余白の余白』という短編集がおすすめです。

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