鉄と火と水の技: 時代の波と鍛冶職人

著者 :
  • 慶友社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784874491454

作品紹介・あらすじ

本書は、時代や社会の変化にむきあい、変化をよみ、変化に沿う、鍛冶職人の軌跡の記録である。ここでいう変化のひとつは、明治二十年代以降に日本の鍛冶職人の社会における輸入鉄、通称洋鉄、洋鋼の普及、(これはその材に対応する技術のみならず、流通の変化などの諸状況も含めて)を指している。鍛冶職人たちは、新しい鉄材を試行錯誤しながらすぐに使いこなしていく。その対応力は、それ以前の材である和鉄、和鋼を充分に使いこなしていた高い技と知恵のレベルぬきには考えられない。また以前の在来の和鉄に比べ、洋鉄、洋鋼という廉価で均質な新しい鉄材が、安定した供給のもとに大量にひろまっていったことは、使い手の要望と造り手の技量が、よりこまかに豊かに展開していく基本的な素地をつくっていった。それは、新しいその鉄素材の性格を把握し、安定供給する流通組織をつくりだし、それを維持してきた洋鋼問屋の精力的な動きも大きい。洋鉄、洋鋼の普及は、社会における鍛冶屋の存在に勢いをつけ、そこでは技と工夫による熾烈な競争が展開していった。この動きはやがて日本の社会のさまざまな場面で刃物のありようを変えていき、生業としての鍛冶屋の存続に変化をおよぼすようになっていく。今の時代においても、いくつもの大きな変化の波が及んできている。刃物の需要動向はある時にはゆっくりと確実に、ある時にはあっという間に変わっていき、その対応自体がこの時代の鍛冶屋の歴史ともいえる。彼らが変化をどう受け止め得たのか、彼らにとって変化とは何であったのか。本書はその時代の中での彼らの試行錯誤、またかれらと使い手を結ぶ問屋の動きをきわめて個々の具体的な事例を追跡し、それをみていくことで逆に鍛冶職人群像の中に様々に息づいているふてぶてしさ、柔軟さ、また鉄と人間との関りのありかたを通して「ものをつくる」ことの意味を問おうとしている。

著者プロフィール

"著者略歴  香月節子(かつき せつこ)福岡県生まれ。一九六七年武蔵野美術短期大学芸能デザイン科卒業。元武蔵野美術大学民俗資料室勤務、日本観光文化研究所所員を経る。専門は民俗学。鍛冶文化史。[主要著作]『むらの鍛冶屋』(共著)、『鉄と火と技と』、『たたら日本古来の製鉄』(共著)、『土佐打刃物-伝統的工芸品産地指定にともなうプロセスと活動報告-』(編著)、『日本刀 松田次泰の世界』

「2015年 『鉄と火と水の技 時代の波と鍛冶職人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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