- Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
- / ISBN・EAN: 9784875593324
作品紹介・あらすじ
心と身体に傷を負った兵士たちの戦後。いま再び戦場で犠牲者を生み出そうとする現代日本、国家によって人生を奪われた人びとが"戦争"を問う。
感想・レビュー・書評
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第二次大戦に参戦し、身体や精神に障害を負った、傷痍軍人の写真集である。
重症者の中には、国立療養所に入り、残りの人生を過ごすことになった者もいる。
下半身不随となった者、尿を自力では出せなくなった者、ハンセン氏病に冒された者、結核に感染した者、そして心を病んだもの。
本書では旧箱根療養所、多磨全生園、外気舎(清瀬)、旧武蔵療養所、旧下総療養所の人々をモノクロ写真に収める。
著者が最初に彼らを取材したのは1970年代。戦後25年を過ぎても、これらの療養所には多くの人々がいた。時を経て、二度目の取材を行ったのが2006年。多くは鬼籍に入り、残されたわずかな人にも個人情報保護法の壁により取材できなかった事例もあった。大勢が入浴していた風呂場もがらんとし、庭には草が生い茂る。廃墟に近い環境でなお余生を送る人がいた。
戦争で傷ついた彼らは、戦後、療養所から出ることなく生きた。
妻や家族に付き添ってもらう人もいたが、特に精神疾患の場合など、見舞いすら来ない人も少なくはなかった。
著者が撮った写真を送ると、彼らは丁寧な礼状を送ってきたという。わずかな外界とのつながりは、縋りたくなるほど貴重なものであったのだろう。
長い長い煉獄の「時」。彼らはどんな夢を見つつ過ごしたのだろうか。
2016年8月、神戸新聞によれば、戦傷病で療養している人の数は全国で238人、うち戦場体験などによる精神疾患患者は13人であったという。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
忘れてはいけない人々の貴重な写真